ひゃ〜、去年と同じことになっちゃった。全然書けなかったので、今年もまとめて、わたしが普段注目している英語文学関係の文学賞をふりかえります。
今年は全然休まずしゃかりき仕事して勉強して育児してきたので、12月は15日くらいから休んでやる!と思っていたのだが、クライアントに投げてから音沙汰がなく死んだと思い込んでいたプロジェクトが水面下で生きていたことが判明し、お祭りみたいにてんやわんやになっている今日この頃。いつも早々に用意するクリスマスプレゼントも、まだ夫の分しか買ってない。
12月は体調を崩しやすい月だから、みなさまも暖かくして、体調に気をつけて過ごしてくださいね。
2020年 Women's Prize for Fiction
Hamnet / Maggie O'Farrell
Hamnet: Winner of the Women's Prize for Fiction 2020 (English Edition)
- 作者:O'Farrell, Maggie
- 発売日: 2020/03/31
- メディア: Kindle版
Girl, Woman, Otherがブッカー賞とダブル受賞なるか?と思ったけれど、受賞はHamnetに。
タイトルの通り、11歳で亡くなったシェイクスピアの息子ハムネットについて、母親であるアグネス(アン・ハサウェイ)の視点から描かれた作品(ハムネットは演劇作品にもなっている)。これは今読んでいます。面白いです。
シェイクスピアといえば、この漫画も読もうかなと思っているところ。
Women's Prizeの「2020年」ページはこちら。
www.womensprizeforfiction.co.uk
2020年 ピューリッツァー賞
『ニッケル・ボーイズ』コルソン・ホワイトヘッド
もう日本語訳も出版されていますね! 訳者は藤井光さん。1960年代のアメリカの少年院(ニッケル)を描いた物語。
コルソン・ホワイトヘッドといえば、『地下鉄道』の映画化はどうなっているのかなと思ったら、もうティーザーが出ていた。南アフリカの女優、Thuso Mbeduさんが主演。これは楽しみ。
その他、ファイナリストはこちらの2作品。
ファイナリスト: The Dutch House / アン・パチェット
The Dutch House: Longlisted for the Women's Prize 2020 (English Edition)
- 作者:Patchett, Ann
- 発売日: 2019/09/24
- メディア: Kindle版
ファイナリスト: The Topeka School / ベン・ラーナー
ジャーナリズムを含むすべての受賞作品はこちら(公式サイト)。
2020年 ギラー賞
How to Pronounce Knife / Souvankham Thammavongsa(スーヴァンカム・タンマヴォンサ)
How to Pronounce Knife: Stories (English Edition)
- 作者:Thammavongsa, Souvankham
- 発売日: 2020/04/21
- メディア: Kindle版
個人的に大好きなGiller Prize(カナダ)。ちなみに今年のJury ChairはMark Sakamotoさん(お父様が日系人の弁護士・作家。家族に関する伝記などを執筆)。ノミネート作品にはエミリー・マンテルの新作、The Glass Hotelも入っていましたね。
今年はラオス難民キャンプ(タイ)出身の詩人・作家、Thammavongsaによる作品が受賞。マーガレット・アトウッドが
A word after word is power.
と評している。
短編集で(短編集が受賞するのはかなり久しぶりかも?)、キャリア半ばで挫折したボクサーがネイリストになる話や、鶏肉加工施設で鶏の羽を抜くという仕事に励む女性、ソープオペラを見ながら英語を学ぶ主婦など、毎日どうにか生き抜いている人々の心に宿る希望、絶望、愛などを描いた作品。
シンプルな言葉を選びながらも、心に残る描写が特徴。
その他、わたしが読みたいと思っているのはこちら。ギラー賞はセレクションがツボで、読みたい作品ばかり増えてしまうのです。
トーキョーブックガールの読みたいリスト(ノミネート作品)
All I Ask / Eva Crocker
これはジャケ買いしてしまいそう。サリー・ルーニーや、アイリーン・マイルズのChelsea Girlsと比較されている作品。
Butter Honey Pig Bread / Francesca Ekwuyasi
デビュー作。双子の姉妹が成長し、母になるという物語を精霊との交流も交えながら描く。
Consent / Annabel Lyon
こちらも双子の姉妹の物語。
Clyde Fans / Seth
なんと漫画家(Cartoonist)のSethのグラフィックノベル(カバーではPicture Novelとなっている)も。著者の近影もかっこよくてしびれます。
ギラー賞の今年のノミネート作品一覧はこちら(公式サイト)。アメリカやイギリスの文学賞がマイノリティに焦点を当てるようになるずっと前から、多様性が特徴的だったこの賞(お国柄)。本当にずっと昔から、ノミネートされる作家はヘテロ男性に偏ることなく、カナダ以外の国出身の作家も多く、英語とフランス語(から英語への翻訳)どちらもありと、懐の広さが心地いい。
2020年 全米図書賞(National Book Awards)
今年は簡単に、フィクションと翻訳と児童文学だけを紹介。
フィクション部門: Interior Chinatown / Charles Yu
Interior Chinatown: WINNER OF THE NATIONAL BOOK AWARDS 2020
- 作者:Yu, Charles
- 発売日: 2020/11/05
- メディア: ペーパーバック
マイノリティによる作品がより多く取り上げられるようになったのか、マイノリティがマジョリティになりつつあるのか。全米図書賞も以前に比べて多様化が進んでいるような気がする。
翻訳文学部門(Translated Literature): Tokyo Ueno Station(JR上野駅公園口)/ 柳美里(著者)、Morgan Giles(翻訳者)
こちらはニュースにもなっていたので、言わずもがなだが、柳美里さんの『JR上野駅公園口』の英語訳が受賞。
去年とはうってかわって、多くの日本文学が英訳された年となったようで、The New York Timesによる2020年のBest Books 100冊にも日本人作家の作品が複数登場していた。
児童文学部門: King and the Dragonflies / Kacen Callender
児童文学というよりYAですね。
全米図書賞の受賞作品一覧はこちら(注: 音楽が流れます)。
それではみなさま、今月もhappy reading!