ラテンアメリカ文学
英語訳のタイトルがとてもいい。"I spy with my little eyes..."のLittle Eyes。 そしておそらく、"big brother"をも意識しているのだろうと思われる。『一九八四年』でジョージ・オーウェルが描いた監視社会を、シュウェブリンも描こうとしているから。しか…
[The Story of My Teeth / La Historia de Mis Dientes] てっきり最初に英語が出版されたのだと思っていた、『俺の歯の話』。スペイン語だった。 作者のバレリア・ルイセリはメキシコ人だが父の仕事(NGOに勤務したのち外交官になる)の影響で、米国、コスタ…
[Nocturno de Chile] 白水社から出ているボラーニョ・コレクション最後の一冊。 そのタイトル通り、チリという国、そして語り手のセバスティアン=ウルティア=ラクロワというチリ人神父にとっての「夜」、死にゆく心中を描き出した物語だ。 チリ夜想曲 (ボ…
楽しみに待っていた岩波文庫の『20世紀ラテンアメリカ短篇選』。表紙からしてディエゴ・リベラで、気持ちが高まる。 20世紀ラテンアメリカ短篇選 (岩波文庫 赤 793-1) 作者: 野谷文昭 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/03/16 メディア: 文庫 この商品…
[Libro de sueños] ボルヘスの『夢の本』が河出文庫化されたので(単行本は国書刊行会から出ていて、翻訳者は同じく堀内研二さん)、早速購入した。 おそらく日本語で読むのは初めて。 夢の本 (河出文庫) 作者: ホルヘ・ルイス・ボルヘス,堀内研二 出版社/メ…
[El espíritu de la ciencia-ficción] 読みたい2019年新刊リストには入れていなかったのだけれど、Kindleで試し読みをしたらめちゃくちゃ面白くて、即購入してしまった一冊。 ボラーニョが1984年に執筆した作品で、スペイン語で出版されたのが2016年、英語訳…
[Conversación en La Catedral] 「ラテンアメリカの文学」シリーズで1984年に出版されていたリョサの『ラ・カテドラルでの対話』。2018年にめでたく岩波文庫から新訳が登場した。ということで、年末年始はこの一冊と濃密な時間を過ごすことができて満足して…
[Final del Juego] コルタサルの最初の短編集『遊戯の終わり』を再読した。 遊戯の終わり (岩波文庫) 作者: コルタサル,木村榮一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2012/06/16 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 30回 この商品を含むブログ (23件) を見…
[El Obsceno Pájaro de la Noche] 月夜になると、恐ろしい首が小麦色の長いながい髭をなびかせながら空を飛ぶ。その顔は主人の娘の美しい顔にそっくりで……不吉な鳥チョンチョンの身の毛もよだつトゥエ、トゥエ、トゥエという声をまねて歌うのだという。魔法…
(黄金の軍鶏) フアン・ルルフォのEl Gallo de Oroを読んだ。 二冊の本を出版した後、フィクションの執筆はやめてしまったルルフォだが、その後は映画やテレビの脚本を手がけるようになる。本作はルルフォ作の映画用プロット(原案)で、映画化の際にはカル…
[Las cosas que perdimos en el fuego] 良作、英語訳も売れに売れていると評判を聞いていて、スペイン語で読もうか英語で読もうか迷っていたら、なんと本屋さんで日本語訳を発見した! どこに行っても海外文学のコーナーで平積みになっているから、注目され…
最近、絶版してしまったモダンクラシックな作品の復刊が相次いでいて嬉しい。 『ラテンアメリカ怪談集』は、1990年代に河出文庫にて発売されていたそうなのだけれど、私が読みたいと思った頃にはすでに絶版となって久しかった。 Amazonで古本を探してみても…
[Cuentos Breves y Extraordinarios] あらゆる人食い鬼がセイロンに棲み、彼らの存在すべてがただ一個のレモンのなかにはいっていることは、よく知られている。盲人がそのレモンを切り刻むと、人食い鬼は残らず死ぬ。 ー『インドの好古家』第1巻(1872)より…
(わたしは既婚女性だった) セサル・アイラの『わたしの物語』を読んだ時、巻末の訳者あとがきにYo Era una Mujer Casadaの紹介があったので、気になりKindleで購入して(たったの457円、Kindleだとかなりお買い得)読んだ。 ラテンアメリカ文学の中でも特…
[Bestiario] 大阪で大きい地震がありました。本ブログは基本的に自動更新なので反応が遅く恐縮ですが、関西の皆様ご無事でしたでしょうか。 雨が続き心も晴れないですね……安全第一、気をつけてお過ごし下さい。 今日は、大好きなコルタサルの新刊が光文社文…
