イギリス文学
トーマス・C・フォスターによる『大学教授のように小説を読む方法』には、「疑わしきはシェイクスピアと思え……」という章がある。 芝居が好き、登場人物が好き、美しい言葉が好き、追い詰められてもウィットを忘れない台詞が好き。……おそらく世の作家たちも…
みなさまが「つい買ってしまう」(小説の)テーマやモチーフってなんですか? 『文藝 2020年春夏号』の「源氏! 源氏! 源氏!」特集で、江國香織さんが「姉妹ものが好きで、姉妹と見るとつい買ってしまう」というような発言をされていた。読みながら、「わ…
[Twelfth Night] コロナ禍では演劇、ミュージカル、オペラ、バレエが軒並み中止され、どうなってしまうんだろうと思っていたけれど、気を揉んでいるうちに色々と再開の運びとなり、ライブ配信も一般化し、新たな観劇の方法が確立されつつある。とはいえ、い…
[Frenesie a Pigalle] 新しいものは、いつだって月組からやってくる。 宝塚を観劇していると何度もそう思う。元男役だったちゃぴちゃん(愛希れいか)がトップ娘役になってガンガン踊り、「(トップ娘じゃなくて)トップスター」と呼ばれるようになったり、…
最初の数ページを読んだだけで、はっと驚き、早くもこの小説のとりこになる。 Amma is walking along the promenade of the waterway that bisects her city, a few early morning barges cruise slowly by to her left is the nautical-themed footbridge w…
(春) アリ・スミスのSeasonal Quartetも、ついに3冊目。残すは今夏出版予定のSummerのみ。ここまで読み進めて、ようやくアリ・スミスの素晴らしさを実感した! すごい、すごい、すごい。なんて面白いの。 Spring (Seasonal Quartet) 作者: Ali Smith 出版…
(恋するアダム) [Updated: 2020-12-19] 日本語訳が2021年1月、『恋するアダム』として新潮クレストブックスから発売に。翻訳は、多くのマキューアン作品を手がける村松潔さん。楽しみ! 早速予約した。 恋するアダム 作者:イアン・マキューアン 発売日: 20…
[Oroonoko] ガーディアンの1000冊("State of the Nation"部門)に選ばれている『オルノーコ』を読んだ。『美しい浮気女』と同時収録されている岩波文庫で。 1988年出版でもう絶版になっているのだけれど、数年前に神保町から連れて帰ったのだった。積ん読の…
[The Third Man] 例えば飛行機や新幹線の移動、カフェでの時間つぶし、あるいは予定のない土曜日。 ぱっと数時間で読了できて、ストーリーも面白く、かつ文学的な小説が読みたいと思う日がある。変に感情移入してしまい泣いたり笑ったりしたくない、ただただ…
[Mrs Dalloway] どんな本も、出会うタイミングというものがあるのだなと最近とみに感じる。 昨年『100分で名著』で、『赤毛のアン』を紹介していた茂木健一郎さんの話を聞いていたときも、そう実感したのだった。茂木さんは、11歳の時に図書館で『赤毛のアン…
[The Paying Guests] なんだかとっても久しぶりの恋愛小説。 いまだにThe Night Watchを積んでいるというのに、比較的新しいこちらの作品を手に取ってしまった。 黄昏の彼女たち〈上〉 (創元推理文庫) 作者: サラ・ウォーターズ,中村有希 出版社/メーカー: …
[An Artist of the Floating World] ハヤカワepi文庫の『浮世の画家』を購入するのは、なんとこれで三度目。 今年に入ってカバーデザインが変わっていた。前の(表紙に浮世絵が描かれている)デザインはタイトルがタイトルなだけに、浮世絵師の話だと勘違い…
(冬) アリ・スミスのSeasonal Quartet、二作目。イギリスを含んだ多くの国では一年の始まりが秋からだから、このシリーズも秋から始まったのだろう。 Winter: from the Man Booker Prize-shortlisted author (Seasonal Quartet) 作者: Ali Smith 出版社/メ…
