トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

2017年出版

『中国が愛を知ったころ』張愛玲(濱田麻矢・訳)

「沈香屑 第一炉香」、「中国が愛を知ったころ」、「同級生」からなる短編選。これでついに、日本語に翻訳されている張愛玲はすべて読み終えてしまったことになる。この先どうやって生きていけばいいの……涙。 *装丁には、近道聡乃さんのイラストレーションが…

Conversations with Friends / サリー・ルーニー: 現代の『夜はやさし』

(カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ) 当ブログでも、キーワード検索される方が一際多いアイルランドの新星、サリー・ルーニー。2017年には、カズオ・イシグロが「色々な人から、素晴らしい作家が現れたと聞いたから。本当にそうなのか、読んで確かめて…

Dear Ijeawele, or A Feminist Manifesto in Fifteen Suggestions / チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

(フェミニスト・マニフェスト 15の提案) アディーチェといえば、昨年の10月9日にPEN ピンター賞を受け取ったばかり。 Chimamanda Ngozi Adichie accepts PEN Pinter prize with call to speak out | Books | The Guardian 丸の内の丸善でペーパーバックを…

Cortazar / Jesus Marchamalo, Marc Torices Robledo

(コルタサル) ずっと読みたかったグラフィックノベル。フリオ・コルタサルの人生を描いた作品。Amazon.esでもGoodreadsでも驚くほど高評価がつけられていて、楽しみに積んでいた。そろそろ二巡目の『石蹴り遊び』をしようと思うので、手始めにこちらを読ん…

Winter / アリ・スミス

(冬) アリ・スミスのSeasonal Quartet、二作目。イギリスを含んだ多くの国では一年の始まりが秋からだから、このシリーズも秋から始まったのだろう。 Winter: from the Man Booker Prize-shortlisted author (Seasonal Quartet) 作者: Ali Smith 出版社/メ…

The Early Stories / トルーマン・カポーティ

(ここから世界が始まる: トルーマン・カポーティ初期短編集) その名の通り、カポーティの初期の作品が収録された短編集。ニューヨーク公共図書館のアーカイブの中から発見され出版の運びとなったらしい。初期とはカポーティが10〜20代前半の頃を指すそうで…

Lincoln in the Bardo / ジョージ・ソーンダーズ

(リンカーンとさまよえる霊魂たち) Lincoln in the Bardo: A Novel 作者: George Saunders 出版社/メーカー: Random House 発売日: 2017/10/16 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る この作品が出版された時、空見でタイトルをLincoln in …

Autumn / アリ・スミス: 本が好きな人にはたまらない1冊

(秋) 日本語訳が発売されたばかりの『両方になる』も読みたいけれど、せっかく秋なので、こちらを。昨年のブッカー賞ショート・リストにノミネートされていた作品だ。 アリ・スミスはこの作品を皮切りにWinter、Spring(2019年3月発売予定)と、四季をタイ…

『ラテンアメリカ怪談集』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス他(鼓直 編)

最近、絶版してしまったモダンクラシックな作品の復刊が相次いでいて嬉しい。『ラテンアメリカ怪談集』は、1990年代に河出文庫にて発売されていたそうなのだけれど、私が読みたいと思った頃にはすでに絶版となって久しかった。Amazonで古本を探してみても、…

The Refugees / Viet Thanh Nguyen(ヴィエト・タン・ウェン)

ピューリッツァー賞のフィクション部門受賞作は、ブッカー賞と同じくどれも読み物として面白いので注目しているのだが、2016年のヴィエト・タン・ウェン『シンパサイザー*1』は個人的に苦手なスパイ小説ということで、手が伸びなかった。 ピューリッツァー賞…

Exit West / モーシン・ハミッド: イスラム文化圏の難民事情・ミーツ・村上春樹なのか

(西への出口) 2017年のブッカー賞にノミネートされていた、この小説。 読んでみたいと書いてから半年経ってしまったが、ようやく読んだ。Penguinのカバーも素敵。オレンジのイスラム建築のドアの向こうに西洋の都市(ロンドン)が見えるというもので、まさ…

『語るボルヘス』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス

[Borges, Oral] 『ボルヘス、オラル』が昨年岩波で文庫化されていた。 1978年の5月から6月にかけて、ブエノスアイレスのベルグラーノ大学(Universidad de Belgrano)にて行われた5回にわたる講演記録である。 語るボルヘス――書物・不死性・時間ほか (岩波文…

Anything is Possible / エリザベス・ストラウト

[何があってもおかしくない] 発売日: 2017年5月4日 ペーパーバック版の発売を待って読み始めたエリザベス・ストラウトの最新作。 むさぼるように読んでしまった。 舞台は前作『私の名前はルーシー・バートン』の主人公ルーシー・バートンの故郷、イリノイ…

『黄色い雨』 フリオ・リャマサーレス: 黄色い雨ってどんな雨?

[La Lluvia Amarilla] 私の目の前に広がっているのは、死に彩られた荒涼広漠とした風景と血も枯れてしまった人間と木々が立っている果てしない秋、忘却の黄色い雨だけだ。 2017年に河出文庫にて文庫化され、短編も新たに2つ収録しているということで購入&再…

『わたしの名前はルーシー・バートン』 エリザベス・ストラウト

[My Name is Lucy Barton] 大好きな作家と同じ時代に生きているというのは、なんて幸せなことか。やきもきしながら新刊を待ち、何日も前からカレンダーを眺めて過ごす。発売されると本屋さんに走ることができるのだから。 そんな、私にとって(そしておそら…

Hunger / ロクサーヌ・ゲイ、そして『スイート・ヴァレー・ツイン』のこと

9-10月の"Our Shared Shelf*1"のお題本はこちら。 ロクサーヌ・ゲイの新作 Hunger: A Memoir of (My) Body 。 Hunger: A Memoir of (My) Body (English Edition) 作者: Roxane Gay 出版社/メーカー: Corsair 発売日: 2017/06/13 メディア: Kindle版 この商品…

2017年 ブッカー賞ショートリスト

こんにちは。トーキョーブックガールです。9月17日にマン・ブッカー賞のショートリストが発表されていました。 The Man Booker Prize 2017 | The Man Booker Prizes 今年残った6冊はこちら! 4 3 2 1, ポール・オースター History of Wolves, Emily Fridlund…

『おやすみ、リリー』 スティーヴン・ローリー

[Lily and the Octopus] こんにちは、トーキョーブックガールです。ずいぶん涼しくなってきましたね! さて、今日はジャケ買いしてしまったこの本の感想を。 おやすみ、リリー 作者: スティーヴン・ローリー,越前敏弥 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ …

Rich People Problems / Kevin Kwan: クレイジーリッチな中国系シンガポール人物語最終章

Crazy Rich Asians*1、China Rich Girlfriend*2に続く、Kevin Kwan(ケヴィン・クワン)による大金持ち・中国系一族シリーズ第3作目! クレイジー・リッチ!(字幕版) 発売日: 2018/11/16 メディア: Prime Video この商品を含むブログを見る 1作目のCrazy Ric…

Theft by finding / David Sedaris: エッセイストによる爆笑日記

発売されてすぐに購入し毎日少しずつ読んだこの本! のお話を今日は書きます。David Sedarisの Theft by Finding: Diaries 1977-2002 。 Theft by Finding: Diaries (1977-2002) 作者: David Sedaris 出版社/メーカー: Little, Brown and Company 発売日: 20…