トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

宝塚の原作を読んだログ 海外文学編

 

 個人的な備忘録として、宝塚歌劇の原作となった海外文学の読書歴・感想をまとめてみた。 随時更新しています。

 []内は宝塚で上演した際のタイトル、上演した組、最新の上演年。

 

 

『グレート・ギャツビー』

[グレート・ギャツビー、月組、2022年]

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『ほんものの魔法使』

 [ほんものの魔法使、雪組、2021年]

ほんものの魔法使 (ちくま文庫)

ほんものの魔法使 (ちくま文庫)

 

 記念すべき朝美絢さんの東上公演は、ギャリコ原作のファンタジー! 原作は原書(The Man Who Was Magic)も日本語訳も絶版(売り切れ?)で手に入りにくくなっているため、図書館で借りて読みました。

 キリスト教色の強い作品を多く書いたギャリコらしく、主人公に関してはイエス・キリストを彷彿とさせるエピソードが多く登場。街への出現から去るまでが地上でのイエスの人生そのものだともいえる。ということは、「魔法とは、生きること」なのですね。生きているってすばらしいという人生賛歌でもある。

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『ロミオとジュリエット』

[ロミオとジュリエット、星組、2021年]

 礼真琴率いる星組の情熱あふれる公演。歌声もダンスも演技も素晴らしかった……。どちらかといえば「静」の舞台と、躍動感に満ちたフィナーレの対比もうつくしく、心に残る公演となりました。

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『十二夜』

[ピガール狂騒曲、月組 2020年] 

十二夜 (光文社古典新訳文庫)

十二夜 (光文社古典新訳文庫)

 

 シェイクスピア作品の中でもご機嫌な逸品。乗っていた船が難破し、生き別れとなった兄のセバスチャンと妹のヴァイオラ。ヴァイオラは青年に扮装し、辿り着いた地での名士オーシーノ公爵に仕えるようになる。オーシーノ公爵は伯爵家令嬢のオリヴィアに夢中で、何度もヴァイオラを使いにやるのだが、そんな彼をみているうちに、ヴァイオラはオーシーノ公爵のことを愛するようになる。

 一方オーシーノ公爵の恋文は冷たく拒絶するオリヴィアだったが、なんとヴァイオラと恋に落ちてしまい……。最後は大団円、歌も踊りも多くユーモアに溢れ、楽しめる作品。

 『ピガール狂騒曲』では体躯に恵まれ、男役らしい男役として名を馳せていたたまさま(珠城りょう)が女の子の役ということで新境地を見せた。 

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『赤と黒』

[赤と黒、月組 2020年] 

赤と黒(上) (光文社古典新訳文庫)

赤と黒(上) (光文社古典新訳文庫)

 
赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫)

赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫)

 

 貧しい若者の野望溢れる立身出世ストーリー。波乱万丈で、主人公ジュリヤン・ソレルは性格がひねくれているが美青年で魅力的。貴族と平民の関係性や政治の派閥の関係に、ヨーロッパでは外せない教会・イエズス会の話等々、当時のフランスの雰囲気が生々しく伝わってくる。

 幕引きは、どのソサエティ・階級にあってもsingulier(特異)と見られるジュリヤンにふさわしいとしか言いようがない。

 2008年に主演した安蘭けいさんは、ずっとこのジュリアン・ソレル役をやりたいと熱望していたのだとか。『エル・アルコン』もそうでしたが、影のあるダーク・ヒーロー役が本当に似合うトップさんだった。 

 珠城りょうさんのジュリアンも楽しみ!

 

"The Diamond as Big as the Ritz"

[リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド、宙組 2019年]

Tales of the Jazz Age

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  • 作者: F. Scott Fitzgerald
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村上春樹翻訳ライブラリー - 冬の夢

村上春樹翻訳ライブラリー - 冬の夢

 

 89期がどんどん卒業していき、一つの時代の終わりを感じている2019年。そんな中で楽しみなのが、瑠風輝さんの今後の飛躍。

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『大尉の娘』

[黒い瞳、宙組 2019年]

*2020-04-19

 光文社古典新訳文庫から発売に。

大尉の娘 (光文社古典新訳文庫)

大尉の娘 (光文社古典新訳文庫)

