9月14日(英国)、2021年のブッカー賞ショートリスト(6冊)が発表された。
ロングリスト(13冊)はこちらから。
- A Passage North / Anuk Arudpragasam(スリランカ)
- The Promise / Damon Galgut(南アフリカ)
- No One is Talking About This / パトリシア・ロックウッド(米国)
- The Fortune Men / ナディファ・モハメド(ソマリア / 英国)
- Bewilderment / リチャード・パワーズ(米国)
- Great Circle / Maggie Shipstead(米国)
- 所感
A Passage North / Anuk Arudpragasam(スリランカ)
英語とタミル語で執筆しているというスリランカ人作家の2作目の長編。スリランカ生まれでブッカー賞にノミネートされた作家といえば、マイケル・オンダーチェ、Romesh Gunesekeraがいる。
A Passage NorthはMessage、Journey、Burningの3部からなる小説で、主人公Krishanの祖母の介護をしていたRaniが井戸に落ちて死んでいるのが見つかったというエピソードから始まる。スリランカのコロンボに暮らすKrishanはRaniの葬式に出席するため、戦争の傷跡が色濃く残る北部へと旅立つ。と同時に、Krishanがデリーに住んでいた頃付き合っていた女性Anjumからもメールが届き、Krishanは過去に思いを馳せる。
The Promise / Damon Galgut(南アフリカ)
ブッカー賞ノミネートは3回目のDamon Galgut。
本作は南アフリカの白人家庭の話。母さん、父さん、アストリッド、アントン(Ma, Pa, Astrid, Anton)のそれぞれに焦点が当てられる。母さんが亡くなり、南アフリカの情勢も変わりつつある。この家庭にはずっと住み込みで働いてくれていたサローム(Salome)という黒人女性がいるのだが、ずっと尽くしてくれた彼女に対して、引退時には家と土地を贈ろうと父さんと母さんは約束している。だがその約束は果たされないまま時が流れ……。
No One is Talking About This / パトリシア・ロックウッド(米国)
今年のWomen's Prize for Fictionのショートリスト入りしている作品。日本も世界も、ソーシャルメディアを取り扱った文芸作品が増えているなあという印象。
The Fortune Men / ナディファ・モハメド(ソマリア / 英国)
デビュー作のBlack Mamba BoyがWomen's Prize for Fictionにノミネートされていたソマリア出身の作家の新作。2013年にはGRANTAのBest of Young British Novelistsリスト入りも果たしている。ブッカー賞ノミネートは初。
Mahmood Mattanは、ソマリア人や西インド諸島出身の船乗りが多く集まるカーディフ(ウェールズの首都)のタイガーベイで暮らしていたのだが、殺人事件が発生し、なぜか犯人ではないかと疑いの目を向けられるようになる。
Bewilderment / リチャード・パワーズ(米国)
まだ出版前で読めないパワーズの最新作。若き宇宙生物学者テオ・バーン(Theo Byrne)と9歳の息子ロビン(Robin)の物語……とのこと。
Great Circle / Maggie Shipstead(米国)
Maggie Shipsteadはミレニアル世代の作家(1983年生まれ)で、ブッカー賞ノミネートは初。
舞台は1914年のモンタナ州。マリアン&ジェイミー・グレーヴス(Marian and Jamie Graves)の幼いきょうだいは転覆した遠洋定期船から救い出される。やがて成長したマリアンは航空機に魅せられるようになり、14歳で学校を中退するとパトロンとなった男性から援助を受けつつ飛行を練習するようになる。だが、その後飛行中に行方不明となる。
その100年後、映画の撮影でマリアンを演じることになったハドリー・バクスター(Hadley Baxter)は、ロマンチックな映画にうってつけの女優という自身のイメージを再構築したいともがいているところだ。ハドリーが想像するマリアン像が実際のマリアンと重なっていき、2つの物語が語られる。
著者は女性の飛行に関して何年もの間調査を重ねてきたということで(下)、興味深いです。
The True Story Behind Maggie Shipstead’s ‘Great Circle’ | Outside Online
所感
わたしが読んでいたロングリストノミネート作品は3作のみ(カズオ・イシグロ、カレン・ジェニングス、レイチェル・カスク)だったのですが、どれもショートリストには入りませんでした。今読んでいるのはA Town Called Solaceでこちらもショートリストには入らず。どれも素晴らしかったので残念〜! ですが、よりショートリストへの期待が高まります。
積んでいるのはThe Promiseで、これはロングリストに入る気がして、ちょっと後回しにしていた作品。あとはどれを読もうかなあ。
過去の受賞作はこちらから。