(バグダードのフランケンシュタイン) 大人になってから初めて『フランケンシュタイン』を読み返した。 子供の頃は、この話について、まあなんと理解できていなかったことか! 今だって理解できているのかと言われれば疑問が残るが、幼い時分はどこまでも追…
(秋) 日本語訳が発売されたばかりの『両方になる』も読みたいけれど、せっかく秋なので、こちらを。昨年のブッカー賞ショート・リストにノミネートされていた作品だ。 アリ・スミスはこの作品を皮切りにWinter、Spring(2019年3月発売予定)と、四季をタイ…
2018年のブッカー賞ロングリストにはディストピア小説が複数ノミネートされていて、興味を持ったのがこちら。 ジャンルでいうとフェミニスト・ディストピアで、『侍女の物語』やHot Milkのファンには特におすすめという触れ込みだった。 The Water Cure: LON…
もうすぐ今年のブッカー賞ロングリストの発表、ということで、候補になりそうな作品をなんとなく読んでいる今日この頃。 まずはこちら。ジュリアン・バーンズの待望の新作。王道のラブストーリーである。 The Only Story 作者: Julian Barnes 出版社/メーカ…
[Nutshell] 『波 6月号』の小山田浩子さんによる書評がとても面白かったので、発売日に購入したマキューアンの最新作。ようやく読む時間がとれた。 憂鬱な10か月 (新潮クレスト・ブックス) 作者: イアンマキューアン,Ian McEwan,村松潔 出版社/メーカー: 新…
[Nocturnes] これも、『わたしたちが孤児だったころ』とともに読み返した一冊。 イシグロ唯一の短編集で、注目すべきは「短編集を書くと決意して書かれた」作品ということ。フィッツジェラルドのように金を稼ぐため書き散らしたわけでもなければ(既にブッカ…
[When We Were Orphans] 最近『わたしたちが孤児だったころ』を読んだばかりの母と話した。 私が読んだのはかなり前で、上海が舞台の探偵小説風小説ということ以外思い出せず、まるで読んだことのない本のあらすじや感想を聞く気分で聞いていたのだけれど、…
(西への出口) 2017年のブッカー賞にノミネートされていた、この小説。 読んでみたいと書いてから半年経ってしまったが、ようやく読んだ。 Penguinのカバーも素敵。オレンジのイスラム建築のドアの向こうに西洋の都市(ロンドン)が見えるというもので、ま…
[The End of the Affair] 『情事の終り』というタイトルから、いろいろと考えてしまった。 原題は"The End of the Affair"。邦題もとても素敵。 情事の終り (新潮文庫) 作者: グレアムグリーン,Graham Greene,上岡伸雄 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014…
[1984] ニュースは政府の見解を垂れ流し、一般市民の監視は警察の主要な活動となり、理性的な操作や差し押さえといったものは今やジョークに過ぎない。そんな例は枚挙にいとまがない。「ああ、政府が<ビッグ・ブラザー>に変わっちまった。オーウェルの予測…
極東とは、東アジア、東北アジアと東南アジアの一部を指す言葉*1。 ということで、この夏の旅行のお供はサマセット・モームのFar Eastern Talesだった。Vintage Classicsの表紙もどことなくオリエンタル。 Far Eastern Tales 作者: W. Somerset Maugham 出版…
[Pride and Prejudice] こんにちは、トーキョーブックガールです。 さて、21世紀に生きる私たちをもとりこにするジェーン・オースティン作品。 もちろん最も有名なのは『高慢と偏見』だろう。 何度となく映画化&ドラマ化され、その度に人気を博している。 …
[Tempest] シェイクスピアは謎に包まれている。 ストラトフォード・アポン・エイヴォンで革手袋商人の息子として生まれ育ち、18歳の時に26歳の女性アン・ハサウェイと結婚。 その後ロンドンへ出て、空白の数年間ののち、俳優兼劇作家として名をはせるように…
[The Clever Princess] Beauty Mythについて書きながら、この本を思い出したので今日はアリーテ姫について書いてみたいと思います。 物心つくかつかないかという頃から本が大好きだった私。 でも、読書に対する情熱を絶やすことなく今まで生きてきたのは、い…