トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

2021年 国際ブッカー賞ショートリスト

 今日は、全然関係ない話から始めましょう。このページを見てくださっているみなさまは、Chromeユーザーですか? Chromeってすごくおもしろい拡張機能があるんです。わたしがたまたま最近発見しただけで、数年前からあるので、ご存知の方も多いかも。その名も「Google Art & Culture」(同名のGoogleページもあり)。こんな感じ!*1

Google Arts & Culture - Chrome ウェブストア

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 この拡張機能をインストールすると、タブに世界中の絵画が! 表示されるように。わたしのおすすめは、新しいタブを開くたびに異なる絵画を表示する設定(拡張機能の [設定] から設定変更可能)。眺めているだけで幸せな気持ちになれる、すばらしい機能。観たことのないような絵画も多く登場し、新たなお気に入りアーティストを見つけられるかも。

 再びの緊急事態宣言で、美術館も訪れにくくなりますが、生活にアートが足りないと感じたら、ぜひお試しください♡ 先月、風邪をひいたり仕事で凡ミスしたりと落ち込んでいたときに見つけて、すごく元気づけられたのでご紹介しました。

 

 さて、あっという間に2021年の国際ブッカー賞ショートリストの発表日がやってきました(4月22日)。ロングリストにノミネートされた13作品のうち、6作品がショートリスト入り。大好きなマリアーナ・エンリケスがノミネートされていて嬉しい! スペイン語作品からは、エンリケスとLabatutがノミネート。

 国際ブッカー賞の公式ページはこちら

 

 

At Night All Blood is Black / David Djop(Anna Moschovakis 訳) 

フランス語から翻訳

At Night All Blood is Black

At Night All Blood is Black

  • 作者:Diop, David
  • 発売日: 2020/11/05
  • メディア: ハードカバー
 

 個人的に大好きなスモールプレス、Pushkin Pressからの1冊。セネガル育ちのフランス人、Djopによる2作目の小説で原題はFrère d'âme。

 第1次世界大戦にてフランス軍に参加し、ドイツと戦ったセネガル人のアルファとマデンバという2人の兵士を描いている。2人は助け合い、懸命に攻撃を続けるのだが、マデンバは負傷し亡くなってしまう。1人残されたアルファは呆然とし、孤独感に苛まれるものの、そのうち戦いにのめり込むようになり、暴力や死を求めてさまよう。

 翻訳者のMoschovakisは自身も作家&詩人として活動している。 

 

The Dangers of Smoking in Bed / マリアーナ・エンリケス(Megan McDowell訳) 

スペイン語から翻訳 

The Dangers of Smoking in Bed: Stories (English Edition)

The Dangers of Smoking in Bed: Stories (English Edition)

 

 2021年に英語に翻訳された、アルゼンチン人作家・エンリケス待望の短編集。原題はLos peligros de fumar en la cama(原書、Kindleでも読めます。最近はスペイン語の本も続々Kindle対応になっていて本当にありがたい)。スティーブン・キングが好きだと本人は語っていたことがあったが、悪夢のようなホラーとフェミニズムな視点をミックスさせた作風が特徴的。前作では「引きこもり」問題を取り上げていたのが心に残った。 

 こちらの短編集もアルゼンチンの現代社会が舞台となっていて、行き場のないティーンエイジャー、魔女、家をなくした幽霊などが登場する。ちょうど読んでいるところなので、また別途ブログに書きたいと思う。

 翻訳はもちろん(?)、Megan McDowell。読みたいなと思ったスペイン語作品の英語訳は大体この翻訳者さんなので、名前をしっかり覚えてしまった。サマンタ・シュウェブリン作品も訳されている。

 マリアーナ・エンリケスは『わたしたちが火の中で失くしたもの』(Las cosas que perdimos en el fuego)が翻訳されている。これもすごくよかった。

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When We Cease to Understand the World / Benjamín Labatut(Adrian Nathan West訳)

スペイン語から翻訳

When We Cease to Understand the World

When We Cease to Understand the World

 

 こちらも面白い現代ラテンアメリカ文学を多く翻訳しているPushkin Pressから。Labatutはロッテルダム生まれのチリ人作家。外交官の息子として、オランダやハーグ、ペルーで育ったとか。カルロス・フエンテス(外交官の息子)の系譜?とか思ったりするが、バレリア・ルイセリ(外交官の娘)と年齢も近い若手作家。 

 第1次世界大戦中に東部戦線から手紙を受け取ったアインシュタイン。中には、一般相対性理論の方程式に対する答えが入っていた。数学者のグロタンディークは自身の発見が及ぼす影響を恐れ、世間を遠ざける……。科学の歴史における決定的な瞬間を、フィクションとノンフィクションをミックスしながら描き出す作品とのこと。

 

The Employees / Olga Ravn(Martin Aitken訳)

デンマーク語から翻訳 

The Employees: A workplace novel of the 22nd century

The Employees: A workplace novel of the 22nd century

  • 作者:Ravn, Olga
  • 発売日: 2020/09/21
  • メディア: ペーパーバック
 

 「Structured as a series of witness statements complied by a workplace commission」とあるので、なんとなく芥川龍之介の『藪の中』を思い出す。舞台となっているのは、未来の宇宙船。登場人物は宇宙船の乗組員たちで、人間もいればヒューマノイドもいる。彼らは「New Discovery」と名付けられた惑星からいくつもの奇妙な物体を拾い集めるという任務についているのだが、乗組員たちはなぜかその物体に感情を揺さぶられ、この世を去った知り合いや子育てのこと、もう今は消滅した地球について思いを馳せるのだった。

 人間として生きる意味を問うとともに、仕事や生産性で縛られた生活を批判するような作品とのこと。 

 

In Memory of Memory / Maria Stepanova(Sasha Dugdale訳)

ロシア語から翻訳

In Memory of Memory

In Memory of Memory

  • 作者:Stepanova, Maria
  • 発売日: 2021/02/17
  • メディア: ペーパーバック
 

 詩人・エッセイスト・ジャーナリストでもあるロシア人作家Stepanovaが2018年に発表した作品。 

 あらゆる苦難を乗り越え、生き延びてきたユダヤ人一家の物語。おばの死を受けて、Stepanovaが色褪せてしまった写真や昔の絵葉書、手紙、日記などをもとに書き上げたエッセイ・フィクション・伝記・旅行記・歴史資料とのこと。

 

The War of the Poor / エリック・ヴュイヤール(Mark Polizzotti訳) 

フランス語から翻訳

 『その日の予定』が日本語にも翻訳されているヴュイヤールが2019年に発表したLa guerre des pauvresの英語訳。

 16世紀の宗教改革を通して、ブルジョワと貧しき者の格差を描き出す。

 

2021年のロングリストはこちら。 

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国際ブッカー賞の過去の受賞作はこちら。

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*1:写真は拡張機能のページより。