トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

2019年出版

2020年 国際ブッカー賞受賞作はThe Discomfort of Evening

更新が滞ってしまいました。みなさまはお元気ですか? わたしはとっても元気! 今年は仕事と育児に加えて、勉強も(コロナの影響で仕事に余裕が出るんじゃないかと踏んでいた……勘違いだった)と、頭と体をフル回転させています。なかなかブログ(やInstagram…

Girl, Woman, Other / バーナーディン・エヴァリスト: 2019年を代表する1冊

最初の数ページを読んだだけで、はっと驚き、早くもこの小説のとりこになる。 Amma is walking along the promenade of the waterway that bisects her city, a few early morning barges cruise slowly by to her left is the nautical-themed footbridge w…

My Friend Anna / Rachel DeLoache Williams: アンナ・デルヴィー、「ソーホーのペテン師」と嘘まみれの人生

(『令嬢アンナの真実』原作) ノンフィクションなのだけれど、いろいろな小説を思い起こさせる1冊だったのでブログに投稿しておく。 2017年に逮捕され、2019年に裁判が行われた、「ソーホーのペテン師」アンナ・ソロキン(アンナ・デルヴィー)について書か…

『俺の歯の話』 バレリア・ルイセリ(松本健二・訳): おはなし なあに?

[The Story of My Teeth / La Historia de Mis Dientes] てっきり最初に英語が出版されたのだと思っていた、『俺の歯の話』。スペイン語だった。 作者のバレリア・ルイセリはメキシコ人だが父の仕事(NGOに勤務したのち外交官になる)の影響で、米国、コスタ…

Spring / アリ・スミス: 悲しみを和らげてくれた1冊

(春) アリ・スミスのSeasonal Quartetも、ついに3冊目。残すは今夏出版予定のSummerのみ。ここまで読み進めて、ようやくアリ・スミスの素晴らしさを実感した! すごい、すごい、すごい。なんて面白いの。 Spring (Seasonal Quartet) 作者: Ali Smith 出版…

『ダイヤモンド広場』 マルセー・ルドゥレダ(田澤耕・訳): ガルシア=マルケスいわく「内戦後にスペインで出版された最も美しい小説」

[La plaça del Diamant] この文庫の帯にも使用されている、ガルシア=マルケスによる賛美の言葉を使わずに、この小説の素晴らしさを伝えたいけれど、「内戦後にスペインで出版された最も美しい小説」、これ以上にぴったりとくる言葉はないとも感じる。 祖母…

2020年 Women's Prize for Fiction ショートリスト

Women's Prize for Fictionのショートリストが発表されたものの、受賞作品の発表は6月から9月へと延期に(新型コロナウイルスの影響)。国際ブッカー賞の発表も遅れ、書籍関連のイベントはキャンセルも相次いでいるし、これからどうなるのか……。 本屋さんも…

Machines Like Me(恋するアダム)/ イアン・マキューアン: ぼくみたいな機械と、あなたたちみたいな人間と

(恋するアダム) *日本語訳が2021年1月、『恋するアダム』として新潮クレストブックスから発売に。翻訳は、多くのマキューアン作品を手がける村松潔さん。楽しみ! 早速予約した。 恋するアダム (新潮クレスト・ブックス) 作者:イアン・マキューアン 新潮社…

2020年 国際ブッカー賞ショートリスト

*新型コロナウイルスの影響により、国際ブッカー賞*1の受賞作品発表が、当初予定されていた5月から8月26日まで延期となりました。 ちなみにWomen's Prize for Fictionの受賞作発表も9月に延期が決定。残念ですが、公式Twitterアカウントの言う通り、more tim…

2020年 Women's Prize for Fiction ロングリスト

*新型コロナウイルスの影響により、Women's Prize for Fictionの受賞作品発表が、6月から9月に延期となりました。 ちなみに国際ブッカー賞の受賞作発表も5月から夏に延期が決定。残念ですが、ブッカー賞公式Twitterアカウントの言う通り、more time for us r…

With the Beatles / 村上春樹(Philip Gabriel訳): 翻訳文学の面白さ

(ウィズ・ザ・ビートルズ) 子供の頃から翻訳小説を読むのが好きだった。 ちょっとした言い回しや文章に、翻訳される前のその国の言葉が透けて見える気がして、その独特の「感じ」にいつもわくわくした。 今でもよく覚えているのは、スペイン語から日本語に…

2020年 国際ブッカー賞ロングリスト

2月27日がやってきました。 今年国際ブッカー賞*1のロングリストにノミネートされたのは、この13作品。 審査員には、2018年ブッカー国際賞を受賞したオルガ・トカルチュクの『逃亡派』の翻訳者ジェニファー・クロフト(Jennifer Croft)や、『俺の歯の話』の…

The Testaments / マーガレット・アトウッド: 東洋のギレアデで『侍女の物語』の続編を読む

(誓願) 2019年の目玉(個人的に)、ようやく読むことができた。 読書がままならない日々が続いたので、砂漠で水を得てごくごくと飲み干すように、活字をむさぼった。 ああ幸せ。 *No Spoilers/ネタバレはありません 30年を経て発表された続編 ギレアデの女…

2019年のWomen's Prize、ピューリッツァー賞、ブッカー賞、ギラー賞、全米図書賞

全然ブログ投稿できないまま2019年が終わってしまったので、簡単にまとめ。 2019年 Women's Prize for Fiction An American Marriage / Tayari Jones 2019年 ピューリッツァー賞 『オーバーストーリー』/ リチャード・パワーズ 2019年 ブッカー賞 The Testam…

