トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

『三銃士』 アレクサンドル・デュマ

[Les Trois Mousquetaires]

こんにちは、トーキョーブックガールです。

色々な方の感想をすでにインターネット上で拝見していますが、私はまだ『All for One』を観ていません!

今月末観劇予定なので楽しみ♡ということで…今月は予習も兼ねて、デュマの『三銃士』を再読。月組公演のあらすじはどちらかというと『三銃士』ではなく、『ブラジュロンヌ伯爵』に基づいたものだとは思うのですが。

角川文庫は、表紙がペールトーンのトリコロールになっていて綺麗。

三銃士 上 (角川文庫)

三銃士 上 (角川文庫)

 
三銃士 中 (角川文庫)

三銃士 中 (角川文庫)

 
三銃士 下 (角川文庫)

三銃士 下 (角川文庫)

 

これほど何度も映画・ドラマ・舞台化されている小説も珍しいのでは。

ちょっと考えただけでも、こんなに。

<映画> 

三銃士 [DVD]

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<ドラマ・アニメ>

マスケティアーズ パリの四銃士 ブルーレイBOX [Blu-ray]

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三銃士 DVD-BOXI

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正義感にあふれたダルタニャン、三銃士のアトス、ポルトス、アラミスが繰り広げる笑いあり涙ありの物語。もちろん子供用にダイジェスト版も各言語で出ている。

 

あらすじ

この物語の主人公たちは、……トスとか……ミスとかで終わる名前を持ってはいるが、けっして神話の人物ではない、ということ。

という序文から始まる物語。

時は17世紀、ルイ13世下のフランス。ダルタニャンは、ガスコーニュ(フランス領バスク)出身の青年貴族。

父の知り合いであるトレヴィル殿の銃士隊に志願するため、家族に別れを告げパリを目指す。

ダルタニャンはまだ20歳にもなっておらず、一見子供のようでもある。美男子で頭もいいのだが、向こう見ずですぐに頭に血が上ってしまう。道中ではひょんなことからある男にケンカをふっかけ、父親が書いたトレヴィル殿宛の紹介状を紛失してしまう始末。

パリに到着するとトレヴィル殿に謁見できたものの、銃士隊のアトス、ポルトス、アラミスと言い合いになり決闘をすることに。

ところが決闘場に、銃士隊と対立関係にあるリシュリュー枢機卿の護衛士らが現れ、銃士隊は決闘を急遽中断し、こちらと戦うことになる。ダルタニャンは決闘するはずの銃士隊の肩を持ち、護衛士をやっつける。その後、三銃士はダルタニャンの親友となる。

銃士隊にはまだ入れずにいたものの、三銃士らと楽しくパリで生活するダルタニャン。そんなある日、ダルタニャンは家主のボナシユーに「行方不明になった妻を探してほしい」と持ちかけられる。

家主の妻の名はコンスタンス。表向きは王妃のメイドとして働いていたのだが、王妃に恋するイギリスのバッキンガム公爵と王妃がこっそり逢えるよう暗躍していた。

それをリシュリュー枢機卿が嗅ぎつけ、王妃を陥れるためにコンスタンスを誘拐したのだ。助け出したダルタニャンは、若く美しい人妻コンスタンスに恋をしてしまう。

そして、枢機卿の悪巧みを阻止するために、イギリスに渡りバッキンガム公爵に面会することとなるのだが…。

リシュリュー枢機卿、彼の手下のミラディー(自称イギリス人、絶世の美女)、謎のマンの男と手強い敵がその前に立ちはだかり、最後までハラハラドキドキさせられる小説だ。

 

『三銃士』の魅力

なぜ『三銃士』が何百年という時や文化の壁を超えて、いつまでも愛され続けるのか。

その理由の一つは登場人物の魅力だろう。

アトスは沈着冷静なまとめ役。

常に落ち着きがあり、声を荒げることはない。無口で、自分のことはほとんど話さないものの、実は過去に辛い恋愛を経験しているようだ。謎に包まれた人物。

ポルトスはとにかく見栄っ張りでお調子者。

すべての言動・行動に、「自分をよく見せたい」という願いが透けて見えるような男だ。口がうまく、お金持ちの夫人にお金を工面させている。

アラミスは憂いを帯びた美男子。

女泣かせで、実は周りがあっと驚くような女性とこっそり付き合っている。宗教の道に進みたいという気持ちが強く、最後まで銃士隊と宗教の間で揺れ動いている。

ダルタニャンは一番若く(20歳そこそこ)、どこか危なっかしいところもある。

考える前に体が動いてしまうので失敗も多いが、頭がいいので戦いの計画やアイディアなどはぽんぽん出てくる。

悪役も、脇役も、個性豊かで魅力的。

どこを切っても美味しい金太郎飴のような…。

「自分に似ている」、「あの人に似ている」が見つけやすく共感しやすい人物設定になっているのではないだろうか。

 

タイトルは、なぜ『三銃士』?