 
大尉の娘(新潮文庫)

大尉の娘(新潮文庫)

 

 真風涼帆さんのロイヤルな魅力&星風まどかさんの初々しい可愛らしさが炸裂しそうな演目。

 貴族のおぼっちゃまと、コサックのプガチョフとの男の友情が描かれているのもまたいい。

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『オペラ座の怪人』

[ファントム、雪組 2018-2019年]

オペラ座の怪人 (光文社古典新訳文庫)

オペラ座の怪人 (光文社古典新訳文庫)

 

 歌うまコンビによる待望の『ファントム』上演ということで、初めて原作を読んだ。

 想像の百倍くらい面白かった。 

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『アンナ・カレーニナ』

[アンナ・カレーニナ、月組 2019年] 

アンナ・カレーニナ 1 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ 1 (光文社古典新訳文庫)

 

 政府高官の美しい妻アンナ・カレーニナは、モスクワで青年将校ヴロンスキーと出会い不倫の恋が幕を開ける。

 世間体を気にして離婚しようとしない夫カレーニン、ヴロンスキーに恋するあまり病を患うアンナの妹キティ、ヴロンスキーの子供を宿すアンナ…。墜落していくファム・ファタールと不幸の連鎖を描いた物語。アンナが破滅へとひた走る様子が印象的。

 英語訳しか読んだことがないので、今年中に日本語訳を読んでみたい。

 2019年は美弥るりかさん主演の『アンナ・カレーニナ』! ライブビューイング開催決定で、浮き立っています。こんなに美しいトリデンテ、もう一生観ることはできないでしょう。何よりタイトルロールを演じる海乃美月さんが、アンナ・カレーニナそのものの触れなば落ちんといった風情で、どんな演技を魅せてくれるのか楽しみ。 

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『ドクトル・ジヴァゴ』

[ドクトル・ジバゴ、星組 2018年] 

ドクトル・ジヴァゴ

ドクトル・ジヴァゴ

  • 作者: ボリースパステルナーク,イリーナザトゥロフスカヤ,工藤正廣
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 こちらもファム・ファタールが描かれたロシア文学。パステルナークは詩人ということもあり、トルストイのような流麗な文章で書いているわけではない。ナボコフはそれを批判しているくらいで、どちらかというと無骨で○○があった、××があった…というような事実の羅列が目立つ。

 けれど、だからこそ激動の時代のロシアに生きる人々の命が身近に感じられるのだ。

 惹かれ合うユーリとラーラ、でもお互いに果たさなければいけない義務やしがらみに縛られている。 

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『三銃士』

[All for One、月組 2017年] 

三銃士 上 (角川文庫)

三銃士 上 (角川文庫)

 
三銃士 中 (角川文庫)

三銃士 中 (角川文庫)

 
三銃士 下 (角川文庫)

三銃士 下 (角川文庫)

 

 『All for One』は決して『三銃士』が原作なのではなく、小池先生がダルタニアン&三銃士の時代をちょっとねじり、太陽王・ルイ14世を登場させて作り上げたものだけれど、ダルタニアンと三銃士の関係性の復習に読むにはよかった。

 デュマは『ダルタニャン物語』というダルタニアンの一生を追ったシリーズ作を書いているので、『三銃士』にはまった方はシリーズを読んでみるのもおすすめ。

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『べにはこべ』

[スカーレット・ピンパーネル、星組 2017年]

べにはこべ (河出文庫)

べにはこべ (河出文庫)

 

 どちらかというと、外部の『スカーレット・ピンパーネル』のマルグリット(日本では退団後の安蘭けいさんが演じた)が、原作のイメージに近い。

 宝塚だとどうしても、パーシーが第一になりますものね。原作ではマル様のご活躍が華々しくて、結構なフェミニズム小説という趣もある。

 村岡花子さんの訳ももちろん素晴らしいのだけど、古くなりつつある部分があることは否めないので、そろそろ新訳も出していただきたい。 

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『危険な関係』

[仮面のロマネスク、花組 2017年]

危険な関係 (角川文庫)

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  • 作者: ピエール・ショデルロ・ドラクロ,Pierre‐Ambroise‐Francois Choderlos de Laclos,竹村猛
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 明日海りおさんって、本当にこういうこじらせ系の役がよくお似合い。何をやってもお似合いなんですけど、特に。

