トーキョーブックガール

海外文学・世界文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

2019年 ブッカー賞ロングリスト

【Update: 2019-09-07】

9月に発表となったショートリストはこちら。

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ついにやってきた7月24日。今年のブッカー賞ロングリストが発表された。

https://thebookerprizes.com/booker-prize/news/2019-booker-prize-longlist-announced

このブログを開くのも久しぶり(ここ数ヶ月、以前書いた記事を自動更新中なので)。今年はオンでもオフでもばたばたしていて、趣味の読書のための時間がすっかりなくなってしまい、一月一冊読めるかどうかという感じ。そういう年もありますよね。

ロングリストにノミネートされそうな本も読みたいと思っていたのだけれどなかなか読めず。でも、今年は以前読んだ本が一冊入っていました。My Sister, the Serial Killer

さて、ロングリストにノミネートされた13作品はこちら!

 

The Testaments, マーガレット・アトウッド(カナダ)

The Testaments (The Handmaid’s Tale)

The Testaments (The Handmaid’s Tale)

 

ブッカー賞は、以前ノミネート・受賞した作家の作品が必ず候補に上がることもあり、絶対にノミネートされるに違いないと思っていた一冊。

アトウッドによる『侍女の物語』の続編。 

私も、今年一番楽しみにしている作品。出版される9月がやってくるのが待ちきれないですね。

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Night Boat to Tangier, ケヴィン・バリー(アイルランド)

Night Boat to Tangier

Night Boat to Tangier

 

二人の年老いた麻薬密輸人(アイルランド人)を主人公に据えた小説で、舞台となっているのは2018年のスペイン。港で、タンジールからやってくる片方の娘を待つ間、過去を振り返るというストーリー。

ケヴィン・バリーは昨年東京で開催されたヨーロッパ文芸フェスティバルに来日していましたね!  

 

My Sister, the Serial Killer, Oyinkan Braithwaite(UK/ナイジェリア) 

My Sister, the Serial Killer

My Sister, the Serial Killer

 

ナイジェリア在住の作家オインカーン・ブレイスウェイトによるデビュー作。映画化も決定しているとか。

当ブログのレビューはこちらから。

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Ducks, Newburyport, ルーシー・エルマン(アメリカ/UK)

Ducks, Newburyport (English Edition)

Ducks, Newburyport (English Edition)

 

オハイオに住む主婦は、アメリカ合衆国に生きることから耳や目に入ってくる無意味な情報の洪水と、彼女の周りの現実のギャップを埋めようとしている。子供のことや亡くなった両親、アフリカの象……アメリカという国の過去や現在、未来を描いた小説。

出版社の紹介文には"It's also very, very funny"とあって、気になる。

 

Girl, Woman, Other, Bernardine Evaristo(UK)

Girl, Woman, Other (English Edition)

Girl, Woman, Other (English Edition)

 

 12人の人生を描いた物語。そのほとんどは女性・黒人・イギリス人で、家族や友人、恋人について語っている。イギリスの各地を舞台とし、時間を超えて物語は進んでいく。

ということで、少しゼイディー・スミスのような感じ?

 

The Wall, ジョン・ランチェスター(UK)

The Wall

The Wall

 

 『最後の晩餐の作り方』などで知られるランチェスターの新作。舞台はUKと思われる島国だが、コンクリート製のthe Wallを張り巡らせている。新たにDefenderとなったジョセフ・カヴァナー(Joseph Kavanagh)に課せられた任務は、自身が担当するthe Wallのエリアをthe Othersから守ること。The Othersとは、海の向こうにいて時折攻め入ってくる人々である。ジョセフは自分の職務について、次第に疑問を持つようになり……というディストピア小説。

どことなく惜しまれつつも終了した『ゲーム・オブ・スローンズ』のようでもあるし、ボリス・ジョンソンが首相となったこれからのイギリスを映し出しているようでもある。

 

The Man Who Saw Everything, Devorah Levy(UK)

The Man Who Saw Everything

The Man Who Saw Everything

 

1988年、ナルシストの若き歴史家サウル・アドラーは、アビー・ロードで車にはねられる。特に怪我をすることはなく、その後芸大で学ぶ恋人ジェニファー・モローに会いに行く。

二人は別れることになるのだが、ジェニファーはアビー・ロードを渡るサウルの姿を写真に収めていた。

サウルはその後東ベルリンへ留学し、ベルリンの壁が壊されるのを目撃し、様々な人物に出会うことになるのだが……。

 

Lost Children Archive, Valeria Luiselli(メキシコ/イタリア)

LOST CHILDREN ARCHIVE

LOST CHILDREN ARCHIVE

 

アメリカでも、様々なメディアに「2019年注目の一冊」として取り上げられていた本作。

夏休みに、ニューヨークからアリゾナへ向かう一家が 主人公だ。ラジオからは不法移民クライシスについてのニュースが流れ、中米からアメリカへやってくる子供たちについてアナウンサーが話す。強制送還されたり、砂漠で行方不明になったりする子供たち。

