お気に入り
[El Obsceno Pájaro de la Noche] 月夜になると、恐ろしい首が小麦色の長いながい髭をなびかせながら空を飛ぶ。その顔は主人の娘の美しい顔にそっくりで……不吉な鳥チョンチョンの身の毛もよだつトゥエ、トゥエ、トゥエという声をまねて歌うのだという。魔法…
(戦下の淡き光) *日本語訳が2019年に発売に。 戦下の淡き光 作者:マイケル・オンダーチェ 発売日: 2019/09/13 メディア: 単行本 5月に発売された、オンダーチェの最新作。即購入し読み始めて、そうこうしている間にブッカー賞ロングリストにノミネートされ…
(ワシントン・ブラック) *日本語訳が出版されたので、作者名を更新しました。 ワシントン・ブラック 作者:エシ・エデュジアン 発売日: 2020/09/25 メディア: 単行本 2018年ブッカー賞のショートリストに残ったWashington Black。一言で言うと、「楽しい時…
[À la recherche du temps perdu] というわけで、今夏も読み返した『失われた時を求めて スワン家のほうへ』の感想を。ちょうどいいタイミングで、9月15日にBSで映画『スワンの恋』も放送されたのです。この話も後ほど。 スワンの恋 [DVD] 出版社/メーカー: …
[Alias Grace] なんと、アトウッドの名作『またの名をグレイス』が文庫化されるそう! 発売日は9月15日。『侍女の物語』に続きNetflixでドラマ化され、好評を博したらしいので、原作も売れそうですね。 個人的には、ナンシー役をアナ・パキン、ジェレマイア…
[À la recherche du temps perdu] 私のサマー・リーディングといえば、ここ何年かは必ず『失われた時を求めて』だ。でもこれが、遅々として進まない。読んだことのない巻を手に取ると、必ず「スワン家のほうへ」まで戻って最初から読んでしまうから。それだ…
[Samarcande] 今年はウズベキスタンに行きたいなと考えている。美しい遺跡や霊廟を見てみたいし、夫婦揃ってラム好きなので楽しめそう。ちなみに、名物のラグマンは以前食べたことがあるがかなり美味しかった記憶がある。というわけで、この本を読んでみた。…
[У ВОЙНЫ НЕ ЖЕНСКОЕ ЛИЦО] 2015年ノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの第1作目にして、作者自身が「もっとも大切に感じている」という作品『戦争は女の顔をしていない』を読んだ。ウクライナ出身・ベラルーシ在住のジャーナリスト…
最近、絶版してしまったモダンクラシックな作品の復刊が相次いでいて嬉しい。『ラテンアメリカ怪談集』は、1990年代に河出文庫にて発売されていたそうなのだけれど、私が読みたいと思った頃にはすでに絶版となって久しかった。Amazonで古本を探してみても、…
[Cuentos Breves y Extraordinarios] あらゆる人食い鬼がセイロンに棲み、彼らの存在すべてがただ一個のレモンのなかにはいっていることは、よく知られている。盲人がそのレモンを切り刻むと、人食い鬼は残らず死ぬ。 ー『インドの好古家』第1巻(1872)より…
(キルケ) *日本語訳が出版に。 キルケ 作者:マデリン・ミラー 発売日: 2021/04/30 メディア: 単行本 When I was born, the name for what I was did not exist. They called me nymph, assuming I would be like my mother and aunts and thousand cousins…
[Requiem] [Mar Portuguez] 7月が来るといつも読み返したくなる、タブッキの『レクイエム』。なぜかタブッキの作品は全て夏に読むのにぴったりな気がするのだけれど、その中でも特にこの小説は夏にこそ読みたい。ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアを心底…
[Nocturnes] これも、『わたしたちが孤児だったころ』とともに読み返した1冊。 イシグロ唯一の短編集で、注目すべきは「短編集を書くと決意して書かれた」作品ということ。フィッツジェラルドのように金を稼ぐため書き散らしたわけでもなければ(既にブッカ…
(洪水の年) *2018年9月22日、岩波書店から日本語訳が発売されるそうです。 洪水の年(上) 作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/09/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 洪水の年(下) 作者: マー…
[When We Were Orphans] 最近『わたしたちが孤児だったころ』を読んだばかりの母と話した。 私が読んだのはかなり前で、上海が舞台の探偵小説風小説ということ以外思い出せず、まるで読んだことのない本のあらすじや感想を聞く気分で聞いていたのだけれど、…
