トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

フェミニズム

Second Place / レイチェル・カスク: ブッカー賞ロングリストノミネート作品

2021年ブッカー賞ロングリスト、3冊目。装丁が印象的。 Second Place: Longlisted for the Booker Prize 2021 作者:Cusk, Rachel Faber & Faber Amazon www.tokyobookgirl.com レイチェル・カスクはノンフィクション(育児や離婚といった自身の体験について…

Animal Wife / Lara Ehrlich

『文藝』2021年夏号(もふもふ〜)でカミラ・グルドーヴァの「ねずみの女王」を翻訳された上田麻由子さんが「人間が動物に変身する話」が近頃かなり多くみられると解題に書いていらしたのだが、読みながらこくこくとうなずいてしまった。本当〜〜〜に多い。…

『中国が愛を知ったころ』張愛玲(濱田麻矢・訳)

「沈香屑 第一炉香」、「中国が愛を知ったころ」、「同級生」からなる短編選。これでついに、日本語に翻訳されている張愛玲はすべて読み終えてしまったことになる。この先どうやって生きていけばいいの……涙。 *装丁には、近道聡乃さんのイラストレーションが…

The Dangers of Smoking in Bed / マリアーナ・エンリケスの原点(Megan McDowell訳)

[Los peligros de fumar en la cama] 国際ブッカー賞のショートリストにノミネートされていた、マリアーナ・エンリケスのThe Dangers of Smoking in Bedを読んだ。エンリケスの初短編集。読みながら何度も、「いいなあ……好きだなあ……」としみじみ思う。何度…

母と娘の世界文学 20冊

10代のころ、口論になり母を泣かせたことがある。わたしは意地の悪い子どもで、何を言ったら人を傷つけることができるのか、よく心得ていた。今となってはどんな言葉を投げつけたのかさえ、まったく覚えていない。でも、思春期でイライラしたわたしが「決め…

『恥さらし』パウリーナ・フローレス(松本健二・訳): こういうラテンアメリカ文学が読みたかったんだよ、わたし

[Qué Vergüenza] 2021年の読みたいリストに入れていた1冊。 恥さらし (エクス・リブリス) 作者:パウリーナ・フローレス 発売日: 2021/01/06 メディア: 単行本 恥さらし。なんて強い言葉。「恥」を「さらす」。 恥さらしと聞いて思い浮かぶのは……寒さの厳しい…

『フィーメール・マン』とか『女の国の門』とか

『フィーメール・マン / Female Man』ジョアナ・ラス(友枝康子訳) 数年前、『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んだときに「あ、あれ再読しよう」と思い、先日ついに発売されたよしながふみの漫画『大奥』の最終巻を読んで「あ、今度こそあれ読もう」と思っ…

Chicas Muertas / セルバ・アルマダ: 女性だったから殺された女の子たち、フェミサイドについて

[Dead Girls] 「わたし、絶対にぜーったいにアルゼンチンの男の人とは結婚しないんだ。ていうか、イスパノアメリカの男の人とは結婚しない*1」 16歳のころ、アルゼンチン出身の友人がそう言った。「どうして?」と問うわたしたちに、彼女はいまだに根強いマ…

3月に読んだ韓国文学 #koreanmarch

去年に引き続き、インスタでは世界文学読みさんたちが「#koreanmarch」を開催していたので、これ幸いと韓国文学三昧な日々を過ごした。色々な方が読んだ本や積読している本を眺めているだけで、幸せな気分に……。 わたしはといえば、新しいものは購入せずに積…

『あの本は読まれているか』ラーラ・プレスコット(吉澤康子・訳)

[The Secrets We Kept] なんて幸せなことでしょう。わたしが読んでいるこの本、わたし以外の人はもうみんな読んでいるなんて。世界文学好きも読んでいるし、ミステリ好きも読んでいるという相乗効果(?)で、普段共通の本の話題がない人とも、「あの本」を…

Girl, Woman, Other / バーナーディン・エヴァリスト: 2019年を代表する1冊

最初の数ページを読んだだけで、はっと驚き、早くもこの小説のとりこになる。 Amma is walking along the promenade of the waterway that bisects her city, a few early morning barges cruise slowly by to her left is the nautical-themed footbridge w…

『ダイヤモンド広場』 マルセー・ルドゥレダ(田澤耕・訳): ガルシア=マルケスいわく「内戦後にスペインで出版された最も美しい小説」

[La plaça del Diamant] この文庫の帯にも使用されている、ガルシア=マルケスによる賛美の言葉を使わずに、この小説の素晴らしさを伝えたいけれど、「内戦後にスペインで出版された最も美しい小説」、これ以上にぴったりとくる言葉はないとも感じる。 祖母…

The Testaments / マーガレット・アトウッド: 東洋のギレアデで『侍女の物語』の続編を読む

(誓願) 2019年の目玉(個人的に)、ようやく読むことができた。 読書がままならない日々が続いたので、砂漠で水を得てごくごくと飲み干すように、活字をむさぼった。 ああ幸せ。 *No Spoilers/ネタバレはありません 30年を経て発表された続編 ギレアデの女…

『わたしの修業時代』 コレット

[Mes Apprentissages] 二十歳のころには、法外な贈り物も、王侯のごとく平然とうけとってしまうものなのだ。 表紙からして素敵なデザインで見とれてしまう、コレットの回想録。 わたしの修業時代 (ちくま文庫) 作者: シドニー=ガブリエルコレット,Sidonie‐Ga…

『カラーパープル』 アリス・ウォーカー

[The Color Purple] 1985年にスピルバーグによって映画化された『カラーパープル』は2005年ブロードウェイミュージカルにもなった。そしてなんと、このミュージカル版を映画化するというニュースが昨年末に発表された。 プロデューサーは1985年の映画を手が…

『カルメン・ドッグ』 キャロル・エムシュウィラー: SF+フェミニズム+オペラ+犬!

