トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『白痴』ドストエフスキー

[Идиот] この秋は、日本中に『白痴』を読んでいる人がいるのだろうなあと思いを馳せずにはいられない! 光文社古典新訳文庫で『白痴』の1巻が出てからはや数年、ついに最終巻が発売になったのだから。 光文社の亀山郁夫さんによる『カラマーゾフの兄弟』を読…

2018年のギラー賞はWashington Black

すっかり遅くなってしまったけれど、11月19日に発表されたカナダの文学賞・ギラー賞を受賞したのはEsi EdugyanによるWashington Blackでした。まだハードカバーしか出版されていおらず、ペーパーバックは予約受付中(来年の4月)。 Washington Black: Shortl…

マルジャン・サトラピが大好き

ブッカー賞で初めてグラフィックノベル(ニック・ドルナソのSabrina)がノミネートされたりと、2018年はますますバンド・デシネ*1やグラフィックノベル*2に注目が集まる年だった気がする。 さて、私にとってバンド・デシネへの扉を開けてくれた、思い出の作…

Autumn / アリ・スミス: 本が好きな人にはたまらない1冊

(秋) 日本語訳が発売されたばかりの『両方になる』も読みたいけれど、せっかく秋なので、こちらを。昨年のブッカー賞ショート・リストにノミネートされていた作品だ。 アリ・スミスはこの作品を皮切りにWinter、Spring(2019年3月発売予定)と、四季をタイ…

『見えない都市』イタロ・カルヴィーノ

[Le Città Invisibili] 旅に出るといつも考えることがある。 隣にいる人(夫、友人、家族)の目に映る風景は、私が見ているものと同じなのだろうか? 初めてこの街を訪れた時の私の目に映った「街」と、三回目に訪れた「街」は何が違っているだろう。どうす…

2018年の全米図書賞(National Book Awards)

備忘録として。 全米図書賞はあまりチェックしたことがなく、受賞作もほとんど読んだことがないのだけれど、今年は30数年ぶりに翻訳文学部門(Translated Literature)が復活! ということで楽しみにしていた。 11月14日に発表されたNational Book Awards 20…

Motherhood / シェイラ・ヘティ: 産むの? 産まないの? どうする私

2018年のギラー賞(受賞作品の発表は11月19日!)にノミネートされていて、読みたくなったシェイラ・ヘティのMotherhood。一風変わったユーモラスな語り口が心地よくて、これまた数多の積ん読を差し置いて、一晩で読んでしまった。 2018年のギラー賞ショート…

犬好きのための海外文学 25冊

犬の数だけ文学が生まれる。 とはいえ、猫に比べると主役扱いされていることは少ない気がするのはどうしてだろう。犬好きの作家より猫好きの作家の方が多い気がするのはなぜだろう。 犬好きさんのために、「犬が登場する海外文学」をまとめてみた。 *あくま…

Florida / ローレン・グロフ

(丸い地球の幻想上の四隅) [Updated: 2020-12-13] 2021年に日本語訳が出版されるようです。表題作となっているのは、原書では2つ目に収録されている、蛇にまつわるお話みたい。翻訳者は『運命と復讐』の光野多惠子さん。楽しみです! 丸い地球の幻想上の四…

『海峡を渡る幽霊』 李昂(リー・アン)

[吹竹節的鬼] 「鹿港(ルーガン)では昔、どの通りでもお化けが出たもの」 家にあった『世界x現在x文学ー作家ファイル』の李昂(リー・アン)のページの見出しに確かそんな言葉が書いてあって、「この作家の作品は面白そうだな」と子供ながらに思ったものだ…

French Exit / パトリック・デウィット: 全てを失った大富豪未亡人はパリへ

表紙に一目惚れして(下記Amazonリンクに表示されている方ではなくて、白地にタイトルと著者名が赤と青で印刷されていて、むっとした表情の一家のイラストが描いてある方。かわいい……)購入。今年度のギラー賞にもノミネートされているパトリック・デウィッ…

『マンゴー通り、ときどきさよなら』 サンドラ・シスネロス: 出ていきたいと願っていたあの場所のことばかり思い出す

[The House on Mango Street] 白水社の新書として今年生まれ変わった『マンゴー通り、ときどきさよなら』。やっと読めた。 マンゴー通り、ときどきさよなら (白水Uブックス) 作者: サンドラ・シスネロス,くぼたのぞみ 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2018/…

『遊戯の終わり』 フリオ・コルタサル

[Final del Juego] コルタサルの最初の短編集『遊戯の終わり』を再読した。 遊戯の終わり (岩波文庫) 作者: コルタサル,木村榮一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2012/06/16 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 30回 この商品を含むブログ (23件) を見…