 ジェラール・フィリップの映画も素敵だが、『危険な関係』がベースとなっている『クルーエル・インテンションズ』を子供の頃に見て、感動というか戦慄というかなんとも言えない気持ちになったことが忘れられない。 

クルーエル・インテンションズ [Blu-ray]

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『カルメン』

[激情、月組 2016年] 

カルメン (岩波文庫 赤 534-3)

カルメン (岩波文庫 赤 534-3)

 

 「フランス人から見た典型的スペイン娘」という形で一躍有名になったカルメン。短い作品で、結末もしっかり覚えているのに何度も繰り返し読んでしまうのは、メリメの筆致ももちろんのことながらキャラクターの魅力だろう。

 『激情』のちゃぴ(愛希れいかさん)演じるカルメンも麗しかったな。翻弄されるたまさま(珠城りょうさん)のホセもよかった。つくづく、こういう関係性を演じさせたら天下一品のコンビだった。素晴らしいトップコンビ解消を惜しみつつ、ちゃぴちゃんの新たなステージでのますますのご活躍と、たまさま&さくらちゃん(美園さくらさん)のコンビも楽しみにしています。

  

『マノン・レスコー』

[舞音、月組 2015年]

マノン・レスコー (光文社古典新訳文庫)

マノン・レスコー (光文社古典新訳文庫)

 

 舞台をヴェトナムに移し、マノン役=ヴェトナム人としたところが、ちゃぴ(愛希れいかさん)の清潔な美しさを引き立たせていたような。 

 『椿姫』を読んでいたら、アルマンがマルグリットに『マノン・レスコー』をプレゼントする場面があって、読み終えてから『マノン』を読んだ思い出がある。マルグリットは、恋人からこんな小説をもらってどう思ったのやら。そのあと『ナナ』も読んで、1人ファム・ファタール祭りをしたのが楽しかったので、そろそろリレー再読しようかな。

 

『風と共に去りぬ』

[風と共に去りぬ、月組 2015年] 

風と共に去りぬ(全6冊セット) (岩波文庫)

風と共に去りぬ(全6冊セット) (岩波文庫)

 

 

『かもめ』

[かもめ、星組 2014年]  

かもめ (集英社文庫)

かもめ (集英社文庫)

 

 読むたびに印象が異なる大好きな作品。 

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『夏の夜の夢』

[PUCK、月組 2014年] 

夏の夜の夢 (白水Uブックス (12))

夏の夜の夢 (白水Uブックス (12))

 

 いたずらな妖精パックを主人公に据えた小池先生の代表作だと思う。龍真咲さんの唯一無二の魅力が炸裂していた。原作の方が、もう少しコミカルな印象。

夏に読む海外文学 18冊 - トーキョーブックガール

 

『高慢と偏見』

[天使の梯子、星組 2012年] 

高慢と偏見(上) (ちくま文庫)

高慢と偏見(上) (ちくま文庫)

 
高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

 

 これ、バウホール公演は観ていない。スカイステージでやってくれないかなあ。涼紫央さんの王子様感、ジェイン・オースティンの世界観にぴったり! ジェイン・オースティンも、また何かやってほしいな。真彩希帆さんとか華優希さんとか、オースティンのヒロインにぴったりではないだろうか。 

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『ラスト・タイクーン』

[ラスト・タイクーン、花組 2014年] 

ラスト・タイクーン (角川文庫)

ラスト・タイクーン (角川文庫)

 

 真矢みきさんの熱演が今でも心に残る『失われた楽園』。小池先生の脚本、なんなら原作(フィッツジェラルドによる遺作、後半はメモ・走り書きになっている)よりも面白かった……。

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『ハムレット』

[HAMLET!!、月組 2010年] 

ハムレット (白水Uブックス (23))

ハムレット (白水Uブックス (23))

 

 苦悩する王子、ハムレット。月組はやたらとシェイクスピア原作が多いような。やっぱりあの個性あふれる感じが、シェイクスピアの登場人物たちに当てはまるのか?

