トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

ギラー賞 受賞作品一覧

 

歴代の受賞作品(1994年〜2020年)

2021年: What Strange Paradise / オマル・エル=アッカド

 

2020年: How to Pronounce Knife / Souvankham Thammavongsa(スーヴァンカム・タンマヴォンサ)

How to Pronounce Knife: Stories (English Edition)

How to Pronounce Knife: Stories (English Edition)

 

  ラオス難民キャンプ(タイ)出身の詩人・作家による短編集で(短編集が受賞するのはかなり久しぶりかも?)、キャリア半ばで挫折したボクサーがネイリストになる話や、鶏肉加工施設で鶏の羽を抜くという仕事に励む女性、ソープオペラを見ながら英語を学ぶ主婦など、毎日どうにか生き抜いている人々の心に宿る希望、絶望、愛などを描いた作品。

 シンプルな言葉を選びながらも、心に残る描写が特徴的。

 

2019年: Reproduction / Ian Williams(イアン・ウィリアムズ)

Reproduction

Reproduction

  • 作者:Williams, Ian
  • 発売日: 2020/07/16
  • メディア: ハードカバー
 

 バンクーバー在住の詩人(兼大学教授)による、ラブストーリー。

 フェリシアとエドガーは病院で出会う。それぞれの母親が同じ病室に入院していたからだ。フェリシアの母親が亡くなったあと、フェリシアは高校を中退してエドガーの母親の介護をかってでる。フェリシアとエドガーは反発しあいながらも、子供をもうけるのだが……。

 ドイツ系の家族に生まれたエドガー、フェリシアがのちに出会うポルトガル系の男性など、様々なバックグラウンドを持つ人を登場させ、家族の意味を問う「ゼイディー・スミス的」でありながらユニークな作品。

 

2018年: 『ワシントン・ブラック』 Esi Edugyan(エシ・エデュジアン)

ワシントン・ブラック

ワシントン・ブラック

 

 「ワシントン・ブラック」とは、主人公/語り手の男性の名前である。奴隷として人生を始め、自由な男として読者に別れを告げる男。物語は1830年のバルバドスから始まり、その6年後のモロッコで幕を閉じる。人生の中のたった6年の物語だが、彼と共に冒険している気分にさせてくれる。

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2017年: Bellvue Square / マイケル・レッドヒル 

Bellevue Square

Bellevue Square

 

  スリラー。ジーン・メイソンにはドッペルゲンガーがいるらしい。本人は遭遇したことがないけれど、周りの人々は目撃している。トロントのケンジントン・マーケットに現れ、チュロスを買ったりカートを引きずって歩いているそうな。

 続けざまに「あなたとそっくりな人がいる」と言われたジーンは、彼女について調べることにする。

 

2016年: Do Not Say We Have Nothing / マドリン・ティエン

Do Not Say We Have Nothing

Do Not Say We Have Nothing

 

 こちらもブッカー賞にノミネートされた作品。1991年、カナダ。10歳のマリーと母親は、天安門事件後に中国から逃げてきた若い女性アイ・ミンを家に迎える。アイ・ミンはマリーに、1960年代から80年代にかけての中国の動向と、それに大きく影響された彼女の家族の歴史を語る。 

  

2015年: 『十五匹の犬』 アンドレ・アレクシス 

 神々のエルメスとアポロは、動物に人間と同じ知能があればどうなるかと語り合う。そして、動物病院に入院している犬たちに人間相当の知能とことばを与えることにする。

 犬たちは病院を逃げ出し、徒党を組んで歩き回るようになる。犬の間にも、新しい考えを拒み昔ながらのやり方を好む者と、変化を喜ぶ者が出てくる。神は空の上から犬が新しい冒険に旅立つのを眺めるが、神の間にも意見の対立が起こり……。

 

2014年: Us Conductors / ショーン・マイケルズ

Us Conductors

Us Conductors

 

 レニングラードへ向かう船の上で、科学者のレヴ・ターメンは愛するクララへ手紙を書く。ロシアでは実験に没頭していたレヴだが、マンハッタンで暮らすようになってからはジャズやスピークイージー、若くて美しいヴァイオリニストのクララに夢中になった。 

 スパイ活動が終了しスターリンが率いるロシアに戻ったレヴは、クララのことが忘れられず……。

 

2013年: Hellgoing / リン・コーディ

Hellgoing: Stories

Hellgoing: Stories

 

 拒食症の人物を宗教から遠ざけ、非難される尼。教師と女生徒の間に生まれた深くて奇妙な絆。夜行性の花嫁。ユーモラスかつ現代的に登場人物を描いた作品。 

 

2012年: 419 / ウィル・ファーガソン

419

419

 

 雪の降る渓谷で車が横転する。名前のない女性がアフリカの砂嵐から逃げ出す。ラゴスでは、犯罪グループがインターネットを漁り、獲物を得ようとする。いくつもの人生が交差し、父を殺された女性が復讐を遂げようとするとき物語が動きだすスリラー。

 ちなみに作者はJETプログラム経験者で、熊本県で数年英語を教えていたんだそうな。

 

2011年: Half-Blood Blues / Esi Edugyan(エシー・エドゥージャン)

Half Blood Blues: Shortlisted for the Man Booker Prize 2011

Half Blood Blues: Shortlisted for the Man Booker Prize 2011

 

