トーキョーブックガール

海外文学・世界文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

『カラーパープル』 アリス・ウォーカー

[The Color Purple]

1985年にスピルバーグによって映画化された『カラーパープル』は2005年ブロードウェイミュージカルにもなった。そしてなんと、このミュージカル版を映画化するというニュースが昨年末に発表された。

プロデューサーは1985年の映画を手がけたスティーブン・スピルバーグに、ミュージカルのプロデュースを手がけたオプラ・ウィンフリー(1985年の映画にも出演している)とクインシー・ジョーンズ(1985年の映画の音楽担当)!

これは今から楽しみですね。

pitchfork.com

というわけで久しぶりに原作を引っ張り出し、映画も観てみた。

この1986年出版の集英社文庫、現在までずっと増刷を重ねているんですね。私が持っているのは2008年版で第39刷。すごいなあ。

カラーパープル (集英社文庫)

カラーパープル (集英社文庫)

 

「フェミニズム文学か〜」とか、「黒人女性がとにかく虐げられる救いようのない話」みたいなイメージを持って敬遠している方も多いかもしれない。

でもこの作品の一番の特徴はエンターテイメント性と読みやすさ。かなりのページターナーだということは、その増刷されっぷりからも読み取れる。

 

主人公のセリーは20歳。父親からの性的虐待に耐え、体を張って妹のネッティーを守る日々を過ごしていた。ある日美しいネッティーにミスター**(セリーは彼の名前すら知らない)が求婚するのだが、父親は代わりにセリーを差し出す。

こうしてたくさんの子供を抱えるミスター**に嫁いだセリーは彼から暴力を受けながらも、ミスター**の子供や子供たちの妻、そしてミスター**の愛人シャグと絆を育み、愛を知ることになる。

自分に与えられた運命を淡々と生きているセリーだが、ある日、生き別れたのちにアフリカへ渡ったネッティーからの手紙を読んで……。

 

ストーリーの半分以上は手紙という形でのセリーとネッティーのやりとりで成り立っている。いや、やりとりというのは正しくない。なぜならお互い、手紙が届いていないかもしれないことを承知で、相手からの返事がない状況下で伝えたいことをただ綴っているだけだからだ。

結婚に縛られることなく、宗教を通じてアフリカへ行くことになったネッティーは、自身が学んだことをセリーに書き綴る。

ニューヨークという大都会にあるハーレムという自由な町のこと、奴隷としてアメリカ合衆国にやってきた自分たちの祖先の歴史、アフリカで感じた女性の抑圧。

 オリンカの人々は、女の子には教育の必要がないと考えています。母親の一人に、なぜそう考えるのかと一度聞いたことがあります。彼女はこう答えました。女の子は、何の価値もない存在だけど、夫がいてはじめて彼女は価値のあるものになると。

 彼女は何になるのです? と私は聞きました。

 もちろん、夫の子供たちの母親になるのですよ、と彼女は答えました。

 でも、私は誰の子供の母親でもありません、それでも私は私なりの価値があります、と私は言いました。

オリンカの人々の考え方は、当時のアメリカでの黒人に対する白人の考え方と同じである。黒人に勉強させる必要はない、知恵をつける必要はない。「黒人」が「女」に変わっただけ。

そして、これはセリーに対する父親やミスター**の考えとも同じである。

セリーが仕方なく受け入れていた運命を、周りの女たちは強い意思の力で跳ね飛ばしている。シャグは自由な恋愛を楽しみながら自分の仕事を持ち、ソフィアは夫へ従うことをよしとしない。そんな彼女たちを見つめ、ネッティーからの手紙と照らし合わせること、疑問を抱くことで、セリーも徐々に「目覚め」ていくのだ。

 

そして、タイトルともなっている「カラーパープル」とは一体何のことなのか?

作中ではこのように登場する。セリーとシャグの会話だ。

 あんた、神はお世辞が好きって言ってるのかい。

 ううん、お世辞じゃなくて、いいものを分かち合うってことをしたいんじゃないの? あんたが野原を歩いていて、むらさきいろのそばを通りすぎて、それに気づきさえしなかったら、神は本気で腹を立てると思うよ。

神が与えたもうた美、自然の美、喜びや愛といった幸福な感情、それら全てをひっくるめて「むらさきいろ」と呼んでいるのだ。 

 

近年、『オリシャ戦記』や『奇跡の大地』、『地下鉄道』といった、同じように奴隷制やアフリカとアメリカの黒人女性を描いた作品が話題となっている。どれもユニークで特定ジャンルに縛られない作品であるとともに、『カラーパープル』やトニ・モリスンの作品から脈々と息づくスピリットを感じる。 

奇跡の大地

奇跡の大地

 
地下鉄道

地下鉄道

 

 

 映画もすごくいいんです。些細なエピソードもしっかりと拾い上げていて、ウーピー・ゴールドバーグの演技も光るし、今見ても全く色あせていない。1900年代を舞台にした話だけれど、時代を超えた普遍性がある。新しく製作される映画を観るのも本当に楽しみ!

カラーパープル(字幕版)

カラーパープル(字幕版)