The Happy Readerなんて、素晴らしすぎるタイトル。この記事を読んでくださっているあなたもわたしも、きっとa happy readerですよね。
これ、ペンギン・クラシックス(Penguin Classics)とFantastic Manが共同で出版している「Bookish Magazine」である。だいたい60〜70ページくらいの、うすくて軽いA4ノートサイズの雑誌。創刊が確か2014年で、年に2回(6月と12月)発売されている。
最新号は2020年冬号(↓)で、サラ・ジェシカ・パーカーの表紙が目印。ペンギンらしい、シンプルながらも印象的なデザインがすてき。特集の一つが小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『怪談』だったので、内容をちょっとご紹介。
これは電子版がないので、紙のを送ってもらっているのだけど、薄いからさ〜っと読めるし、写真もきれいだし、文字も読みやすいし(The New Yorker、The Economistみたいな、虫のように小さいフォントじゃない笑)届いた日にさっと読むのが習慣になっている。
大体どの号も、Part 1とPart 2に分かれていて、内容はこんな感じ。
Part 1
短いコラム(今回は「本は最高のアクセサリー」って話)
Snippets(本や作家にまつわる数行のトリビアがたくさん載っている。クリスティー・ワトスンが電車に乗ってとある朗読イベントに向かう途中、自身の著書を確認していたら、隣にいた見知らぬ男性に「その本の著者は友人なんだ」とmansplainingされた話とか、ジェイン・オースティンの住んでいた&『ノーサンガー・アビー』の舞台になった家にAirbnbで宿泊できる話とか)
作家や読書好き俳優のインタビュー
インタビュイーのリーディングリスト
Part 2
写真
文芸作品に関する特集(今回はラフカディオ・ハーンの人生について。過去には『フランケンシュタイン』とか、マルクス・アウレリウスの『自省録』とか)
ぱっと読める&次に読みたいペンギン社の本がどんどん見つかるという、嬉しいマガジンです。
サラ・ジェシカ・パーカーのお気に入りのニューヨーク小説
最新号ではサラ・ジェシカ・パーカーが、ニューヨークについて、Sex and the Cityの原作者であるキャンディス・ブシュネルについて、読書について、SJP for Hogarth(ペンギン傘下のCrownでサラ・ジェシカ・パーカーが立ち上げたインプリント)について、語っている。自身の別荘で撮られたという写真も自然体で、すごくいい。
ニューヨークでよく行く本屋さんは、Three Livesとのこと。グリニッチ・ヴィレッジの本屋さんですね。行ったことない! 赤と黒の外観もすてきで、スタッフが本に「おすすめメモ」をつけているらしく、「TroyさんとJoiceさんのおすすめセレクションがよい」とのこと。
そして、ニューヨークが舞台となっているお気に入りの小説は、カニグズバーグの『クローディアの秘密』(The Mixed up Files of Mrs Basil E Frankweiler)だそう! なんかわかる。好きそう。
それからマーク・ヘルプリンの『ウィンターズ・テイル』。ファンタジー小説。
ジャック・フィニイのタイムトラベル小説、『ふりだしに戻る』も。
James McBrideのDeacon King Kongは、ブルックリンにまつわる話で、すごくニューヨークらしいとのこと。
と、ここで、インタビュアーが突然、自身が推すニューヨーク小説を発表(話をSATCに持っていきたかったとみえる)。タマ・ジャノウィッツの『ニューヨークの奴隷たち』。 なんと日本語訳が、松岡和子さん。
あとはサリー・ルーニーを読んでる話とか、イーヴリン・ウォーが好きだという話とか。頭の中で、彼女の独特の声と話し方で会話が再生されて(ハードコアなSATCファンなもので……)、楽しかった。ニューヨークに行きたくなるが、次に滞在できるのはいつの日か。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)特集
後半は、小泉八雲の『怪談』特集。Japanese Ghost Storiesとしてペンギンから出版されている。
日本語訳は、一番新しいのが古典新訳文庫かな?
特集には、彼の生い立ちから結婚生活、小泉八雲流のクリオール風オムレツの作り方(!)まで、事細かに紹介されている。
それにしても、ギリシャで生まれてフランスと英国で教育を受け、米国のニューオーリンズや西インド諸島を経て日本に辿り着き、日本でも松江、熊本、神戸、東京と色々な場所に居を移し……根っからのnomadですよね。世界を公平な目で見て、西と東をつなげた人でもある。
久しぶりに「耳なし芳一」や「ろくろ首」など、読みたくなった。
ではみなさま、週末もhappy reading!