2019年 ギラー賞ショートリスト

ギラー賞ロングリストについて書こうと思っていたら、もうショートリスト発表の時期になっていた。 あっという間に10月。 相変わらず毎日があっという間で、積ん読が一向に減らないので今年はあまり本を買っていません。 物欲の秋だというのにお買い物すらあ…

2019年 ブッカー賞ショートリスト

えっもうそんな時期!? と、驚いてしまう。 今年もあっという間にブッカー賞のショートリストの発表日がやってきた。 ロングリストはこちらから。 www.tokyobookgirl.com ロングリストにノミネートされた13作品のうち、ショートリストに残ったのはこちら。 …

2019年 ブッカー賞ロングリスト

【Update: 2019-09-07】 9月に発表となったショートリストはこちら。 www.tokyobookgirl.com ついにやってきた7月24日。今年のブッカー賞ロングリストが発表された。 https://thebookerprizes.com/booker-prize/news/2019-booker-prize-longlist-announced …

2019年のブッカー国際賞はJokha AlharthiのCelestial Bodies / Best Translated Book AwardのShortlistのこと

*この記事は、「ブッカー国際賞」に関するものです。 2019年の「ブッカー賞」ロングリストは、こちらから。 www.tokyobookgirl.com ブッカー国際賞 イギリスの5月21日に発表となったブッカー国際賞、今年受賞したのはJokha AlharthiによるCelestial Bodiesだ…

On The Come Up / アンジー・トーマス: 『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』作者による待望の第2作目

(オン・ザ・カムアップ) 去年はYAをたくさん読んだけれど、ダントツで面白かったのがアメリカにおける黒人差別とともにゲットーで生まれ育った少女の精神的成長を描いた『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』だった。 ともすれば重くなりがちなトピックスを、90年代…

2019年 ブッカー国際賞ショートリスト

ブッカー国際賞、ショートリストが発表されました。 今年の特徴はなんといっても、6作品中5作品が女性作家によるもので、翻訳者に限って言えば全員が女性なことではないでしょうか。 The New York Timesも、The Guardianもその事実を大きく取り上げている。…

『20世紀ラテンアメリカ短篇選』 野谷文昭 編訳

楽しみに待っていた岩波文庫の『20世紀ラテンアメリカ短篇選』。表紙からしてディエゴ・リベラで、気持ちが高まる。 20世紀ラテンアメリカ短篇選 (岩波文庫 赤 793-1) 作者: 野谷文昭 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/03/16 メディア: 文庫 この商品…

Bangkok Wakes to Rain / Pitchaya Sudbanthad: 早くも個人的ベスト・オブ・2019の予感

タイトルと装丁に惹かれて購入(2019年のto be readリストに入れていた作品)。 バンコク、大好きです。遊びに行くのも好きだし、仕事でも何度か行ったけれど同僚もクライアントも素敵な方ばかりだし、ごはんも美味しいし(川魚って苦手なんだけれどタイ料理…

『夢の本』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス(堀内研二・訳)

[Libro de sueños] ボルヘスの『夢の本』が河出文庫化されたので(単行本は国書刊行会から出ていて、翻訳者は同じく堀内研二さん)、早速購入した。 おそらく日本語で読むのは初めて。 夢の本 (河出文庫) 作者: ホルヘ・ルイス・ボルヘス,堀内研二 出版社/メ…

2019年 ブッカー国際賞ロングリスト

*この記事は、「2019年のブッカー国際賞」に関する記事です。 2020年のブッカー国際賞のショートリストはこちらをどうぞ。 www.tokyobookgirl.com あっという間にこの時期がきてしまった。 2005年に創設され、著者と英語への翻訳者が共同受賞するブッカー国…

『浮世の画家』 カズオ・イシグロ(飛田茂雄・訳): 現代に警鐘を鳴らすような

[An Artist of the Floating World] ハヤカワepi文庫の『浮世の画家』を購入するのは、なんとこれで三度目。今年に入ってカバーデザインが変わっていた。前の(表紙に浮世絵が描かれている)デザインはタイトルがタイトルなだけに、浮世絵師の話だと勘違いさ…

The Spirit of Science Fiction / ロベルト・ボラーニョ: 若き詩人を描いた初期作品

[El espíritu de la ciencia-ficción] 読みたい2019年新刊リストには入れていなかったのだけれど、Kindleで試し読みをしたらめちゃくちゃ面白くて、即購入してしまった一冊。 ボラーニョが1984年に執筆した作品で、スペイン語で出版されたのが2016年、英語訳…

The Unhappiness of Being a Single Man / フランツ・カフカ

いただきものの、こちらの本。Pushkin Collection(Pushkin Press)から発売予定のカフカの短編集だ(発売日は2019年3月5日)。ドイツ語→英語の新訳。 The Unhappiness of Being a Single Man: Essential Stories (Pushkin Collection) 作者: Franz Kafka,Al…

トーキョーブックガールの読みたいリスト 2019年の新刊

みなさま、あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いいたします。 早速ですが、今年の新刊で読みたいなと考えている作品をピックアップ。個人的なTBR(to be read)リストです。発売日順。 洋書(英語) Unmarriageable / Soniah Kamal Black …