(コルタサル)
ずっと読みたかったグラフィックノベル。フリオ・コルタサルの人生を描いた作品。Amazon.esでもGoodreadsでも驚くほど高評価がつけられていて、楽しみに積んでいた。そろそろ二巡目の『石蹴り遊び』をしようと思うので、手始めにこちらを読んでみた。

- 作者: Jesús Marchamalo,Marc Torices Robledo
- 出版社/メーカー: Nórdica Libros
- 発売日: 2017/03/01
- メディア: ハードカバー
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原作者はJesús Marchamaloというライターで、絵を描いたのはMarc Torices Robledo。かなり大きく分厚いグラフィックノベルなのだが、とにかく絵が芸術的で美しい! 引き込まれるような物語世界が目の前に広がっていく感じ。
どのページも、うっとりと眺めてしまう美しさでページを繰る手が度々止まった。大判だし重いけれど、購入する価値はあり。
うるさい音を立てる呼び鈴がセミに見立てられていたり、コルタサルの横顔が砂丘に変わっていく様など、まるで彼が書く幻想小説そのものという趣さえある。コルタサルが作り上げた世界にすっと入っていけそうな感覚に陥る。
写真もふんだんに使われていて、面白かったのはコルタサルが読書をする際、本に線を引いたりコメントを書き込んだりしていたというくだりで、実物の写真をいくつも添えてくれていたところ。何が書いてあるのかじっくりと読み込んでしまった。
ジャン・コクトーの『阿片』に影響を受けたこと、最初に書いた短編をボルヘスが出版してくれたこと、初めて会ったカルロス・フエンテスがコルタサルの若々しさにびっくりしたこと、インドまでオクタヴィオ・パスに会いに行ったこと……ラテンアメリカ文学にとってなんと華やかで恵まれた時代だったのだろうと思わずにはいられない。
もちろんキューバ革命の話も出てくるし、割と表面的ではあるもののコルタサルの人生に起こったことを学べて楽しい一冊だった。
ところどころで、コルタサル自身が書くときにインスピレーションを受けたものについても語られるので、彼の作品を読み返したくなってしまう。
パリに移住してからのエピソードだと、チャーリー・パーカーを題材とした「追い求める男」("El Perseguidor"、岩波文庫『秘密の武器』に収録された中編)の話が出てくる。
ウーパールーパーを眺める絵も入っていたりして、「山椒魚」("Axolotl")を思い出す。
『遊戯の終わり』 フリオ・コルタサル - トーキョーブックガール
バルセロナに住んでいた頃のエピソードとしては、グエル公園が大好きで通ったというのが、同じくグエル公園好きとしては印象深かった。この公園の奇妙さというか不思議さというか、ガウディの頭の中を訪れてしまったような感覚は確かにコルタサルの小説を読んだ時に感じる何かと似ている。
『石蹴り遊び』(Rayuela)が出版当時どれほど熱狂的に受け入れられたかも描かれていた。
ちなみに私が購入した時は日本のAmazonには出品されていなかったのでスペインのAmazonに注文したのだが、送料もさほどかからずあっという間に到着した。今はAmazon.co.jpでも出ているものの、Amazon.esで購入する方が若干安いので下記にリンクを貼っておく。本当に便利な時代になったものです。
それでは皆さま、今日もhappy reading!