2020年ブッカー賞受賞作
待ちに待った11月19日(英国)、2020年のブッカー賞受賞作が発表された。それがこちら、Shuggie Bain。スコットランド出身のDouglas Stuart(ダグラス・スチュアート)によるデビュー作。
1980年代にグラスゴーの公営住宅で少年時代を過ごしたHugh(Shuggie)Bainの物語。Shuggieの母Agnesは「灰色の人生」を受け入れることができず、外見を美しく保つことで自身のプライドを満足させようとする。Shuggieの子どもたちは、じきにアルコール中毒となった母親を置いて独立していくのだが、まだ小さかったShuggieは母親と取り残される……。労働者階級の生活を描き出した作品で、ハンヤ・ヤナギハラなどと比較されている様子。
みなさまの予想は当たりましたか? 本作の読者からの評価は高かったものの、受賞は驚きの結果かも!
1作目の長編小説がブッカー賞を受賞した作家たち
作家デビュー作がロングリストはもちろんショートリストに残ることはままあるものの、受賞作となることはとても珍しい。1969年から始まったブッカー賞の歴史において、作家デビュー作または1作目の長編小説がブッカー賞を受賞したという作家は2020年まででたったの4人。今年受賞したダグラス・スチュアート以外は誰かというと、
・Keri Hulme(ケリ・ヒューム)/ The Bone People(1985年)
マオリの血を引くニュージーランドの作家、ケリ・ヒューム。受賞作は翻訳されていないものの、短編が1つ、こちらに収録されているよう。
・アルンダティ・ロイ / 『小さきものたちの神』(1997年)
言わずと知れたインド出身のアルンダティ・ロイは最新作The Ministroy of Utmost Happinessも2017年のブッカー賞のロングリストにノミネートされていた。
・ジョージ・ソーンダーズ / 『リンカーンとさまよえる霊魂たち』(2017年)
米国人作家のソーンダーズは短編小説を多く発表し、高い評価を得ていたが、こちらは長編デビュー作。
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1980年代をグラスゴーで過ごしたスチュアートの自伝的ともいえる小説とのことで、受賞理由("It’s not a story where everybody lives happily ever after … but this is a hopeful read in a different sort of way … anybody who reads it will never feel the same.") を見ていると早く読みたくなりますね。You guessed right...どのノミネート作品もまだ読めていないわたしです。20代の頃の自分がタイムスリップしてきたら腰を抜かすほど、マルチタスキングな日々を過ごしている気がする30代の今日この頃。今年中に『十二夜』と『冬物語』と『ロミオとジュリエット』について書きたいなあ。観劇の予習に、アリ・スミスの予習にと、シェイクスピアについて色々と考えて過ごしている秋です。
ではみなさま、今週末もhappy reading!
2020年のブッカー賞ショートリストはこちら。