1月になると、いろいろな新刊情報を眺めてはうきうきしています。さあ、今年もせっせと買い、読み、積もう。
家から出ない生活になり色々と予算が浮くので、その分本はちょっとでも「読みたいかも」と思ったら迷わず買うことにしている。こんなこと言うのもあれだけど……本って本当になんて安いのか(費用対効果)。特に世界文学なんて、かかる手間やコストを考えると、ありがたすぎて拝んでしまう。
さて、今年は言語ではなく、特徴別に最大5冊ずつ並べてみました(発売の早い順)。入りきらなかったものはコメントで追加。
- ブッカー賞ノミネート&受賞作家の新作
- 初・翻訳
- デビュー作
- 本の本!(ここだけ非フィクション)
- 行ったことのない国
- 大好きな作家の新たな一面
- なんか気になる
- ついに完結
- ブログで紹介した作品の日本語訳
ブッカー賞ノミネート&受賞作家の新作
今年もたくさん出版されています。指折り数えて待っているものばかり。
『クララとお日さま』カズオ・イシグロ(土屋政雄訳)
イシグロの6年ぶりの新作は、世界同時発売。……ということは、もうとっくに執筆を終えているということか。翻訳者はイシグロ作品を数多く翻訳されている&現時点での最新作『忘れられた巨人』も翻訳された土屋政雄さん。
英語と日本語、どちらを先に読もうか迷ってしまいますね。
The Wife of Willesden / ゼイディー・スミス
大好きなゼイディー・スミスも久しぶりに小説を出版。こちらはチョーサーによる『カンタベリー物語』の「バースの女房の話(The Wife of Bath's Tale)」のリテリング。カンタベリー物語、ちゃんと読んでない……バースの女房はかなりフェミニズムな内容ですよね?
『美について』(『ハワーズ・エンド』のリテリング)についても、おいおいブログに書きたい。
ちなみに、スミスが夫のニック・レアードと執筆した絵本も4月に発売に。絵はMagenta Fox。「柔道着を着たハムスターの話」ということで、どんな感じなんだろう。
The Living Sea of Waking Dreams / リチャード・フラナガン
The Living Sea of Waking Dreams: A novel (English Edition)
- 作者:Flanagan, Richard
- 発売日: 2021/05/25
- メディア: Kindle版
Aussie, Aussie, Aussie! Oi, oi, oi!『奥のほそ道』で2014年にブッカー賞を受賞したリチャード・フラナガンによる4年ぶり、8作目の長編。オーストラリアではすでに出版済みなのでリストに含めていいかなと迷いつつ、日本のAmazonでの発売は2021年5月なので入れておこう。
マジックリアリズム的な味わいを持ち環境破壊(おそらく2019年度末にオーストラリアで発生した森林火災を描いている)にも触れた作品ということで、紹介文はリチャード・パワーズの『オーバーストーリー』を想起させる。とある病院で、87歳のFrancieが死を迎えようとしている。Francie自身の生に対する考え方と、3人の子どもたちの考え方は異なり、今後の医療方針に関して議論が持ち上がる。一方、病院の外ではオーストラリアが燃え上がり、多くの動物が死に追いやられているのだった。
あの悪夢のような森林火災、フラナガンの目にはどう映っていたのだろう。変わりゆく世界をどうとらえているのか、ぜひ知りたい。
Beautiful World, Where Are You? / サリー・ルーニー
早くも3冊目。今月中にはNormal Peopleの記事書いちゃおう。
Harlem Shuffle / コルソン・ホワイトヘッド
コルソン・ホワイトヘッドの執筆ペースがすごく早くない!? 毎年出版してない!? と思ったのだが、『地下鉄道』は2016年の作品なのだった……時の流れが……。
タイトルの通り、ハーレム(ニューヨーク)の話。舞台となっているのは1960年代で、人には言えない過去を持つセールスマン、Ray Carneyがいとこを通じてハーレムでの犯罪に巻き込まれるという物語みたい。
あとは、ジュンパ・ラヒリがイタリア語から英語に自分で訳したという小説Whereaboutsも発売に。イタリア語を習い、イタリアに移住し、イタリア語でスピーチを書き、エッセイを書き、イタリア語の小説を英語に翻訳し、ついには自身の作品まで。すごい。
初・翻訳
初めて翻訳された作家の作品。
『恥さらし』パウリーナ・フローレス(松本健二訳)
リスト作成が遅すぎて、これはもう読んでしまいました。とてもよかった&あとでブログに書きます。フローレスは1988年生まれのチリ人作家。
タイトルの力強さに「おおっ」となる。喉の奥に魚の小骨が刺さったようななんともいえない居心地の悪さが残る短編たち。すてきな2021年の新刊初めとなりました。
『地上で僕たちはつかの間輝く』オーシャン・ヴオン(木原善彦訳)
On Earth We're Briefly Gorgeousを積んでいる間に、日本語訳が! とても楽しみ。翻訳をされている木原先生の熱い紹介文、ネットでも読めるようになっています(↑)。
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デビュー作
すでに話題となっている新進作家の作品。
Fake Accounts / Lauren Oyler
ソーシャルメディア関連。
Open Water / Caleb Azumah Nelson
ガーナ系英国人作家によるデビュー作。二人のアフリカ系英国人アーティスト間で生まれる恋愛の物語。
Acts of Desperation / Megan Nolan
アイルランドのコラムニストによる、toxic relationshipの物語。
Careless / Kirsty Capes
Careless: The hottest fiction debut of 2021 and ‘the literary equivalent of gold dust’!
