トーキョーブックガール

海外文学・世界文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

2019年 ブッカー国際賞ショートリスト

ブッカー国際賞、ショートリストが発表されました。

今年の特徴はなんといっても、6作品中5作品が女性作家によるもので、翻訳者に限って言えば全員が女性なことではないでしょうか。

The New York Timesも、The Guardianもその事実を大きく取り上げている。それがニュースになるということ自体が悲しい気もするが、やっぱり文学賞にノミネートされるのは男性作家による作品が圧倒的に多いのは事実で、だからこそまだまだWomen's Prize for Fictionの存在意義は大きいなと感じたのだった。

ショートリストのノミネート作品はこちらの通り。

 

 

Celestial Bodies

著者:Jokha Alharthi(オマーン、アラビア語)

翻訳者:Marilyn Booth

Celestial Bodies

Celestial Bodies

 

オマーンの村を舞台にした三姉妹の物語。Mayyaは手痛い失恋の後、別の男性と結婚する。Asmaは義務感から結婚する。Khawlaはカナダへ移住した恋人を待ち続け、舞い込む結婚申し込みを拒否している。三姉妹の人生とともに、変わりゆくオマーンという国を描いた小説。

著者のJokha Alharthiは若手作家ながらも短編小説や児童文学を発表し、著作が何カ国語にも訳されている実力者。

『細雪』好きとしては放っておけない感じ……。 

 

The Years

著者:アニー・エルノー(フランス、フランス語)

翻訳者:Alison L. Strayer

The Years (English Edition)

The Years (English Edition)

 

自伝的小説を執筆することで有名な作家。フランスではルノードー賞をはじめ多くの賞を受賞している。こちらはLes Annéesの英語訳で、両親の生い立ちから死までの半世紀近くを経て変わるフランスと自身の歴史を描いている作品。

マルグリット・デュラス賞受賞。

 

The Pine Islands

著者:Marion Poschmann(ドイツ、ドイツ語) 

翻訳者:Jen Calleja

The Pine Islands (English Edition)

The Pine Islands (English Edition)

 

Gilbert Silvesterは映画における「髭」を研究している男性だ。昨夜、妻が不倫しているという夢を見た。彼女から距離を置きたいと突然感じたGilbertはすぐさま空港へ向かい、日本への飛行機に乗ってしまう。

日本で彼は松尾芭蕉の俳句と出会い、松島の名月を見たいと願うようになる。そこで自殺願望のある青年Yosaと出会い……。コーヒー愛飲者のGilbertは「お茶の国」でどう変化を遂げるのか?

なんと、日本を舞台とした小説。"The pine islands"ってなんのことかと思ったら、宮城の松島のようですね。 

 

 

Drive Your Plow Over The Bones Of The Dead

著者:オルガ・トカルチュク(ポーランド、ポーランド語)

翻訳者:Antonia Lloyd-Jones

Drive Your Plow Over the Bones of the Dead: A Novel

Drive Your Plow Over the Bones of the Dead: A Novel

 

昨年『逃亡派』でブッカー国際賞を受賞したトカルチュクによるノワール小説。ポーランドの田舎で、60代の女性Janina Duszejkoは自分の犬二匹が消えた事件について語り始める。人間とはほとんど交流せず、動物たちと絆を育んでいた女性だ。

ある日地元の狩猟クラブメンバーが殺され、Janinaも警察による調査に巻き込まれる。 

翻訳者は『逃亡派』とは別の方で、作品の雰囲気もだいぶ違うようで楽しみ。

 

The Shape Of The Ruins

著者:フアン・ガブリエル・バスケス(コロンビア、スペイン語)

翻訳者:Anne McLean

The Shape of the Ruins

The Shape of the Ruins

 

日本では『物が落ちる音』で有名なフアン・ガブリエル・バスケスの作品、原題はLa Forma de las Ruinas

ラファエル・ウリベ・ウリベとはコロンビアの弁護士で、ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』のインスピレーション源となったといわれている人物だ(アウレリャノ・ブエンディア大佐は彼をモデルにして書かれたそう)。

ウリベ、およびホルヘ・エリエセル・ガイタンの暗殺という一見何の繋がりもない二つの事件を通してコロンビアという国の光と闇を描く。

日本のAmazonでは英語訳のKindleがなんと500円ちょっとになっている! 500ページ超とボリュームがあるので紙で、しかもできればスペイン語で読みたいけれど、この価格に惹かれてKindle版を買ってしまいそう。

 

著者:Alia Trabucco Zeran(チリ&イタリア、スペイン語)

翻訳者:Sophie Hughes

The Remainder

The Remainder

 

舞台はチリのサンティアゴ。灰に覆われた街だ。移民の子供たちFelipe、IquelaとPalomaは必死に生き延びる道を探すが、それぞれ辛い過去から逃れることができない。 

デビュー作。 

 

トーキョーブックガールのTBRリスト

5月の受賞作品発表も楽しみですね!

こうして見ていると全部読みたくなるけれど、私のto be readリストはロングリスト発表時に書いた通りフアン・ガブリエル・バスケスのThe Shape of the Ruinsと、余裕があればロングリストに入っていた残雪のLove in the New Millennium。 

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