トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

2018年 ブッカー国際賞ショート・リスト

[アップデート 2018-05-23]

2018年ブッカー国際賞はオルガ・トカルチュクの『逃亡派』に決定。

www.tokyobookgirl.com

 

2018年ブッカー国際賞のショート・リストが昨日発表されましたね*1

2005年に創設された国際賞。当初は隔年選出だったものの、2011年からは毎年に変更され、さらに著者&英語への翻訳者の共同受賞となっている。

アメリカ人作家による作品はブッカー賞の方に含まれることになったので、より多くの国に焦点が当たるようになった感もある。

文学賞にはほとんど興味がないのだけれど、ブッカー賞のリストはチェックしている。面白い作品が多いから。

 

ノミネート作品は下記の通り。

 

 

Vernon Subutex 1

著者:ヴィルジニー・デパント (フランス)

翻訳者:Frank Wynne 

Vernon Subutex 1: English edition (MacLehose Press Editions)

Vernon Subutex 1: English edition (MacLehose Press Editions)

 

ラディカル・フェミニストと評されるデパントの作品。

暴力や性描写が激しいことでも知られている。

主人公Vernon Subutexは、バスティーユにあるレコード/CDショップ・リヴォルバーの店主である。インターネット時代の到来で、店の経営は上手くいかなくなっているがVernonはどう対処していいのか分からない。

徐々に貯金も尽き、路上で物乞いをするまでになる。

ところが、行き交う人にふともらした「俺はAlex Bleach(有名なミュージシャン)が死ぬ直前に作った音源を持っているんだ」という言葉がFacebookで取り上げられ、一躍有名人になってしまう。

様々な人がVernonに会おうと店に押しかけ…。

下記にインタビュー映像あり(フランス語)。

www.youtube.com

 

『白い』

著者:韓江 / ハン・ガン(韓国)

翻訳者:デボラ・スミス

The White Book

The White Book

 

2016年に『菜食主義者』でブッカー国際賞を受賞した韓江が再びノミネート。

翻訳者も前回と同じく、デボラ・スミス。

名前のない語り手が、生まれて2時間後に死んだ妹について語る自伝的小説。

物語は若干22歳の母親の視点で語られる。たった2時間の生、そして死について。 

 

The World Goes On

著者:クラスナホルカイ・ラースロー(ハンガリー)

翻訳者:John Batki, Ottilie Mulzet & George Szirtes

The World Goes on

The World Goes on

  • 作者: László Krasznahorkai,John Batki,Ottilie Mulzet,George Szirtes
  • 出版社/メーカー: New Directions
  • 発売日: 2017/12/05
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2015年にブッカー国際賞を受賞したクラスナホルカイ・ラースローによる作品。

話し手が、読者に話しかけるように書かれた小説。

滝に魅せられたハンガリー人の通訳が、上海の喧騒の中を歩き回る。

ガンジス川のほとりで大男に出会う旅行者。

ポルトガル人の子供が、仕事場を離れて出会う非現実の世界。

11の忘れがたい物語が語られる。

ちなみに、ハンガリー語では名前は日本と同じく苗字・名前の順で表記されるんですね。ちょっと日本に似ていますよね。だからではないと思うけれど、私が今までに会ったことのあるハンガリー人は皆日本の小説に非常に詳しくて驚いた覚えがある(安部公房など)。

 

Like a Fading Shadow: A Novel

著者:アントニオ・ムニョス・モリーナ(スペイン)

翻訳者:Camilo A. Ramirez

Like a Fading Shadow: A Novel

Like a Fading Shadow: A Novel

 

現在はニューヨーク在住のスペイン・ウベダ出身の作家、モリーナ。

小説の舞台は1968年におけるアメリカ。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアを暗殺したジェームズ・アール・レイは偽造パスポートを作り、カナダへ、そしてイギリスへ逃げる。その後ポルトガルのリスボンに落ち着いたレイは、そこで逮捕までの10日間を過ごすことになる。

デビュー作(A Winter in Lisbon)もリスボンについて書いたモリーナが再びリスボンに戻り、歴史を検証しながら書いた作品。

 

『バグダードのフランケンシュタイン』

著者:アフマド・サアダーウィ(イラク)

翻訳者: Jonathan Wright

FRANKENSTEIN IN BAGHDAD

FRANKENSTEIN IN BAGHDAD

 

Frankenstein in Baghdadという、なんともインパクトのあるタイトル。

こちらは、2014年にアラブ・ブッカー賞を受賞している。

爆破事件が頻発するバグダードで、路上に放置された遺体を集めた男がそれぞれの身体のパーツを縫い合わせてフランケンシュタインのような怪物を作る。

その怪物には爆破事件の犠牲者の魂が宿っていて、犠牲者の復讐を遂げようとする…。

怪物をインタビューするジャーナリストの青年やその周辺の人々を中心に描かれる物語。 

非常に話題になっていたようだが、まだ邦訳が出ていないのは残念。

https://www.newsweekjapan.jp/column/sakai/2014/05/post-835.php

 

『逃亡派』

著者:オルガ・トカルチュク(ポーランド)

翻訳者:Jennifer Croft

Flights

Flights

 
逃亡派 (EXLIBRIS)

逃亡派 (EXLIBRIS)

 

日本語にもよく翻訳されている印象のあるオルガ・トカルチュク。

今回のノミネート作品の中でも唯一邦訳あり(英語版よりよほど前に出版されているし、翻訳者さんも出版社さんも素晴らしい…とつくづく思う)。

様々な「旅」が、エッセイとフィクションのパッチワークのような作品を通して語られる。以下はAmazonの紹介文より。

クロアチアへ家族旅行に出かけるが、妻子が失踪してしまうポーランド人男性。アキレス腱の発見者である17世紀の解剖学者の生涯。弟の心臓を祖国ポーランドに葬るため、パリから馬車で運んでいくショパンの姉ルドヴィカの物語……エッセイ風の一人称の語りと交じり合うようにして、時代も人物もさまざまな三人称の物語が、断片的に、あるいは交互に綴られていく。詩的イメージに満ちためくるめくエピソードの連鎖に、読者はまったく新しい「旅」を体験するだろう。

 

まとめ

過去の受賞者による作品が2つも入っている(何度も同じ著者がノミネートされるというのは、ブッカー賞では割とよくある現象)。

それほど素晴らしい作品ということかも。

例のごとく、どれも未読です。

ハン・ガンはまだ読んだことがないので(前回受賞時の「誤訳」騒動もあって手が伸びなかった)、ぜひ今年中にThe VegetarianもThe White Bookも読んでみたい。

『バグダードのフランケンシュタイン』も読みたい。邦訳はまだ出ていないので、英語かな。

 

2017年ブッカー賞のショート・リスト作品紹介はこちら。

www.tokyobookgirl.com

 

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*1:元記事。

themanbookerprize.com