現在のアメリカのニュースからインスピレーションを得て執筆された物語とのこと。

 

An Orchestra of Minorities, Chigozie Obioma(ナイジェリア)

An Orchestra of Minorities -- Free Preview (English Edition)

An Orchestra of Minorities -- Free Preview (English Edition)

 

愛する女性のために全てを犠牲にしたナイジェリアの養鶏家の話。

これは今積んでいます。Kindleで長めのプレビューを試し読みできるので、気になった方はぜひ。

 

Lanny, マックス・ポーター(UK)

Lanny

Lanny

 

ロンドン郊外の村で、男の子が行方不明となる。この村では代々、不思議な生き物がいるという伝説が語り継がれており、子供を通してその存在が描かれる。

レイチェル・ワイズ主演で映画化が決定しているそう。

https://eiga.com/news/20190313/5/

 

Quichotte, サルマン・ラシュディ(UK/インド)

Quichotte

Quichotte

 

サルマン・ラシュディの新作。タイトルの通りドン・キホーテがモチーフとなっており、年老いた旅のセールスマンがTVスターに恋をしてしまい、彼女を求めてアメリカ中を巡る話。これは面白そう!

 

10 Minutes, 38 Seconds in this Strange World, Elif Shafak(UK/トルコ)

10 Minutes 38 Seconds in this Strange World

10 Minutes 38 Seconds in this Strange World

 

 この小説の主人公は、なんと死んでいる。

レイラの死後、意識だけが漂い、彼女の人生において印象的だったあれやこれやを思い出す。

待望の息子が生まれ喜ぶ人々が屠ったヤギの肉の味や、男たちがモスクへ出かけている間足の毛を剃る女たちが使うワックスの匂い、気になっている男の人と飲んだカルダモンコーヒー。

どの思い出にも大切な人たちが登場し、現実世界では彼らはレイラを取り戻そうと必死になっているのだが……。

 

Frankissstein, ジャネット・ウィンターソン(UK)

Frankissstein

Frankissstein

 

自身の性の目覚めなどを自伝的に綴った『オレンジだけが果物じゃない』が有名なジャネット・ウィンターソンの新作。

1816年、ジュネーブ湖近郊ではメアリー・シェリーが『フランケンシュタイン』を生み出そうとしていた。

Brexitに揺れる現代のイギリスでは、トランスジェンダーの医師がAIを専門とする大学教授と恋に落ちる。

また、リアルなセックスドールを作って売り出そうとする男、人間の遺体を保存し再活用しようとする施設などが登場し……。

あらすじを読むと、以前ブッカー国際賞にノミネートされたFrankenstein in Baghdadやイアン・マキューアンの新作Machines Like Meを彷彿とさせる感じ。

 

所感や読書予定、今読んでいるものなど

この中で今積んでいるのがAn Orchestra of Minorities。

そして、これから読みたいのがBernardine EvaristoのGirl, Woman, Other、ジョン・ランチェスターのthe Wall、サルマン・ラシュディーのQuichotte、ジャネット・ウィンターソンのFrankissstein

ショートリスト発表までに読めるかどうか……。

今途中まで読んでいて、選ばれるかなと思っていたのがイアン・マキューアンのMachines Like Meとアリ・スミスのSpringなのだけれど、どちらも選ばれませんでしたね。でも、どちらも面白い。

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Machines Like Meは人造人間を巡るSFもので、マキューアンの新たな境地を見た思い。

これは、裏表紙も素敵で、はっとなる。

Machines Like Me

Machines Like Me

 

アリ・スミスの四部作は、Autumn, Winterとその季節に読むことにしていたのに、Springは春の間に読み終えることができず残念。 

ジョンソン氏が首相となり、Brexitの行方が危ぶまれる中、アリ・スミスが描く四部作の最終作Summerの内容も気になる。

Spring (Seasonal Quartet)

Spring (Seasonal Quartet)

 

あとは、On Earth We're Briefly Gorgeousも発売を楽しみにしていて、予約購入して積んでいるのに、表紙を開いてさえいない。悲しい。

ON EARTH WE'RE BRIEFLY GORGEOU

ON EARTH WE'RE BRIEFLY GORGEOU

 

ブッカー賞、アメリカが候補に入るようになった時はアメリカ人作家ばかりがノミネートされるのではないかという懸念もあったように記憶しているけれど、最近は本当に多国籍になりましたね。英語で教育を受け、英語で執筆する作家はもうどこにでもいるのだなと実感。どんどん面白くなっていくし、ブッカー国際賞との対比もまた興味深い。

そして、ナイジェリア勢、強い。ナイジェリアにルーツを持つ若き作家のなんと多く、才能に満ち溢れていることか。

テイストも様々で、一言で「これがナイジェリア文学」と言えるものがないことが特徴といえば特徴か。アメリカで教育を受けたか、イギリスで受けたかによっても、作家の持ち味が変わってくる気がするし。

では皆様、今日もhappy reading!