トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

2017-01-01から1年間の記事一覧

ある晴れた日に: 『蝶々夫人』観劇

10月7日、二期会の『蝶々夫人』を観劇しました。 開幕間近!東京二期会オペラ劇場『蝶々夫人』―〈日本の美〉を世界の人々に……二期会名作オペラ祭特別料金S10,000円! 夏頃、発売と同時にチケットを購入したので、センターの5列目。 素晴らしい美声を名一杯堪…

ロマノフ家のこと

こんにちは、トーキョーブックガールです。東京公演も観に行く予定の『神々の土地』。楽しみ! 先日蔦屋書店にて中野京子コーナーを覗いていると、こんな印象的な帯が目に飛び込んできた。 弟が姉を、夫が妻を幽閉し、 父が息子を、妻が夫を 殺してきた歴史…

Hunger / ロクサーヌ・ゲイ、そして『スイート・ヴァレー・ツイン』のこと

9-10月の"Our Shared Shelf*1"のお題本はこちら。 ロクサーヌ・ゲイの新作 Hunger: A Memoir of (My) Body 。 Hunger: A Memoir of (My) Body (English Edition) 作者: Roxane Gay 出版社/メーカー: Corsair 発売日: 2017/06/13 メディア: Kindle版 この商品…

『オリーヴ・キタリッジの生活』 エリザベス・ストラウト(小川高義・訳)

[Olive Kitteridge] 静かに、そっと始まる物語。文字を追っているつもりが、いつの間にかメイン州の小さな港町・クロズビー*1に足を踏み入れている。アメリカの北東部、寒く凍った土地。 薬局を見て回り、カウンターの向こう側にいるヘンリーとデニースの何…

宝塚歌劇団を描いた小説・漫画のレビュー

宝塚が好きで、宝塚がモチーフとなった作品をついつい探して読んでしまいます。 小説 男たちの「宝塚」を描く: 『ヅカメン! お父ちゃんたちの宝塚』 新人公演主役に抜擢された少女と大劇場に住むファントム: 『男役』 残り少ない宝塚人生を生きる娘役と彼女…

ヴォルテールの『カンディード』とSATC

大学を卒業してもうすぐ10年である。社会で働き始めてもうすぐ10年、でもある。 「もっと真面目に勉強しておけばよかったなあ」と思うことはないのだが、「今だったら、あの授業をもっと楽しんで受けられたなあ」と感じることは本当によくある。 秋の夜長は…

2017年 ブッカー賞ショートリスト

こんにちは。トーキョーブックガールです。9月17日にマン・ブッカー賞のショートリストが発表されていました。 The Man Booker Prize 2017 | The Man Booker Prizes 今年残った6冊はこちら! 4 3 2 1, ポール・オースター History of Wolves, Emily Fridlund…

『三銃士』 アレクサンドル・デュマ(竹村猛・訳)

[Les Trois Mousquetaires] こんにちは、トーキョーブックガールです。 色々な方の感想をすでにインターネット上で拝見していますが、私はまだ『All for One』を観ていません! 今月末観劇予定なので楽しみ♡ ということで……今月は予習も兼ねて、デュマの『三…

Rosaura a las diez / Marco Denevi: 10時のロサウラ

先日もちらっと書いた Rosaura a Las Diez*1。「10時のロサウラ」。1955年に出版された、Marco Denevi(マルコ・デネヴィ)のデビュー作。 舞台やドラマ、映画化もされた大ヒット作である。 かなり昔の作品だが、日本のAmazonでもペーパーバックを良心的な価…

秋に読む海外文学 25冊

こんにちは、トーキョーブックガールです。 だんだんと涼しくなり、秋の気配を感じますね。 読書の秋ということで、秋の夜長に読みたい海外文学をリストアップしてみました。 タイトルに「秋」が入る3冊 『族長の秋』ガブリエル・ガルシア=マルケス(鼓直訳…

『おやすみ、リリー』 スティーヴン・ローリー

[Lily and the Octopus] こんにちは、トーキョーブックガールです。ずいぶん涼しくなってきましたね! さて、今日はジャケ買いしてしまったこの本の感想を。 おやすみ、リリー 作者: スティーヴン・ローリー,越前敏弥 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ …

『ベラミ』 モーパッサン: 史上最強の色男

[Bel Ami] 100スーの銀貨を出した釣りを勘定台の女から受け取ると、ジョルジュ・デュロワはレストランの外へ出た。 押出の立派なこの男は、生まれつきと退役下士官のくせでぐっとそり身になったかと思うと、慣れた軍人式の手つきで口髭をひねり、それからま…

Hag-Seed / マーガレット・アトウッド: 現代におけるシェイクスピア

*日本語訳が出版されています。 『獄中シェイクスピア劇団(語りなおしシェイクスピア1 テンペスト)』鴻巣友季子訳 語りなおしシェイクスピア 1 テンペスト 獄中シェイクスピア劇団 (語りなおしシェイクスピア テンペスト) 作者:マーガレット・アトウッド,…

Rich People Problems / Kevin Kwan: クレイジーリッチな中国系シンガポール人物語最終章

Crazy Rich Asians*1、China Rich Girlfriend*2に続く、Kevin Kwan(ケヴィン・クワン)による大金持ち・中国系一族シリーズ第3作目! クレイジー・リッチ!(字幕版) 発売日: 2018/11/16 メディア: Prime Video この商品を含むブログを見る 1作目のCrazy Ric…

Far Eastern Tales / サマセット・モーム

この夏の旅行のお供はサマセット・モームのFar Eastern Talesだった。Vintage Classicsの表紙もどことなくオリエンタル。 Far Eastern Tales 作者: W. Somerset Maugham 出版社/メーカー: Vintage Classics 発売日: 2000/07/25 メディア: ペーパーバック こ…

