発売されてすぐに購入し毎日少しずつ読んだこの本! のお話を今日は書きます。David Sedarisの Theft by Finding: Diaries 1977-2002 。
Theft by Finding: Diaries (1977-2002)
- 作者: David Sedaris
- 出版社/メーカー: Little, Brown and Company
- 発売日: 2017/05/30
- メディア: ハードカバー
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その名の通り、Sedarisが1977年から2002年にかけて書いた日記をまとめて出版したもの。もちろん日記全てをそのまま、ではなくて出版できるものを本人が推敲して出版したということだが、かなり赤裸々に色々と書いてあることに圧倒される。
David Sedarisって誰?
David Sedaris(デビッド・セダリス)はアメリカでは超有名なエッセイスト。The New Yorker にエッセイを掲載したり、様々なラジオ番組に出演したりされているので、知らない人はいない有名人である。アメリカの読書サイトでは、エッセイの最高峰として彼の作品が挙げられていることも多い。非常にアメリカ的なユーモアのセンスを持っているのかなと思う。
実際初期のエッセイを読んでいると、「なんだか典型的なユダヤ系ニューヨーカーって感じの人だな」と感じたのだが、そうではなかった。Sedarisさんはノース・カロライナのローリー出身。ローリーには私も仕事で住んでいたことがあるのだが(アメリカのIT企業はR&D施設をローリーに作っていることが多い)、とにかくとんでもないど田舎! 町一番の大通りが「ここ!?」みたいな寂れ方だし、ドライブしていると鹿がたくさんいるし。ランチをする場所もなかなかない……。
Sedarisさんのお父さんはギリシャ系アメリカ人。ローリーのIBMに勤めていたそうです。ちなみにお母さんはイギリス系アメリカ人。お父さんはギリシャ正教、お母さんはプロテスタントと宗教も異なっていて、このあたりもエッセイのネタになっている。
Sedarisさんは6人兄弟の2人目。高校卒業後シカゴで学び、ニューヨークで日雇いの仕事をしながら暮らしていたところ、ラジオで自身の日記(この本ですね!)を発表し、これが大当たり。エッセイストになった、というわけ。
Sedarisのエッセイ
彼のエッセイは主に自分の体験談。日常にあった面白いことや家族・パートナー・友人のことを赤裸々に綴ったもの。どれもこれも面白いのだが、私が一番好きなのは Me Talk Pretty One Day だ。
日本の大学で学んだ知人が、英文学のクラスでこの本が課題だったと教えてくれた。というわけで日本語訳はされていないものの、読んだことのある方はある程度いらっしゃるかもしれない。
表題作にもなっている"Me Talk Pretty One Day"はSedarisがフランスに行って語学学校(アリアンス・フランセーズ)に入り、意地悪なフランス人の先生にいじめぬかれる…というお話。アリアンス・フランセーズではなくても、フランス人の先生にフランス語を教わった経験のある人なら必ず「あるある〜!」となってしまうような、爆笑エピソードが満載!
表題の「Me talk pretty one day」って一体何のことかと思ったら、まだフランス語がおぼつかない生徒同士が話しているフランス語(の英訳)なのだった。先生にいじめられて毎日辛い……でも「いつか、可愛く(=上手に)話せる、なるから、がんばろ」みたいなニュアンス。生徒同士が、お互いを下手なフランス語で励まし合っているという。
その他のお話も、個性あふれる家族の皆や、パートナーのHughさんについての爆笑エピソードばかり。
*Sedarisさんはゲイなのだ。パートナーのHugh Hamrickさんは画家で、26年生活を共にされている。現在お二人はイギリス・サセックス在住。背も高く英語もフランス語も話せて、モロッコやヨーロッパで育ったコスモポリタンなHughさんは常にモテモテだったそうで、そんなHughさんに嫉妬したりヤキモチ焼いたり……な、Sedarisさんエピソードも面白い。
ちなみにSedarisさんエッセイ、2作品は日本語訳されている。表紙がちょっと……外で読むことはためらわれる仕様になっている。
- 作者: デビッドセダリス,David Sedaris,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2003/02
- メディア: 単行本
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本のみどころ
さて、 Theft by finding に話を戻すと、そんな爆笑エッセイ集全てのネタ元となった日記を大公開しちゃいます! という本だ。
なにしろノース・カロライナでドラッグばかりやっていたノータリンの高校卒業時1977年から、シカゴ、ニューヨークを経て、エッセイストになって本が売れだして有名になって、パリに暮らすようになる2002年までを網羅しているのだから。非常に分厚くて、存在感のある仕上がりになっている。表紙が非常におしゃれで、ちょっとインテリアにもいいかもしれない……♡
ちょっとした日々の観察もやっぱり面白くて、どこを読んでもくすっと笑える。そしてやっぱり、彼のエッセイに出てくる人々が出てくるので、「Hughさんと、こんな風に出会ったんだ!(運命の出会いもしっかり書かれています)」だとか、「このころはまだお母さんお元気だったんだなあ……(Sedarisさんのお母さんは癌が原因でこの世を去ってしまったのです)」、「妹のTiffanyも絶好調だなあ…(妹のTiffanyもよく登場するのですが、2013年に自殺しています)」だとか、まるで家族のことのように心配したり喜んだりしながら読めるというのがいい。この世界にいなくなったあの人にも、Sedarisさんの日記の中では会える。
仕事もお金もなくて滅入ってるSedarisさんが自身のエッセイの才能のおかげで一夜にして有名人になる様子を読めるのも楽しい。
そして、1998年ごろからパリでの生活が始まり、 Me Talk Pretty One Day に出てくる恐怖のフランス語学学校についてもたくさん記入されている! これは見逃せない。
こんな方にオススメ
アメリカ式ユーモアを学ぶ必要があるビジネスマンの方に! 非常に参考になると思います!
オードリーの若林さんのエッセイ(センスが似ている気がする)や『富士日記』、『つれづれノート』的な日記的な読み物がお好きな方にも。
ちなみに、2003-2017年の日記も今後出版予定だとか。楽しみです。