トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

『anan』2/21号にロマンス小説についてのインタビューが掲載されました

お知らせです。 本日発売の『anan』2/21号(恋しい、気持ち。)にインタビューを掲載していただきました。 「せつなさのブックレビュー。」という恋愛小説の特集で、ロマンス小説についてお話ししています。 アメリカでの現在のロマンス小説ブームや傾向、そ…

ルームメイトは、テイラー・スウィフトと『愛の不時着』をこよなく愛する吸血鬼(My Roommate is a Vampire)

キャシー・グリーンバーグはシカゴ在住のアーティスト。というか、大学でモダンアートを学び、自身もモダンアート制作に取り組んでいるのだけれど、悲しいかな作品が高く評価されたことは一度もない。美術教師になりたいと願っているものの面接に落ちまくり…

火星小説が輝いた2023年(Sea Change、Girlfriend on Mars)

SF小説によく用いられるモチーフがいわゆるliterary fictionに繰り返し登場するようになると、テクノロジーが社会に浸透したことを感じる。 たとえば、AIが登場するイアン・マキューアンの『恋するアダム』が出版されたのは2019年、そしてカズオ・イシグロの…

2024年のリーディングチャレンジ(ロマンス小説編)

みなさんにとって、2023年はどんな年でしたか? わたしにとっては、愛犬の闘病や介護に始まり、看取りや大切な人の死を経験した、辛い1年でした。一言で言うとすると、 Espero que la salida sea alegre y espero no volver nunca más というフリーダ・カー…

『ヴェリティ/真実』の解説を書きました(コリーン・フーヴァー著、相山夏奏訳、二見書房)

お知らせです。 今週発売となった小説『ヴェリティ/真実』に解説を寄稿しました。 www.futami.co.jp #bookstagramや#booktokなど、読書家たちが集うオンラインコミュニティで名前を見かけない日はない作家、コリーン・フーヴァーが初めて手がけたサスペンス…

Forbes JAPANに寄稿しました / ロマンス小説の効能

みなさま、こんにちは! なんと半年ぶりのブログ更新です。 ブログでのお知らせが遅くなってしまい大変恐縮ですが、Instagramに投稿したとおり10月にForbes JAPANさまにロマンス小説についての記事を寄稿しました。 こちらからどうぞ。 forbesjapan.com ロマ…

2023年・国際ブッカー賞(ロングリスト)の関連本(?)いろいろ

今年の国際ブッカー賞のロングリストにノミネートされたのは13冊。 Permafrostの著者、Eva BaltasarのBoulderとか、初めてノミネートされたブルガリア語&タミル語からの翻訳作品とか、気になる作品がたくさん。 thebookerprizes.com 『鯨』チョン・ミョング…

宝塚・花組『うたかたの恋』観劇前に読んだ本

正直なところ、『うたかたの恋』は上演が発表されて大喜びしちゃうような作品ではない。心中というテーマが古めかしいだけでなく、歌も昭和の香りがして仰々しいと思っている。 それに、マリーというヒロインは娘役にとってかなり危険な役ではないだろうか。…

マーガレット・アトウッドの短編とエッセイとBurning Questions

2021〜22年に発表されたマーガレット・アトウッドの短編とエッセイを読みました。思えば2012年からナオミ・オルダーマンとOnline Onlyのwattpadで"The Happy Zombie Sunrise Home"という短編を共著していたりと、インターネット媒体を活用することも非常に多…

2022年のReading Challenge(リーディングチャレンジ)ふりかえり

今年のリーディングチャレンジをふりかえります。 いつもふりかえりと次の年の分をまとめて載せているのだけれど、なかなか時間がとれなくなってしまったので。 2022年のリーディングチャレンジ 今年デビューする作家の本を読む。⭕️ すでにおすすめされた本…

秋の海で読みたかった本

夫と2人で旅行していた頃、スーツケースには何冊も本を入れていったものだ。飛行機や電車で「読むものがなくなった」と言うことの多い夫のために、彼が好きそうなエッセイまで見繕って持っていった。 いつの間にやら犬と赤ちゃん(ヒト)が家族に加わり、今…

最近読んだ「犬」小説

どうやら、犬を飼うDNAというものがあるらしい。犬とヒトとの共存の秘密は、遺伝子に刻まれているらしい(英国とスウェーデンの研究による)。 人生の大半を犬と暮らしている人間としては、わかるわかるーと頷いてしまう。家族の古いアルバムを開けば、父方…

『Small Things Like These』(クレア・キーガン)、『Treacle Walker』(アラン・ガーナー)と2022年のブッカー賞ショートリスト

2022年のブッカー賞ショートリストにノミネートされた2冊を読んだ。 Small Things Like These / クレア・キーガン 『マグダレンの祈り』 『青い野を歩く』 Treacle Walker / アラン・ガーナー 『時間は存在しない』 『ふくろう模様の皿』 Oh William! / エリ…

月組の『グレート・ギャツビー』を観劇する前に読んだ&観た作品

月組『ギャツビー』も、後数日。千秋楽を観るのも楽しみにしています。 観劇前に読んだ&観た作品、いろいろ。 The Great Gatsbyと『グレート・ギャツビー(ギャッツビー)』(野崎孝、大貫三郎、村上春樹、小川高義・訳) The Chosen and the Beautiful / N…

『グレート・ギャツビー』のリテリング2作品:Beautiful Little Fools と The Chosen and the Beautiful

現在公演中の宝塚歌劇団・月組による『グレート・ギャツビー』。 トップスターでギャツビーを演じる月城かなとさんは、類い稀な美貌を誇るタカラジェンヌの中でも一際美しい人。 ところが、公演中はその美貌がまったく話題にならないほど、巧みな演技力に話…

