こんにちは、トーキョーブックガールです。東京公演も観に行く予定の『神々の土地』。楽しみ!
先日蔦屋書店にて中野京子コーナーを覗いていると、こんな印象的な帯が目に飛び込んできた。
弟が姉を、夫が妻を幽閉し、
父が息子を、妻が夫を
殺してきた歴史だ。
『名画で読み解く ロマノフ家 12の物語』。予習を兼ねて読んだのだが、面白かった!
ロマノフ家の始まりから終わりまでが、 12枚の絵画を通して綴られている。もちろん世界史や歴史として学んだ懐かしの内容も多いが、初めて知った情報もかなり多く、勉強になったのでちらっとご紹介。
ロシアへ移住したドイツ貴族が、自らの名ロマンをロシア風にロマノフと名乗りだしたというのがロマノフ家の始まり。
そもそもがドイツ人なのだ。しかもその後の一族の結婚もドイツ人との婚姻がかなり多く見られる。そして宮殿および貴族間の公用語はフランス語。ヨーロッパはもちろん、ロシアでも上流社会は多文化・多言語だったのだな……。この辺りは、日本では考えられないことだから、「海外」に対してのハードルというか見識が違う理由も垣間見える、かもしれない。
最初に出てくる絵はもちろん、イワン「雷帝」関連のもの。 《イワン雷帝と息子イワン》も小さく紹介されている。どうして息子を殺めてしまったのか、も。一度見ると忘れられない絵である。
ツァーリの座を巡ってピョートルと戦った《皇女ソフィア》も印象的。憤怒の表情が忘れられないインパクトを放っていた。
また、エカテリーナが夫とともに描かれた一族のポートレートも収録。生粋のロシア人でもなければ(人種ミックス)、貴族出身ですらない。両親が早死にして苦労し、娼婦となりロシア兵について戦地を回っていなければ、女帝になることのなかったエカテリーナ。
ヨーロッパではありえない人生だ。ありえないといえば、エルミタージュのこのスケールもヨーロッパではありえない。サンクトペテルブルクは学生の頃に訪れたことがあり、もちろんエルミタージュも一日滞在したのだけれど、その時はエカテリーナのことも漠然としか知らなかったので、この本を読んでから行きたかったとつくづく思ってしまった……。
ロシアに旅行予定のある皆様! この本おすすめです!
ロシアでは、国の最高権力者がある日突然失脚、というパターンはすでにもう延々続いてきたし、これからも延々続いてゆくだろう。
という文章通り、現代でも何やらきな臭い動きも多いロシア政界。
ロシア文学というところでは、アレクサンドル1世と対峙した老将軍クトゥーゾフ(60年後、トルストイが『戦争と平和』でロシア的賢者として描く)のエピソードがいくつか登場している。
また、ニコライ1世の時代に27歳だったドフトエフスキーが社会主義サークルに入会した罪でシベリア送りになっていることにも触れられている。
作品と政治が密接に関係していることから、このあたりの歴史をさらっと知っておくとロシア文学はより楽しめそう。
その後のアレクサンドル二世の妻、マリア・アレクサンドロヴナのポートレイトも目を引く美しさ。髪に編み込まれた大粒の真珠が美しいこと。それでもちっとも幸せそうではない彼女。