[Carmen Dog] ネビュラ賞を二度受賞し、フェミニズムSFの書き手として知られたキャロル・エムシュウィラーが亡くなった(2019年2月2日)。 こちらは、表紙に描かれた犬(カルメンよろしく、真っ赤な薔薇を口にくわえた白いワンさん)に惹かれて購入した一冊…

Dear Ijeawele, or A Feminist Manifesto in Fifteen Suggestions / チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

(フェミニスト・マニフェスト 15の提案) アディーチェといえば、昨年の10月9日にPEN ピンター賞を受け取ったばかり。 Chimamanda Ngozi Adichie accepts PEN Pinter prize with call to speak out | Books | The Guardian 丸の内の丸善でペーパーバックを…

My Sister, the Serial Killer / オインカン・ブレイスウェイト(Oyinkan Braithwaite)

(マイ・シスター、シリアルキラー) ジャケ&タイトル買いしてしまった一冊。 My Sister, the Serial Killer 作者: Oyinkan Braithwaite 出版社/メーカー: Atlantic Books 発売日: 2019/10/03 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 作者のO…

『闇の左手』 アーシュラ・K・ル・グィン

[The Left Hand of Darkness] アーシュラ・K・ル・グィンの作品といえば、なんといっても「映像化にことごとく失敗している」ことが思い浮かぶ。 「失敗」の定義は色々あるので、あくまで私の個人的意見だが ・興行的に振るわない ・作者自身に酷評されてい…

『82年生まれ、キム・ジヨン』 チョ・ナムジュ

[82년생 김지영] 『VERY』 1月号を読んでいて、「色々と話題になりそうだな」と思った記事があった。 「きちんと家のことをやるなら働いてもいいよ」と将来息子がパートナーに言わないために今からできること、VERY1月号の記事が話題に - Togetter 案の定Twi…

マルジャン・サトラピが大好き

ブッカー賞で初めてグラフィックノベル(ニック・ドルナソのSabrina)がノミネートされたりと、2018年はますますバンド・デシネ*1やグラフィックノベル*2に注目が集まる年だった気がする。 さて、私にとってバンド・デシネへの扉を開けてくれた、思い出の作…

Motherhood / シェイラ・ヘティ: 産むの? 産まないの? どうする私

2018年のギラー賞(受賞作品の発表は11月19日!)にノミネートされていて、読みたくなったシェイラ・ヘティのMotherhood。一風変わったユーモラスな語り口が心地よくて、これまた数多の積ん読を差し置いて、一晩で読んでしまった。 2018年のギラー賞ショート…

Girls Burn Brighter / Shobha Rao

(女の子は明るく燃える) 7歳の時インドからアメリカに移住したという新人作家Shobha Rao初の長編小説。タイトルに惹かれて購入。 Girls Burn Brighter 作者: Shobha Rao 出版社/メーカー: Flatiron Books 発売日: 2019/03/05 メディア: ペーパーバック こ…

『傾城の恋 / 封鎖』 張愛玲

[傾城之恋] ・張愛玲の『色、戒』*1が好き。 ・映画化された『ラスト、コーション』や香港映画『花様年華』にはまった。 ・『高慢と偏見』や『細雪』など、お見合い・結婚についてのドタバタ劇が好き。 ・『風と共に去りぬ』のスカーレットとレッド・バトラ…

『戦争は女の顔をしていない』と、終戦の日に読みたい本たち

[У ВОЙНЫ НЕ ЖЕНСКОЕ ЛИЦО] 2015年ノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの第1作目にして、作者自身が「もっとも大切に感じている」という作品『戦争は女の顔をしていない』を読んだ。ウクライナ出身・ベラルーシ在住のジャーナリスト…

Milk and Honey / ルピ・クーア

(ミルクとはちみつ) ルピ・クーア(日本語表記はカウルとされていることもある。英語での発音は"core"に近い感じ)のことを知ったきっかけは、彼女がインスタグラムにあげた写真だった。 2015年に投稿された、「服に経血のしみがついた女性の後ろ姿」の写…

Circe / マデリン・ミラー: ギリシャ神話から生まれたフェミニズム小説

(キルケ) *日本語訳が出版に。 キルケ 作者:マデリン・ミラー 発売日: 2021/04/30 メディア: 単行本 When I was born, the name for what I was did not exist. They called me nymph, assuming I would be like my mother and aunts and thousand cousins…

『菜食主義者』とThe Vegetarianを読んでみた

[채식주의자] 不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か? これはロシア語の同時通訳者だった米原万里の著書のタイトルで、「美しいけれども原文からはかけ離れた文章(美女)をとるか、原文に忠実だが聞くに堪えない文章(ブス)をとるか」という意味。 2016年にブ…

Red Clocks / Leni Zumas: フェミニストSF小説の勢いが止まらない

発売日: 2018年1月16日(レニ・ズーマス) アメリカ・オレゴン州を舞台としたフェミニスト・ディストピア小説である。本小説におけるアメリカでは、"Personhood Amendment"が施行されている。これはいわゆる「中絶禁止法」で、受精卵にも生きる権利があると…

『侍女の物語』 マーガレット・アトウッド(斎藤英治・訳): 結婚して初めて分かったこと

[The Handmaid's Tale] マーガレット・アトウッドの『侍女の物語』を初めて読んだのはまだ10代の頃だった。 その後大学の授業でも読んだし、社会人になってからも読み返した。 繰り返し読んだので思い入れのある作品ではあるが、どこか自分からは遠い架空の…