エリザベス・ストラウトの『Oh William!』と、2022年のブッカー賞ロングリスト

Oh William! 2022年ブッカー賞ロングリスト Oh William! 今日はブッカー賞のショートリストの発表日だ。今年読んだロングリストノミネート作品は、もともと積んでいたエリザベス・ストラウトの Oh William! だけ。「ルーシー・バートン」シリーズ(?)の3作…

わたしのサマーリーディング(世界文学編)

もう8月が終わりに近づいているとは、信じられない気持ち。毎年夏以外の季節は、夏に恋焦がれ、到来を待ち望んでいるのに、夏はやってきたと思うとすぐに去ってしまう……。 こちらは、この夏に読んだ本&夏の読書にぴったりだと思った本、いろいろ。 ノルウェ…

宝塚歌劇団上演作品の原作いろいろ(2022後半〜)

コロナの影響により、宝塚で大物海外ミュージカルが上演されなくなって久しいけれど、その分小説や漫画をもとにしたオリジナル脚本の作品がかなり増えて、すごく嬉しい。と同時に、原作を読んでから舞台を見たい派としては俄然忙しくなって焦る。 2022年後半…

世界文学、1万円分

この夏は仕事のスケジュールをゆったりめに組んでいるのと、いつのまにやらいただきものの図書券とか商品券とかAmazonギフトカードとかがめちゃくちゃ溜まっていた!ので、まとめて本を買う楽しい遊びをしました。「夏っぽい本(表紙が海、タイトルに「夏」…

2022年 国際ブッカー賞受賞作は『Tomb of Sand』

*2022-05-29: 作者の出身地について、赤字で修正しています。 2022年5月26日(英国)、国際ブッカー賞受賞作が発表されました。受賞したのはTomb of Sand(Geetanjali Shree著、Daisy Rockwell訳)! インドの言語で執筆され、翻訳された作品が国際ブッカー…

2022年 国際ブッカー賞ショートリスト

www.tokyobookgirl.com 4月7日、国際ブッカー賞(The International Booker Prize)のショートリストが発表された。ロングリストにノミネートされた13冊のうち、ショートリストに残ったのは6冊。 thebookerprizes.com 今年はアジア圏の作品が5作品もロングリ…

2022年 Women's Prize for Fiction(女性小説賞)ロングリスト

3月は国際ブッカー賞のロングリストのみならず、Women's Prize for Fiction(女性小説賞)のロングリストも発表に。ノミネートされたのは16作品。今年は、積んでいた小説が2作品候補入りしていて嬉しくなりました(読んでなくて積んでるだけだけど……)。 wom…

2022年 国際ブッカー賞ロングリスト

www.tokyobookgirl.com あっという間に3月。国際ブッカー賞のロングリスト(Women's Prize for Fictionも〜)も発表されました。 thebookerprizes.com ロングリスト入りしたのは13冊。今年はアジア圏の小説が5作品とかなり増えているのが特徴的(去年は残雪…

Distancia de rescate / サマンタ・シュウェブリン

我が子が1歳半くらいになったとき、真夜中にふと目が覚めた。すぐにわかった。とうとうやってきたのだ、「あれ」が。ひたひたと全身を満たすように増幅していく恐怖は、どこか懐かしいものでもあった。やがてくると知っていたから。 いわゆる想像力の暴走だ…

『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』ミア・カンキマキ(末延弘子・訳): 推しとの歳の差、1006歳

[Asioita jotka saavat sydämen lyömään nopeammin] どうしたらいいかわからないこと。 三十八歳にもなって実家の二階にある自分の部屋に移ること。 六十三歳になる父に、部屋を引き渡すために七時間かけてすみずみまで一人で掃除をさせること。 しまいには…

The Promise / Damon Galgut: 2021年のブッカー賞受賞作

デイヴィッド・ロッジは『小説の技巧』(柴田元幸・斎藤兆史訳)で、意識の流れについて、こう書いている。 明らかにこの種の小説は、内面がさらされている登場人物に対する読者の共感を喚起しやすい。その意識がいかに虚栄に満ち、利己的で、下劣であったと…

2021年と2022年のReading Challenge(リーディングチャレンジ)

みなさま、明けましておめでとうございます! 今年も素晴らしいreading yearになりますように。 去年のリーディングチャレンジの振り返りと、今年の抱負です。今年の読書初めは『本格小説』(水村美苗)でした。素晴らしすぎてうっかり徹夜してしまい、なん…

白人として生きる黒人女性の話『Passing』(ネラ・ラーセン)

ここ数週間、やたらと出版社さんのSNSでネラ・ラーセンのPassingを見かけるので、???と思っていたら、Netflixで映画化されていたのだった。 www.netflix.com いい機会だから読んでみようと購入した原作も短めだし、映画も1時間半ちょっとと短めなので、さ…

夏〜秋に読んだ世界文学

いつの間にか夏が終わり、9月1日からぐっと冷え込み、秋らしい秋を感じることのできないまま11月がやってきた。 我が家では9〜10月、コロナの影響で保育園休園、夫が不調でMRI(問題なしだった、よかった)、わたしは料理中に「彼女の体とその断片……薬指の標…

オスカー・ワイルドの『An Ideal Husband / 理想の結婚 / 理想の夫』と、宝塚歌劇団星組の『ザ・ジェントル・ライアー』

少し前に発表された宝塚歌劇団・星組の東上公演は、オスカー・ワイルドの戯曲『An Ideal Husband(角川文庫では『理想の結婚』)』をもとにした『ザ・ジェントル・ライアー』。もうそろそろ配役が出る頃ですね。 kageki.hankyu.co.jp 角川文庫版は絶版になっ…