トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

Animal Wife / Lara Ehrlich

『文藝』2021年夏号(もふもふ〜)でカミラ・グルドーヴァの「ねずみの女王」を翻訳された上田麻由子さんが「人間が動物に変身する話」が近頃かなり多くみられると解題に書いていらしたのだが、読みながらこくこくとうなずいてしまった。本当〜〜〜に多い。…

『中国が愛を知ったころ』張愛玲(濱田麻矢・訳)

「沈香屑 第一炉香」、「中国が愛を知ったころ」、「同級生」からなる短編選。これでついに、日本語に翻訳されている張愛玲はすべて読み終えてしまったことになる。この先どうやって生きていけばいいの……涙。 *装丁には、近道聡乃さんのイラストレーションが…

2021年 ブッカー賞ロングリスト

*9月14日に発表されたショートリストはこちらから。 www.tokyobookgirl.com 7月27日(英国)、ブッカー賞が発表となった。ホームページ(下)ではChair of the 2021 Judgesを務めているマヤ・ジャサノフさんのコメント動画も閲覧できる。 The Booker Prize 2…

At Night All Blood is Black / ダヴィッド・ディオプ(アンナ・モスコヴァキス訳)

[Frère d'âme] 今年の国際ブッカー賞を受賞したDavid Diop(ダヴィッド・ディオプ*1)の作品。いや〜とんでもない化け物みたいな本でした。読者を掴んで離さない。 翻訳小説としてはかなり珍しいことに、先日発表されたばかりのオバマ元大統領のサマーリーデ…

宝塚花組の『アウグストゥス』と、ジョン・ウィリアムズの『アウグストゥス』(布施由紀子・訳)

宝塚ファンには、いわゆる駄作を愛でるという文化がある。「出来の悪い子ほどかわいい」気分になるのだ。初回の観劇こそ、「全然よくなかった! ◯◯先生ってば!」と演出家を責めるものの(ごめんなさい)、そのうちに「変すぎ」と思っていた曲やセリフが頭に…

カズオ・イシグロが読んでいた本

そういえば数年前、「イシグロの次の小説はSFだろうな」と思ったことがあったな、なんでだっけな……と考えていて、思い出した。イシグロが読んでいる本に、テクノロジーについての作品があったのだった。The Guardianのお気に入り記事の1つに、作家が読んでい…

サリー・ルーニーの"At the Clinic"とか、その他の短編とか

今年はルーニーの3作目、Beautiful World, Where Are Youが発売される予定。その前にオンラインで読める短編は読んでおきたいなと思っているところ。とりあえず、こちらに備忘録としてまとめてみる。 Beautiful World, Where Are You: from the internationa…

The Dangers of Smoking in Bed / マリアーナ・エンリケスの原点(Megan McDowell訳)

[Los peligros de fumar en la cama] 国際ブッカー賞のショートリストにノミネートされていた、マリアーナ・エンリケスのThe Dangers of Smoking in Bedを読んだ。エンリケスの初短編集。読みながら何度も、「いいなあ……好きだなあ……」としみじみ思う。何度…

2021年 国際ブッカー賞受賞作はAt Night All Blood is Black

6月2日、国際ブッカー賞の受賞作が発表に。フランス人作家の受賞は初めてとのこと。日本語にも翻訳されるかな? At Night All Blood is Black / David Djop(Anna Moschovakis 訳) フランス語から翻訳 At Night All Blood is Black 作者:Diop, David 発売日…

母と娘の世界文学 20冊

明日は母の日。いろいろな母と娘の形に思いを馳せて、大好きな「母と娘」文学をいくつか挙げてみました。もちろん母と娘文学は山のようにあるので、今本棚に入っている本(=絶対に手放すもんかと思ってる本)限定で! 母の視点 『パウラ、水泡なすもろき命…

『肉体の悪魔』ラディゲ(中条省平・訳): いつ読んでも印象がまったく変わらない不思議な小説

[Le diable au corps] 僕は愛などなくてもいられるように早く強くなりたかった。そうすれば、自分の欲望をひとつも犠牲にする必要がなくなる。 Je souhaitais d'être assez fort pour me passer d'amour et, ainsi, n'avoir à sacrifier aucun de mes désirs…

『恥さらし』パウリーナ・フローレス(松本健二・訳): こういうラテンアメリカ文学が読みたかったんだよ、わたし

[Qué Vergüenza] 2021年の読みたいリストに入れていた1冊。 恥さらし (エクス・リブリス) 作者:パウリーナ・フローレス 発売日: 2021/01/06 メディア: 単行本 恥さらし。なんて強い言葉。「恥」を「さらす」。 恥さらしと聞いて思い浮かぶのは……寒さの厳しい…

2021年 Women's Prize for Fiction ショートリスト

いよいよゴールデンウィークですね! お休みの方は何を読む予定ですか? わたしはメインのお仕事は休みだけど、サブのお仕事はあるのであまりいつもと変わらないような……だけど、この機会に、4月に入ってからグダグダになっていた今年の目標の1つを仕切り直…

『フィーメール・マン』とか『女の国の門』とか

『フィーメール・マン / Female Man』ジョアナ・ラス(友枝康子訳) 数年前、『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んだときに「あ、あれ再読しよう」と思い、先日ついに発売されたよしながふみの漫画『大奥』の最終巻を読んで「あ、今度こそあれ読もう」と思っ…