トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

Forbes JAPANに寄稿しました / ロマンス小説の効能

みなさま、こんにちは!

なんと半年ぶりのブログ更新です。

ブログでのお知らせが遅くなってしまい大変恐縮ですが、Instagramに投稿したとおり10月にForbes JAPANさまにロマンス小説についての記事を寄稿しました。

こちらからどうぞ。

forbesjapan.com

ロマンス小説の人気は年々上昇。コロナ禍における読書熱の高まりや『ブリジャートン家』の映像化(2020年〜)、テーマやモチーフの多様化などさまざまな要因が考えられます。記事では、SNSを通じてあらゆる世代にリーチし圧倒的な支持を得たコリーン・フーヴァーについて、

そして

・したたか系女子?のヒロインが最高。賢く、計算高く、たくましく、家族のために頑張る姿から目が話せない。登場人物それぞれの気持ちの移り変わりの描写も見事。続編の邦訳を待ち望んでいます。ジェイン・オースティンが好きな方には特におすすめしたい、クリーンなリージェンシー・ロマンス→『没落令嬢のためのレディ入門』

・アメリカ合衆国大統領の息子と英国の王子が恋に落ちる。LGBTQ+ものであり、Enemies to Lovers(苦手だった人と恋に落ちる)物語でもあり、「アメリカと英国のラブストーリー」だと感じるほどアメリカの政治情勢について、そして英国の歴史や文学について詳しく書き込まれている。主人公アレックス(米)とヘンリー(英)の心の葛藤と、ファンタスティックな設定のバランスがすばらしい→『赤と白とロイヤルブルー』

・ペーパーバックについて調べるうちにハーレクイン、そしてロマンス小説の人気っぷりに目を留めたアメリカ文学・文化の研究者がまとめた新書。ものすごくロマンス小説が読みたくなる→『ハーレクイン・ロマンス 恋愛小説から読むアメリカ』

について書いています。

各作品のリンクは、上記記事をご覧ください。

 

ロマンス小説の効能

吞気と見える人々も、心の底を叩いて見ると、どこか悲しい音がする。

と夏目漱石は書いている。大人になると誰もが経験する喪失や別れ、痛みや悲しみ。それらはすべて「愛」したからこそ訪れるもので、だからこそ愛の讃歌ともいえるロマンス小説のすばらしさをますます実感している今日この頃。

2023年は辛いこと、悲しいことがあったからこそ、ロマンス小説の効能が心に沁みた1年でもあった。1分1秒が耐えられないほど長く感じるとき、ロマンス小説のどんでん返しや急展開が時間の流れを忘れさせてくれ、必ずハッピーエンドが待っているのだからと安心して作品に心をあずけることができたなあと思います。

 

わたしのロマンス小説デビュー3作品&最近読んだおすすめ3作品

そういえば初めてロマンス小説と出会ったのは10代の頃でした。最初に読んだ3作品がこちら。

・わりと古典を読むことが多かったので、クラシックな作品(高慢と偏見)をこんなに面白く、こんなに現代的にアップデートできるんだ!と驚嘆&感動し、目から鱗がボロボロ落ちた作品。

・恋愛だけではなく、新たな環境で新たな生活を始めること、どう頑張っても叶わない上司の存在、独身女性と既婚・子持ち女性の友情などが(お寿司と絡めて)書かれている。マリアン・キーズはどれもとても面白い。もっと邦訳されてほしい。去年出版された『Again, Rachel』も読みたい。

・シドニーが舞台の『Pants on Fire』。わたしの「装丁買い」と「働く女性が主人公のロマンス小説」(上の2作もだわ)指向を決定づけた作品。

そして最近読んで面白かったのは

・バリバリ働く万能ヒロイン x 途中でがらりと印象が変わる彼、の組み合わせが新鮮。ストーリーにTwitterというかインターネットセキュリティが絡んでくるのだが、それもまた楽しい。ロマンス小説にDDoSが登場するとは……!

・『ミーン・ガールズ』x『ブリジャートン家』のような、新たな世界を描いた1冊。リージェンシー・ロマンス的なタイトルにファッション、人種の異なる女性たちのイラストに惹かれて、装丁買い。これは思春期の女の子に特におすすめしたい。

・L・J・シェンは、Instagramに自身の小説のひとこと紹介を投稿していて、「どういうシチュエーションでそのセリフが?」とか「あれ、表紙と全然印象が違う物語みたい?」とか気になって読み始めた作家。邦訳も出ています。『口づけは復讐の香り』など面白いです。一見「ひと昔前」的な設定を、家父長制への挑戦や見た目に対するコンプレックスを抱える女性へのエールなど現代的なスパイスで味付けするのが上手。