トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

『恥さらし』パウリーナ・フローレス(松本健二・訳): こういうラテンアメリカ文学が読みたかったんだよ、わたし

[Qué Vergüenza] 2021年の読みたいリストに入れていた1冊。 恥さらし (エクス・リブリス) 作者:パウリーナ・フローレス 発売日: 2021/01/06 メディア: 単行本 恥さらし。なんて強い言葉。「恥」を「さらす」。 恥さらしと聞いて思い浮かぶのは……寒さの厳しい…

2021年 Women's Prize for Fiction ショートリスト

いよいよゴールデンウィークですね! お休みの方は何を読む予定ですか? わたしはメインのお仕事は休みだけど、サブのお仕事はあるのであまりいつもと変わらないような……だけど、この機会に、4月に入ってからグダグダになっていた今年の目標の1つを仕切り直…

『フィーメール・マン』とか『女の国の門』とか

『フィーメール・マン / Female Man』ジョアナ・ラス(友枝康子訳) 数年前、『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んだときに「あ、あれ再読しよう」と思い、先日ついに発売されたよしながふみの漫画『大奥』の最終巻を読んで「あ、今度こそあれ読もう」と思っ…

2021年 国際ブッカー賞ショートリスト

今日は、全然関係ない話から始めましょう。このページを見てくださっているみなさまは、Chromeユーザーですか? Chromeってすごくおもしろい拡張機能があるんです。わたしがたまたま最近発見しただけで、数年前からあるので、ご存知の方も多いかも。その名も…

『ロミオとジュリエット』シェイクスピア(小田島雄志・訳、松岡和子・訳、宝塚歌劇団星組): 疾走する命

[Romeo and Juliet] このブログには本のことだけ書こうと思っているのですが、東京宝塚劇場での上演が始まったばかりの星組『ロミオとジュリエット』を観劇(&感激……)したところなので、今日は星担による星組礼賛日記になってしまいそう。 さて、宝塚歌劇…

Chicas Muertas / セルバ・アルマダ: 女性だったから殺された女の子たち、フェミサイドについて

[Dead Girls] 「わたし、絶対にぜーったいにアルゼンチンの男の人とは結婚しないんだ。ていうか、イスパノアメリカの男の人とは結婚しない*1」 16歳のころ、アルゼンチン出身の友人がそう言った。「どうして?」と問うわたしたちに、彼女はいまだに根強いマ…

春夏秋冬の世界文学 100冊

数年前に公開して以来、ぼちぼちと更新を続けていた「季節の海外文学」リスト。どれも最初に公開したときは大体15〜20冊程度だったので、「いつかそれぞれ25冊まで増やして、全部で100冊になるといいな〜」と考えていたのだが、けっこうあっという間に100冊…

Normal People / サリー・ルーニー: フツーのひとって、どんなひと

(ふつうのひと) 2018年のブッカー賞にもノミネートされた、サリー・ルーニーの長編2作目。2020年には映像化もされた(下にApple TVのリンクを貼りました。ドラマもよかったですね〜!)。描かれるのは2011年から2015年にかけて起こったできごと。高校から…

2021年 国際ブッカー賞ロングリスト

*この記事では「国際ブッカー賞」について書いています。2021年の「ブッカー賞」の記事はこちら(↓)です。 www.tokyobookgirl.com www.tokyobookgirl.com www.tokyobookgirl.com 2021年の国際ブッカー賞ロングリストが発表された。今年も多様な作品がノミネ…

3月に読んだ韓国文学 #koreanmarch

去年に引き続き、インスタでは世界文学読みさんたちが「#koreanmarch」を開催していたので、これ幸いと韓国文学三昧な日々を過ごした。色々な方が読んだ本や積読している本を眺めているだけで、幸せな気分に……。 わたしはといえば、新しいものは購入せずに積…

『Klara and the Sun / クララとお日さま』/ カズオ・イシグロ(土屋政雄・訳)

コロナ禍で両親以外の人の口元(マスクをしていない顔)をほとんど見る機会がないということが幼い子どもの脳に与える影響について、さまざまな国で研究が行われている*1。保育園児の母としては、大きな不安と焦りを感じる毎日だ。マスクをつけていなければ…

2021年 Women's Prize for Fiction ロングリスト

今年もやってきました、Women's Prize for Fictionのロングリスト発表日が。例年通りのスケジュールで嬉しい。新型コロナウイルス感染症の影響がおさまったとは言いがたいが、今年は、その他の文学賞も比較的スケジュール通りに発表されそう。 womensprizefo…

Open Water / Caleb Azumah Nelson: 愛しさも哀しみも怒りも溶け込んだ水

最近、恋愛小説が読みたくてたまらない。けれんみのない恋愛小説を心が求めている。どうしてだろう……と考えをめぐらせ、はたと気づく。これって、バブルの狂騒の時代に吉本ばななの小説が大ヒットしたのと同じ原理なのでは? 物質主義的な時代に辟易した人々…

宝塚・雪組公演が決定した『ほんものの魔法使』(ポール・ギャリコ・著、矢川澄子・訳)

*創元推理文庫で、5月に原作が復刊されるとのこと。Amazonの価格も高騰していたのでよかったです。 ほんものの魔法使 (創元推理文庫) 作者:ポール・ギャリコ 発売日: 2021/05/10 メディア: 文庫 【お知らせ】創元推理文庫5月刊のポール・ギャリコ/矢川澄子…