物語の主人公はダルタニャン。

もちろん、三銃士とはアトス、ポルトス、アラミスのことであって、ダルタニャンは含まれない。

ダルタニャンはそもそも物語の後半まで、銃士隊には入隊していないので「銃士」ですらない。

ではなぜこの作品が『三銃士』と呼ばれるかというと、これは『ダルタニャン物語*1』というダルタニャンの人生を描いた物語の第一部であり、三銃士と共に過ごしたダルタニャンの青春を描いているからである。 

ダルタニャン物語 全11巻

ダルタニャン物語 全11巻

 

三銃士に会い、切っても切れない親友となり、苦楽を共にする。

王と王妃に忠誠を誓い、彼らのために暗躍する。

そして物語の終わりには、それぞれの人生の目的のために分かれた道を行く4人が描かれている。 

4人は物語の中で、ほとんどいつも一緒に過ごしている。

お金がないときはそれぞれ助け合い、「自分のものはみんなのもの、みんなのものは自分のもの」といわんばかりに、ダルタニャン1人が王からいただいた報奨金を4人で分け合ったり、賭けをするときは勝手に友達の持ち物まで賭けてしまったり(…)と、まさにOne for All, All for Oneの精神で生きている。

それでも、銃士隊で出世することが4人全員の目的だというわけではない。

アラミスはいつかは僧院に入りたいと思っているし、ポルトスはお金持ちの後家さんと結婚して安泰な生活を手に入れたいと考えている。

使命を果たし、いざ別れんという時に涙を流すダルタニャンに向かってアトスは言う。

君はまだ若いのだ。君の苦い思い出も、時がそれを楽しい思い出に変えてくれるさ。

本を閉じる時、登場人物たちと別れるのが寂しくて、しばしぼーっとしてしまう。

また会いたいな、と思ってしまう。

そういう類の小説である。

 

大衆小説の魅力

アレクサンドル・デュマ(大デュマ)は『モンテ・クリスト伯』、『王妃の首飾り』など、非常に多くの小説を執筆した作家。

ディケンズやアーヴィングの系譜を作った作家だと思う。

この本を読むと、「大衆小説より面白いものはない」とつくづく感じ入ってしまう。

「この先どうなるの!?」という期待、わくわく感こそが読書の一番の醍醐味なのではないだろうか。 

どれほど時間が流れても、小説が執筆された時代(もしくは小説の舞台となった時代)を肌で感じられるのも嬉しい。

と、ここでもう一つ書いておきたかったことが。

インターネット上の『三銃士』の感想を見ていると、「クズすぎる」、「主人公たちがみんな人妻に手を出していてとんでもない」みたいな感想が多くて気にかかった。

子供用ダイジェストにはこの辺りの恋愛模様は描かれていないし、三銃士が敵をばったばったと殺してしまうような残酷な描写も賭博シーンもないので、大人になってから読むとそのギャップにショックを受ける方もいるのだろう。

が、恋愛に関して言うと騎士道的恋愛*2から始まる、宮廷での自由恋愛が17世紀フランスの常識だったので、ダルタニャンや三銃士は決してインモラルというわけではないのだ。

良くも悪くも「結婚してから(婚外)恋愛が始まる」という時代だったのだ。

文化人や芸能人の不倫が激しく糾弾され、ワイドショーを賑わせている現代日本で読むと、その文化の違いにくらくらしてしまうかも。

 

「なりたい男」、「理想の男」像について考えている方に。

「仲間」という言葉が好きな方に。

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*1:ダルタニャン物語は3部構成。『三銃士』、そしてルイ14世下のフランスと40歳を迎えたダルタニャンを描いた『二十年後』、仮面の男を描いた『ブラジュロンヌ伯爵』。

*2:独身の騎士と既婚の貴婦人が、恋愛という概念を始めたと言われている。なおこれは、貴婦人の夫=多くの場合騎士の上司が、騎士を自分の元につなぎとめておくために自身の妻を使って騎士を誘惑させたから始まったもの、でもあるらしい。