[Pájaros en la boca] 最近ラテアメ文学の再読ばかりしていて気がついた。邦訳されているイスパノアメリカ文学は圧倒的に男性作家ばかりだなと。 もちろんラテンアメリカには男性作家しかいないのかというとそんなわけはなく、大学の頃授業で学んだ作品は男…
[Como Me Hice Monja] セサル・アイラの『わたしの物語』は、読者が裏切られ続ける物語。 とにかくやられた感がすごいのだ。 わたしの物語 (創造するラテンアメリカ) 作者: セサル・アイラ,柳原孝敦 出版社/メーカー: 松籟社 発売日: 2012/07/27 メディア: …
[Llamadas Telefónicas] ボラーニョの短編集『通話』を読んだ。 昔売っていたものと若干表紙が変わったなと思ったら、改訳バージョンらしい。 2009年に出たものが改訳されて2014年に再発売なんて、売れに売れているのだろうな。収録されているのは全部で14作…
[El Llano en Llamas] とても久しぶりに『燃える平原』を再読した。日本語で読むのは初めて。 絶版になっている水声社の単行本を買おうかなどうしようかな、と考えていた時に岩波文庫として出版されるというニュースを聞いたので5月まで楽しみに待っていたの…
[Borges, Oral] 『ボルヘス、オラル』が昨年岩波で文庫化されていた。 1978年の5月から6月にかけて、ブエノスアイレスのベルグラーノ大学(Universidad de Belgrano)にて行われた5回にわたる講演記録である。 語るボルヘス――書物・不死性・時間ほか (岩波文…
[Elogio de la Madrastra] マリオ・バルガス=リョサの作品は大きく2つに分けられる。私は心の中でこっそり「社会派リョサ」、「エロリョサ」と呼び分けている。 社会派リョサは『都会と犬ども』、『緑の家』、『密林の語り部』などノーベル文学賞が「権力構…
[El Beso de la Mujer Arana] 人が見た映画や、読んだ小説の話を聞くのが大好きである。 人の記憶の中の映画や小説はとんでもなく面白く感じられる。その後話題に上がった映画を見たり小説を読んだりしても、話を聞いている時ほど面白く感じない。その人の主…
[Pedro Páramo] ラテンアメリカ文学の「はじまり」 「もう一度読み返したくなる」、「必ず二回読みたくなる」と銘打たれて書店に並んでいる本のほとんどは(わりとバレバレな)叙述トリックを用いたミステリー小説である。 そういう説明文をつけていい小説は…
[Eréndira] 私にとって初めてのガルシア=マルケスは『百年の孤独』で、その一冊で「ガルシア=マルケスの沼」に真っ逆さまに落ちていってしまったのだけれど、もしこれからガルシア=マルケスを読む友人がいるとすれば『エレンディラ』を最初に読むように薦…
[Aura y otros cuentos] 「これ、知っている」というのが、フエンテスを初めて読んだ時の感想だった。ちなみに初めて読んだのはラテンアメリカ文学の授業で、「女王人形」と「純な魂」だったと思う。 フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫) 作…
[Todos los Fuegos el Fuego] 『すべての火は火』を初めて知ったのは、ティーンエイジャーだった頃。 国語(Literature)の先生とコロンビア出身の友人と話しているときに「今読んでいる本」の話になって、友人が「All Fires the Fireというコルタサルの本を…
[El Amante Japonés] そういえば、久しぶりにアジェンデの新作の日本語訳が発売されていた! 原題は El Amante Japonés(英題はThe Japanese Lover)。 日本人の恋びと 作者: イサベル・アジェンデ,木村裕美 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/02/…
先日もちらっと書いた Rosaura a Las Diez*1。「10時のロサウラ」。 1955年に出版された、Marco Denevi(マルコ・デネヴィ)の処女作。 舞台やドラマ、映画化もされた大ヒット作である。 かなり昔の作品だが、日本のAmazonでもペーパーバックを良心的な価格…
こんにちは、トーキョーブックガールです。 みなさま、ボルヘスはお好きですか? 好きか嫌いかと言われると、好きなのか?と自分でも考え込んでしまう私笑。 好き嫌いが語れるほど読み込んでいるのかと言われればこれまた疑問が残るが、その膨大な知識量に裏…
[Zorro] 子供の頃のヒーローは? と聞かれたら、迷いなく怪傑ゾロだと答えます! 我が家にはゾロの絵本や子供用のダイジェストがあったので、幼い頃から「弱気を助け、強きを挫く」を提言する存在として憧れていた。 そんなゾロの生い立ちを(想像して)描い…