- 作者:Capes, Kirsty
- 発売日: 2021/05/13
- メディア: ハードカバー
あるとき、妊娠したと気づいたBessのcoming-of-ageなお話。
The Chosen and the Beautiful / Nghi Vo
1920年代のアメリカ、『グレート・ギャツビー』の世界を舞台に、ジョーダン・ベイカーをクィアなアジア人女性(白人家庭に養子として引き取られる)とし、彼女の活躍を描いたリテリング作品。
本の本!(ここだけ非フィクション)
A Swim in a Pond in the Rain: In Which Four Russians Give a Master Class on Writing, Reading, and Life / ジョージ・ソーンダーズ
タイトル……オックスフォードコンマ、使用されているねえ。最近、ここで使うべきか否かと悩んだことがあったのだけれど、この表紙を見てやっぱり常に使おうと決意した(全然関係ない)。
チェーホフ、ツルゲーネフ、トルストイ、ゴーゴリなど、ロシア文学の7作品を通して「フィクション」について考える本。ソーンダーズによる授業のまとめ。
『プルーストへの扉』ファニー・ピション(高遠弘美訳)
光文社古典新訳文庫で『失われた時を求めて』を翻訳されている高遠先生による翻訳。わかりやすいアプローチで、プルーストを読む意味を考える本のよう。予約しているので、今日(ブログ投稿予定日が発売日!)届くはず。
『失われた時を求めて』、いよいよ今年は読み終わりそうです。最初に読んだのが12歳の頃だったので、なんと20年以上も読んでいることになる。こちらもおってブログを書こう。
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行ったことのない国
Voices of the Lost / Hoda Barakat(Marilyn Booth訳)
Voices of the Lost: A Novel (The Margellos World Republic of Letters)
- 作者:Barakat, Hoda
- 発売日: 2021/03/02
- メディア: ペーパーバック
レバノンの作家による作品。翻訳者は、Celestial Bodiesも訳していたMarilyn Booth。
Of Women and Salt / Gabriela Garcia
4世代にわたるキューバの女性たちの物語。
大好きな作家の新たな一面
The Mysterious Correspondent: New Stories / マルセル・プルースト(Charlotte Mandell訳)
The Mysterious Correspondent: New Stories (English Edition)
- 作者:Proust, Marcel
- 発売日: 2021/06/03
- メディア: Kindle版
プルーストの新しく発見された作品集ということだが、日本語は出版されていないと考えていいのかしら?
Matrix / ローレン・グロフ
まだ装丁もto be revealedだ。舞台は12世紀?
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はじめて出逢う世界のはなし(東宣出版)
大好きなこのシリーズ! 豊崎由美さんの「読んでいいとも! ガイブンの輪」では、シルビナ・オカンポ(松本健二訳)とアナ・マリア・マトゥーテ(宇野和美訳)が出版されるという話に。え〜楽しみすぎる!!
シルヴィア・プラス短編集(柴田元幸訳)集英社
こちらもよんともより。プラスの短編集。
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なんか気になる
Detransition, Baby / Torrey Peters
Instagramで読んでいる人がめちゃくちゃ多くて。
Hombres que caminan solos / José Ignacio Carnero
出版社のツイートを見て、気になっている作品。
『失われた賃金を求めて』イ・ミョンギョン(小山内園子・すんみ訳)
なんて気になるタイトル! 『私たちにはことばが必要だ』の著者による作品。
ついに完結
『ミドルマーチ 4』ジョージ・エリオット(廣野由美子訳)
光文社古典新訳文庫さんのツイートからの情報! 3月発売だそう。ついに完結、待ちきれない。
ブログで紹介した作品の日本語訳
素晴らしい作品ばかりでした。日本語訳も購入して、二倍楽しもうと思っています。
『恋するアダム』イアン・マキューアン(村松潔訳)
原書の装丁もすてきだったけど、クレストブックスはもっとすてきだった。倉橋由美子の「合成美女」を彷彿とさせる、人間とAIの三角関係。
『マイシスター、シリアルキラー』オインカン・ブレイスウェイト(粟飯原 文子訳)
ナイジェリア出身&在住の著者によるデビュー長編で、ブッカー賞にもノミネートされた作品。混沌としたラゴスを舞台に、似ても似つかない姉妹を描いた物語。ユーモアを交えた軽い筆致で、家父長制に苦しめられる女性たちや、歪んだ権力を描いている。
『丸い地球のどこかの曲がり角で』ローレン・グロフ(光野多惠子訳)
こちらもすてきな装丁! 物語に出てくるあれもこれも含まれていて、確かに読みながら、こういう色々な緑を感じたと思いました。グロフの短編集。
『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』サリー・ルーニー(山崎まどか訳)
ルーニーのデビュー作。
20代にしか書けないような、ナイーブながらも自信のあるような感じが印象的でうつくしい。これからどのような作品を書くのかも、本当に楽しみ。
『断絶』リン・マ(藤井光訳)白水社
『The Immortalists』クロエ・ベンジャミン(鈴木潤訳)集英社
こちらも出るのかな? 同じく、よんともで名前が上がっているのを発見。
今年も楽しみがたくさんありますね。みなさまは何を読んでいますか?