『高慢と偏見』はインスピレーションの泉

[Pride and Prejudice] 21世紀に生きる私たちをもとりこにするジェーン・オースティン作品。もちろん最も有名なのは『高慢と偏見』だろう。何度となく映画化&ドラマ化され、その度に人気を博している。 高慢と偏見〈上〉 (岩波文庫) 作者: ジェーンオーステ…

『テンペスト』 シェイクスピア(松岡和子・訳)

[Tempest] シェイクスピアは謎に包まれている。 ストラトフォード・アポン・エイヴォンで革手袋商人の息子として生まれ育ち、18歳の時に26歳の女性アン・ハサウェイと結婚。 その後ロンドンへ出て、空白の数年間ののち、俳優兼劇作家として名をはせるように…

『アリーテ姫の冒険』 ダイアナ・コールス

[The Clever Princess] Beauty Mythについて書きながら、この本を思い出したので今日はアリーテ姫について書いてみたいと思います。 物心つくかつかないかという頃から本が大好きだった私。 でも、読書に対する情熱を絶やすことなく今まで生きてきたのは、い…

宝塚で舞台化してほしい作品 海外文学編

宝塚では、『風と共に去りぬ』、『スカーレット・ピンパーネル』はもちろん、『かもめ』、『パルムの僧院』、『赤と黒』、『アンナ・カレーニナ』、『二都物語』など、かなり多くの海外文学作品が上演されています。 ですが、海外文学の虫としては、「これも…

China Rich Girlfriend / Kevin Kwan

デビュー作 Crazy Rich Asiansが大ヒットしたシンガポール出身の作家Kevin Kwan(ケヴィン・クワン)。 *Crazy Rich Asiansのレビューはこちらから。 www.tokyobookgirl.com クレイジー・リッチ!(字幕版) 発売日: 2018/11/16 メディア: Prime Video この商…

The Clothing of Books / ジュンパ・ラヒリ

こんにちは、トーキョーブックガールです。 大好きな作家の一人、ジュンパ・ラヒリ。新作が出たら必ず読みます。『停電の夜に』を初めて読んだときの衝撃は今も忘れられない。淡々とした文章は一見アメリカ的にからりとしているようで、どこかアジア的な湿度…

The Beauty Myth / Naomi Wolf: 美の神話とは

こんにちは! すっかり日常に戻りましたが、先週までの夏休みのことを思い出してぼんやりしているトーキョーブックガールです。 どうでもいい話なのですけれど、、、旅行先のホテルの部屋に支配人からのお手紙があって、末尾に「オーム・シャンティ・シャン…

夏に読む海外文学 25冊

夏にこそ読みたい小説(海外文学)をリストにしてみました。 中身はもちろん、題名も夏にまつわるものを選んだので、夏休みのお供にぜひ。 装丁まで夏らしい2冊 『観光』ラッタウット・ラープチャルーンサップ(古屋美登里訳) 『これもまた、過ぎゆく』ミレ…

Crazy Rich Asians / Kevin Kwan

ここ何年か忙しく働き通しで、久しぶりに取れた1ヶ月間の夏休み。 NYで同棲しているボーイフレンドが、「親友の結婚式があるから一緒にシンガポールへ行こうよ」と誘ってきた。 シンガポールは彼の故郷。ということは、彼のご両親にも会えるのかな? 初めて…

Farewell, ミチコ・カクタニ!

こんにちは、トーキョーブックガールです。 なんと!「ミチコ・カクタニがThe New York TimesのChief Book Criticの職を離れる」というニュースが飛び込んできましたよ! 一抹の寂しさと時代の流れを感じます……。 言わずと知れた一大文芸評論家、1955年生ま…

Nada / Carmen Laforet(カルメン・ラフォレット): 少女が大人になるまで

みなさま、こんにちは! トーキョーブックガールです。南の島から東京に戻ってきました。東京の方がよっぽど暑いことにびっくりでございます……。 今日は、夏になると読み返したくなる小説について。Carmen LaforetのNada。 スペイン文学界では非常に有名な小…

『かもめ』 チェーホフ(小田島雄志・訳)

[Чайка] 今日の暑さは暴力的ですね! トーキョーブックガールです。 今週は星組『オーム・シャンティ・オーム』を見に行ったのですが(遠征した)、なんと客席には『阿弖流為』大阪公演を終えた礼真琴さんはじめ阿弖流為メンバーが! 舞台もキラキラ、客席も…

Theft by finding / David Sedaris: エッセイストによる爆笑日記

発売されてすぐに購入し毎日少しずつ読んだこの本! のお話を今日は書きます。David Sedarisの Theft by Finding: Diaries 1977-2002 。 Theft by Finding: Diaries (1977-2002) 作者: David Sedaris 出版社/メーカー: Little, Brown and Company 発売日: 20…

『ラスト・タイクーン』 F・スコット・フィッツジェラルド

[The Last Tycoon] またまたフィッツジェラルドのお話だが、ちょうどスカイステージで'97年花組の『失われた楽園〜ハリウッド・バビロン〜』を見たので、いい機会だと思い『ラスト・タイクーン』について書いてみる。 宝塚の『失われた楽園〜ハリウッド・バ…

『悲しみよこんにちは』 フランソワーズ・サガン(朝吹登水子・訳)

[Bonjour Tristesse] 一番好きな本なんて決められないけれど、一番読み返している本は間違いなく『悲しみよこんにちは』である。 毎年毎年、夏が来るたびに読み返す。 このバカンスの物語は、どうしたって夏の空気の中で読みたいですからね。 夏の旅行にも大…