[Girlsplaining]
どっぷりとはまってしまった自伝的グラフィックノベル。著者はドイツの方で、わたしが読んだのは英訳(原書は2018年、翻訳は2021年出版)。
1988年生まれ、ベルリン在住の29歳(当時)の著者が執筆した自伝的コミックで、ピンク基調のイラストがかわいく、「何を描こう? キャリー・ブラッドショーの『I couldn't help but wonder...』みたいなキャッチフレーズが必要かな?」という冒頭のコラムもチャーミング。
毛深いことに悩んでいた10代を振り返り、だれにもわたしをhair-shamingする権利などなかったと気づくエピソードや、性差別主義的な言葉を投げつけられてフリーズしてしまったけれど、こうしたらよかったああしたらよかったと次回すべき対応を色々検討する話などが、すてきなイラストとともに語られる。
なぜ女性だけが外見で判断され、「ヒーロー」とは異なり「ヒロイン」にはいくつもの定義があり(ドイツのWikipediaの「ヒーロー」のページに載っている女性の話が興味深く、色々な国のWikiを確認してしまった)、女性が怒ると「ヒステリック」と揶揄され、国語(ドイツ語)のクラスでは女性作家ではなくシラーやフォンターネばかり勉強させられるのか。なぜ女性器ばかりが省略されたり「外陰部」という言葉が禁句になったりしているのか。
夏に読んだスウェーデンの『禁断の果実ー女性の身体と性のタブー』につながるところもあり(下)、育児に関連して調べていた性教育について改めて考えるきっかけにもなった。
そしてなにより印象的だったのは、著者が子供時代を過ごした1990年代を振り返る場面。1990年代には女の子を鼓舞する素晴らしいヒロインが存在していた!という主張に深くうなずく。そういえばそうだった! すっかり忘れていたけれど。
著者はかなりの日本文化好きなので、日本のアニメがどれほど当時の彼女の支えとなったのかを滔々と語っている。たとえば『セーラームーン』は世界を救う女性が登場するだけではなく、ジェンダーを固定する必要などないということを教えてくれたのだという(性転換して戦うセーラースターライツのこと。ただしこれはアニメのみの設定で、原作では男装している)。『少女革命ウテナ』のウテナ、『魔法騎士レイアース』の海ちゃん、『ベルサイユのばら』のオスカル(日本では90年代ではないが)など、大好きなキャラクターたちが固定観念を覆してくれたのだと。
どれもこれも大好きだったな……ほかにも『バフィー〜恋する十字架〜』(絵が当時のサラ・ミシェル・ゲラーそのもので見入ってしまった)、イタリアの『Princess Fantaghirò』など、ヒロインの話は続き、すっかり1990年代カルチャーの振り返りをしたい気分になった。
ほかにも、ナオミ・オルダーマンの『パワー』やマーガレット・アトウッドの『侍女の物語』、ジョーン・リンジーの『ピクニック・アット・ハンギング・ロック』、そしてタイトルからも明らかなようにレベッカ・ソルニットの『説教したがる男たち』など、さまざまな文献が引用(イラストでも)されていて読み応えがある。
Instagramをチェックしていると著者は今年出産予定(6月から産休&育休で更新はストップ中)とのことで、これから出版されるであろう妊娠&育児コミックエッセイも楽しみ!