トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

洋書レビュー(スペイン語)

Distancia de rescate / サマンタ・シュウェブリン

我が子が1歳半くらいになったとき、真夜中にふと目が覚めた。すぐにわかった。とうとうやってきたのだ、「あれ」が。ひたひたと全身を満たすように増幅していく恐怖は、どこか懐かしいものでもあった。やがてくると知っていたから。 いわゆる想像力の暴走だ…

Chicas Muertas / セルバ・アルマダ: 女性だったから殺された女の子たち、フェミサイドについて

[Dead Girls] 「わたし、絶対にぜーったいにアルゼンチンの男の人とは結婚しないんだ。ていうか、イスパノアメリカの男の人とは結婚しない*1」 16歳のころ、アルゼンチン出身の友人がそう言った。「どうして?」と問うわたしたちに、彼女はいまだに根強いマ…

The Dialogue of Two Snails / フェデリコ・ガルシーア・ロルカ

(二匹のかたつむりの会話) なぜわざわざ英語で……という感じがしなくもないが、以前ブログに書いた文庫サイズのPenguin Modernシリーズからロルカの作品集が出ていたので衝動買いしてしまった。 衝動買いしたくもなるよ、この値段なら(イギリスでは1ポンド…

Cortazar / Jesus Marchamalo, Marc Torices Robledo

(コルタサル) ずっと読みたかったグラフィックノベル。フリオ・コルタサルの人生を描いた作品。Amazon.esでもGoodreadsでも驚くほど高評価がつけられていて、楽しみに積んでいた。そろそろ二巡目の『石蹴り遊び』をしようと思うので、手始めにこちらを読ん…

Las Manos Pequeñas / アンドレス・バルバ

(小さな手) 最近、アンドレス・バルバ(Andrés Barba)にはまっている。なんと、先日のヨーロッパ文芸フェスティバルで来日していたのですね。しかもヨーロッパハウスで講演していたのか〜! どのみち、この日は行けなかったのだけれど、是非話を聞いてみ…

『遊戯の終わり』 フリオ・コルタサル

[Final del Juego] コルタサルの最初の短編集『遊戯の終わり』を再読した。 遊戯の終わり (岩波文庫) 作者: コルタサル,木村榮一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2012/06/16 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 30回 この商品を含むブログ (23件) を見…

El gallo de oro(黄金の軍鶏)/ フアン・ルルフォ

(黄金の軍鶏) フアン・ルルフォのEl Gallo de Oroを読んだ。 2冊の本を出版した後、フィクションの執筆はやめてしまったルルフォだが、その後は映画やテレビの脚本を手がけるようになる。本作はルルフォ作の映画用プロット(原案)で、映画化の際にはカル…

Yo Era una Mujer Casada / セサル・アイラ: 支離滅裂でめちゃくちゃ、なのにとんでもなく面白い

(奥さんだったわたし) セサル・アイラの『わたしの物語』を読んだ時、巻末の訳者あとがきにYo Era una Mujer Casadaの紹介があったので、気になりKindleで購入して(たったの457円、Kindleだとかなりお買い得)読んだ。 ラテンアメリカ文学の中でも特に、…

Rosaura a las diez / Marco Denevi: 10時のロサウラ

先日もちらっと書いた Rosaura a Las Diez*1。「10時のロサウラ」。1955年に出版された、Marco Denevi(マルコ・デネヴィ)のデビュー作。 舞台やドラマ、映画化もされた大ヒット作である。 かなり昔の作品だが、日本のAmazonでもペーパーバックを良心的な価…

Nada / Carmen Laforet(カルメン・ラフォレット): 少女が大人になるまで

みなさま、こんにちは! トーキョーブックガールです。南の島から東京に戻ってきました。東京の方がよっぽど暑いことにびっくりでございます……。 今日は、夏になると読み返したくなる小説について。Carmen LaforetのNada。 スペイン文学界では非常に有名な小…