4月7日、国際ブッカー賞(The International Booker Prize)のショートリストが発表された。ロングリストにノミネートされた13冊のうち、ショートリストに残ったのは6冊。
今年はアジア圏の作品が5作品もロングリスト入りしていたが、そのうち3作品がショートリストにもノミネート。川上未映子さんの『ヘヴン』のSamuel Bett & David Boyd訳もノミネートされている。
- 『ヘヴン』Heaven / 川上未映子(Samuel Bett & David Boyd訳)日本語
- Elena Knows / Claudia Piñeiro(Frances Riddle訳)スペイン語
- A New Name: Septology VI-VII / John Fosse(Damion Searles訳)ノルウェー語
- Tomb of Sand / Geetanjali Shree(Daisy Rockwell)ヒンドゥー語
- The Book of Jacob / オルガ・トカルチュク(Jennifer Croft訳)ポーランド語
- Cursed Bunny / Bora Chung(Anton Hur訳)韓国語
- トーキョーブックガールの予想
『ヘヴン』Heaven / 川上未映子(Samuel Bett & David Boyd訳)日本語
『夏物語』も訳した2人の翻訳者による英訳。昨年の夏、川上さんと3人で登壇していたピッツバーグ国際文芸フェスティバルの作家&翻訳家セッション(ちょうど本作が英訳出版されたタイミングだった)も、とても面白かった。『ヘヴン』は出版当初読んで以来読み返していなくて、でもずっと手元に置いているので久しぶりに開いてみたいと思う。あの頃読んだときも辛かったけれど、その何百倍も読み進めるのが辛いはずだ、母となった今は。でもこの世界を生きている子どもが確かに存在していて、大人になった私にできることは小説を通してでも状況を理解することなのだと強く感じる。
Elena Knows / Claudia Piñeiro(Frances Riddle訳)スペイン語
面白いラテンアメリカ文学を多く英訳しているCharco Pressより、アルゼンチン人作家の作品。かなり色々な国の文学賞を受賞している。
A New Name: Septology VI-VII / John Fosse(Damion Searles訳)ノルウェー語
こちらは、2020年のロングリストにノミネートされていたI-IIの続編。
ノルウェーの南西に位置する海沿いの町で暮らす画家のAsleは、歳を重ねやもめとなり、自身の人生を振り返る。彼の数少ない友人Beyerはベルゲンに住んでいるのだが、そこにはもう一人のAsleが暮らしていた。こちらのAsleも画家で、孤独を抱え酒に溺れている。ドッペルゲンガーともいうべき二人のAsleを通して人生、死、愛、光と影、希望と絶望が描き出される。
Tomb of Sand / Geetanjali Shree(Daisy Rockwell)ヒンドゥー語
こちらもTilted Axis Pressより出版された、インド人作家の作品。739ページと分厚く、国際ブッカー賞のホームページの写真でも、下のトカルチュクの作品とともに異彩を放っている。近年どの国でも200ページに満たない作品が多くなってきていて(これはソーシャルメディアによる人類の集中力低下とも関係があるのだろうか)、国際ブッカー賞もほとんどが100〜200ページなので、なんだか目立つ。
The Book of Jacob / オルガ・トカルチュク(Jennifer Croft訳)ポーランド語
トカルチュクのノミネートは3度目(2018年には『逃亡派』のJennifer Croftによる英訳が受賞)。この本、なんと991ページ。すごいボリューム! 訳者のJennifer Croftはエッセイも出版していて、こちらも気になる。
Cursed Bunny / Bora Chung(Anton Hur訳)韓国語
こちらも訳者はAnton Hurさん。邦訳は出版されていないのかな? 予定はあるのかな? 作家のBora Chungは東欧文学を韓国語に翻訳もしているとのこと。
トーキョーブックガールの予想
もちろんすべて読んだわけではないのでなんとも言えませんが、今までの傾向を鑑みると、川上未映子・著、Samuel Bett & David Boyd訳の『Heaven』が受賞するのではないかな〜と思っている。もしくは、『Tomb of Sand』。