キャシー・グリーンバーグはシカゴ在住のアーティスト。というか、大学でモダンアートを学び、自身もモダンアート制作に取り組んでいるのだけれど、悲しいかな作品が高く評価されたことは一度もない。美術教師になりたいと願っているものの面接に落ちまくり、図書館やカフェでアルバイトしながらなんとか食い繋いでいた。
ところがそんなある日、家賃を滞納したことが原因で、アパートを追い出されてしまう。困り果ててクレイグスリストを眺めていたら、とんでもない高級物件に住む男性が、とんでもない好条件でルームメイトを募集していた。
こんなに安いなんて、ものすごい汚部屋なのか!? 家主はレイプ魔、はたまた殺人鬼か!? おそるおそる内覧に訪れたキャシーを待っていたのは、水もしたたるいい男。だが、彼には秘密があった。いわゆる摂政時代(リージェンシー)のイギリスで生まれ育った吸血鬼だったのだ。
という、割と単純明快なパラノーマルロマンス。あらすじを読んだだけで結末が想像できるし、特にハラハラドキドキもないのだけれど、それがよかった。そういう作品が読みたいときもある。
めちゃくちゃ古風な言葉遣い・服装・立ち振る舞いの吸血鬼(19世紀出身だからね)、フレデリック・J・フィッツウィリアム。何百年の眠りから目を覚ましたわけだが、21世紀のアメリカになじむために奮闘し、ルームメイトだったキャシーの助けを借りてイメチェン(?)をはかる。
現代人のヒロイン X リージェンシー・ロマンスのヒーローという趣もあって、ふたりのやりとりがとっても楽しい。フレデリックがテイラー・スウィフトの大ファンになっちゃって、ネットフリックスで視聴した『愛の不時着』にどハマりし、韓国人俳優の着こなしからファッションのいろはを学ぶ……というくだりも最高。
ルームメイトが吸血鬼だと知ったキャシーの頭に浮かぶのが『バフィー 〜恋する十字架』というのが、1990s/2000s kidsには嬉しいところ。そこからはフレデリック=エンジェル(バフィーに登場するヴァンパイア)だと思って読み進めました。懐かしのエンジェル!! バフィーもかっこよくて可愛かったなあ。1990年代には、なんと多くの少女戦士がいたことか。
最近、特にロマンス小説では1990年代をモチーフとして使った作品が増えているように思う。