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『誰がために鐘は鳴る』

[誰がために鐘は鳴る、宙組 2010年] 

誰がために鐘は鳴る 上 (新潮文庫)

誰がために鐘は鳴る 上 (新潮文庫)

 
誰がために鐘は鳴る 下 (新潮文庫)

誰がために鐘は鳴る 下 (新潮文庫)

 

 かなり男性賛歌で、マッチョなヘミングウェイらしいなと思うのだが、そういうところが逆に宝塚で舞台化しやすいのかも。トップ娘役のベリーショートも拝めるという特典(?)あり。 大空祐飛さん・野々すみ花さんバージョン、そろそろスカイステージで放映してほしい。版権の関係で無理なのでしょうか。

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『カラマーゾフの兄弟』

[カラマーゾフの兄弟、雪組 2009年] 

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

 

 家族、宗教、運命、人生の意味と、いくつものテーマを持ちヴォネガットの『スローターハウス5』をもってして「人生に必要なことは全て『カラマーゾフの兄弟』の中にある」といわしめる世紀の傑作。何度読んでも印象が異なる。

 

『グレート・ギャツビー』

[グレート・ギャツビー、月組 2008年] 

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

  • 作者: スコットフィッツジェラルド,Francis Scott Fitzgerald,村上春樹
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
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 何度も舞台化されている名作。トップ娘役さん・二番手さんも出番が多く、いい作品。先日フィッツジェラルドを演じて喝采を浴びた月城かなとさんには、いつかギャツビーも演じていただきたいな。 

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『二都物語』

[二都物語、花組 2003年] 

二都物語 (新潮文庫)

二都物語 (新潮文庫)

 

 ディケンズは結構舞台化されている。二都物語は『スカーレット・ピンパーネル』と同じくロンドンとパリが舞台だし、登場人物も多いしで、宝塚にはうってつけかもしれない。

 時代もフランス革命(という宝塚ファン歓喜の時代)、瓜二つの貴族ダーネイと貧しい青年カートンなどなど、様々な要素が入り混じるのが面白いけれど、ディケンズ作品としては少しダークで冗長。

 

『嵐が丘』

[嵐が丘、宙組 1998年] 

嵐が丘 (新潮文庫)

嵐が丘 (新潮文庫)

 

 私が読んだのはかなり古いバージョンなので、この新潮文庫の鴻巣友季子さん訳は絶対読みたい! 大好きな翻訳家さん。

 初めて読んだ時はまだ子供で、キャシーの激しさが印象的だったのだけれど、今読むとヒースクリフの暗い情熱に心を奪われる。

 

『ドリアン・グレイの肖像』

[ドリアン・グレイの肖像、星組 1997年]

ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)

ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)

 

 とにかくドリアン・グレイという「美少年」が持つ魔力、周りの人への影響力に圧倒される。若さや美しさで得をした人ほど、年老いていくことが耐えられないもの。ワイルドの耽美な文章も一読の価値あり。

 

『エデンの東』

[エデンの東、花組 1996年] 

エデンの東 新訳版 (1) (ハヤカワepi文庫)

エデンの東 新訳版 (1) (ハヤカワepi文庫)

 

 聖書のカインとアベルをもとにした物語で、様々な現代の小説のモデルになっている名作。

 宝塚では、キャルは真矢みきさん。ぴったりすぎて再演できないような気がする。

 

『大いなる遺産』

[大いなる遺産、月組 1990年] 

大いなる遺産 上 (河出文庫)

大いなる遺産 上 (河出文庫)

 
大いなる遺産 下 (河出文庫)

大いなる遺産 下 (河出文庫)

 

 ディケンズって、どうしてこれほどまでに何を読んでも面白いのか。読書の愉悦=ディケンズではないかと思ってしまうほど。

 ピップという貧しい少年が、姉の夫の仕事に付き合い、地元の金持ちミス・ハヴィシャムの屋敷に赴く。そこでエステラという美少女と出会い、淡い恋心を抱く。その後ピップには莫大な遺産が転がり込み…。

 前半は登場人物も多く、話がバラバラな感があるものの、後半では物語がスピーディーに展開し、前半でひかれた伏線が全てつながり謎が解かれ、裁かれるべき人は裁かれ、罪人は許しを請う。「ジェントルマン」とはどういう男のことなのか、考えてしまう。

 

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