[The Hate U Give] メンバーの投票で決定した2018年5-6月のOur Shared Shelf(エマ・ワトソン主催のブッククラブ)お題本は2冊あるのだけれど、1冊目は『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』というYA小説! そろそろ読み始めようかなと思った頃、偶然書店で日本語訳を…
ピューリッツァー賞のフィクション部門受賞作は、ブッカー賞と同じくどれも読み物として面白いので注目しているのだが、2016年のヴィエト・タン・ウェン『シンパサイザー*1』は個人的に苦手なスパイ小説ということで、手が伸びなかった。 ピューリッツァー賞…
(西への出口) 2017年のブッカー賞にノミネートされていた、この小説。 読んでみたいと書いてから半年経ってしまったが、ようやく読んだ。Penguinのカバーも素敵。オレンジのイスラム建築のドアの向こうに西洋の都市(ロンドン)が見えるというもので、まさ…
[The Bell Jar] It was a queer, sultry summer, the summer they electrocuted the Rosenbergs, and I didn’t know what I was doing in New York. 10代の頃の自分の読書ログを眺めていたら、The Bell Jarについて「ここ数年読んだ本の中で一番好き」とだけ…
[Pájaros en la boca] 最近ラテアメ文学の再読ばかりしていて気がついた。邦訳されているイスパノアメリカ文学は圧倒的に男性作家ばかりだなと。 もちろんラテンアメリカには男性作家しかいないのかというとそんなわけはなく、大学の頃授業で学んだ作品は男…
[Como Me Hice Monja] セサル・アイラの『わたしの物語』は、読者が裏切られ続ける物語。 とにかくやられた感がすごいのだ。 わたしの物語 (創造するラテンアメリカ) 作者: セサル・アイラ,柳原孝敦 出版社/メーカー: 松籟社 発売日: 2012/07/27 メディア: …
[El Llano en Llamas] とても久しぶりに『燃える平原』を再読した。日本語で読むのは初めて。 絶版になっている水声社の単行本を買おうかなどうしようかな、と考えていた時に岩波文庫として出版されるというニュースを聞いたので5月まで楽しみに待っていたの…
[El Beso de la Mujer Arana] 人が見た映画や、読んだ小説の話を聞くのが大好きである。 人の記憶の中の映画や小説はとんでもなく面白く感じられる。その後話題に上がった映画を見たり小説を読んだりしても、話を聞いている時ほど面白く感じない。その人の主…
[Pedro Páramo] ラテンアメリカ文学の「はじまり」 「もう一度読み返したくなる」、「必ず二回読みたくなる」と銘打たれて書店に並んでいる本のほとんどは(わりとバレバレな)叙述トリックを用いたミステリー小説である。 そういう説明文をつけていい小説は…
[Eréndira] 私にとって初めてのガルシア=マルケスは『百年の孤独』で、その1冊で「ガルシア=マルケスの沼」に真っ逆さまに落ちていってしまったのだけれど、もしこれからガルシア=マルケスを読む友人がいるとすれば『エレンディラ』を最初に読むように薦…
[Aura y otros cuentos] 「これ、知っている」というのが、フエンテスを初めて読んだ時の感想だった。ちなみに初めて読んだのはラテンアメリカ文学の授業で、「女王人形」と「純な魂」だったと思う。 フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫) 作…
[Todos los Fuegos el Fuego] 『すべての火は火』を初めて知ったのは、ティーンエイジャーだった頃。国語(Literature)の先生とコロンビア出身の友人と話しているときに「今読んでいる本」の話になって、友人が「All Fires the Fireというコルタサルの本を…
[Oryx and Crake] 『侍女の物語』でなんだか調子づいて(読書熱が)、アトウッドの作品を次々読み返している。 『オリクスとクレイク』は、日本語版が出ていることを知ってこちらを読んだ。 MaddAddam(マッドアダム)シリーズ3部作の第1作目。 オリクスとク…
[La Lluvia Amarilla] 私の目の前に広がっているのは、死に彩られた荒涼広漠とした風景と血も枯れてしまった人間と木々が立っている果てしない秋、忘却の黄色い雨だけだ。 2017年に河出文庫にて文庫化され、短編も新たに2つ収録しているということで購入&再…
[The Handmaid's Tale] マーガレット・アトウッドの『侍女の物語』を初めて読んだのはまだ10代の頃だった。 その後大学の授業でも読んだし、社会人になってからも読み返した。 繰り返し読んだので思い入れのある作品ではあるが、どこか自分からは遠い架空の…