 2018年にもギラー賞を受賞したEsi Edugyanの作品。1940年のパリ。キャバレーで一躍有名になったドイツ国民ヒエロニムス・フォークはカフェで逮捕される。 

 50年後、ヒエロとともにバンドをやっていたシドは旧友のチップに促され、ベルリンへ戻る。そこへ舞い込んできた謎の手紙は、ヒエロのその後についての手がかりとなるのだった。

 

2010年: The Sentimentalists / Johanna Skisbrud

The Sentimentalists

The Sentimentalists

 

 ヴェトナム戦争で目撃した光景が忘れられないナポレオン・ハスケルは、今でも悪夢に悩まされている。健康状態が悪くなると、彼の娘たちはノース・ダコタからオンタリオ州のカサブランカへの引越しを進める。下の娘は新しい町で、父や彼の過去について初めて知るようになるのだった。

 

2009年: The Bishop's Man / リンデン・マッキンタイア

The Bishop's Man

The Bishop's Man

 

 ダンカン・マッカスキル神父は人生のほとんどを「エクソシスト」として過ごしてきたが、ある日、自分自身を試す必要が出てくる。過去の改ざんや自身の要求を無視して、生き続けることはできるのか。

 

2008年: Through Black Spruce / ジョセフ・ボイデン

Through Black Spruce: A Novel

Through Black Spruce: A Novel

 

 ウィル・バードはオンタリオの病院で横たわっている。かつては伝説的なパイロットだった。アニー・バードは彼の姪で、ベッドの横に座り彼を見つめる。家族の失踪、殺人、絆、愛について、カナダの自然やドラッグにまみれたマンハッタンのクラブシーンを背景に語られる物語。

 

2007年: Late Nights on Air / エリザベス・ヘイ 

Late Nights on Air

Late Nights on Air

 

 1975年。カナダ北部のラジオ局での仕事を受けたダイドー・パリスは、その美しさと魅力的な声で聞いている人をとりこにする。しかしその後、ガスのパイプラインを引くか否かという論争が地元で沸き上り、ダイドーの働く番組でもリスナーの論争を取り上げるようになり……。

 

2006年: 『ER 研修医たちの現場から』ヴィンセント・ラム

ER 研修医たちの現場から (集英社文庫)

ER 研修医たちの現場から (集英社文庫)

 

 

2005年: The Time In Between / デヴィッド・ベルゲン

The Time In Between: A Novel

The Time In Between: A Novel

 

 チャールス・ボートマンはブリティッシュ・コロンビアのフレーザー渓谷を去り、29年前に若き兵士として戦ったヴェトナムへ戻る。しかしその国は思い出とは全く異なっている。

 チャールスが失踪すると、娘のアダと息子のジョンは彼を置いヴェトナムへ向かう。父を探してダナンの通りから国の奥地へと向かうのだが……。

 

2004年: 『ジュリエット』アリス・マンロー

ジュリエット (新潮クレスト・ブックス)

ジュリエット (新潮クレスト・ブックス)

 

 原題はRunaway。スペインの巨匠・アルモドバル(マンローの大ファンらしい。なんか分かる)が『ジュリエッタ』として映画化もした作品。 

 女性の人生と、転換点となった出来事をマンローらしい少しクールではっとする程美しい描写で綴る短編集。オンタリオやブリティッシュ・コロンビアの田舎町で育つ女たち。母に、娘に、友人に、夫に抱く軽い失望や分かり合えない苦しさ。その哀しみや怒りがとてもリアルで、友人の話を聞いているような気分になる。ジュリエットの三部作が特に秀逸。

ジュリエッタ(字幕版)

ジュリエッタ(字幕版)

  • 発売日: 2017/06/02
  • メディア: Prime Video
 

 

2003年: 『ヴィクラム・ラルの狭間の世界』M・G・ヴァッサンジ

ヴィクラム・ラルの狭間の世界

ヴィクラム・ラルの狭間の世界

 

 日本語訳されたヴァッサンジの作品は本作のみ。   

 

2002年: The Polished Hoe / オースティン・クラーク

The Polished Hoe: A Novel

The Polished Hoe: A Novel

 

 メアリー・マチルダはビムシャイア(バルバドス)島で最も尊敬されている女性だ。メアリーはある日、犯罪を犯したと告白し警察に電話する。それから島に流れるアフリカの血や悲劇が表にふきだす。

 第二次世界大戦後の西インド諸島や過去の奴隷の生活を描いた作品。

 

2001年: Clara Callan / リチャード・B・ライト 

Clara Callan: A Novel

Clara Callan: A Novel

 

 カナダの小さな町で、クララ・カランはニューヨークへ旅立つ姉ノラと別れようとしていた。ヨーロッパではファシズムが巻き起こり、混沌としていた1930年代。性格は全く違うけれども過去を共有してきた姉妹は、変わりゆく社会の中で自分の居場所を見つけようとする。

 ノラはラジオのソープオペラスターとなり、クララは小さな町で自分の夢を追いかける。しかし、物事は思ったようにうまくいかず……。

 

2000年: 『アニルの亡霊』マイケル・オンダーチェ & Mercy Among the Children / デヴィッド・アダムス・リチャーズ

アニルの亡霊

アニルの亡霊

 
Mercy Among the Children: A Novel

Mercy Among the Children: A Novel

 

 Mercy Among the Childrenは、カフカやメルヴィルを彷彿させると絶賛された作品。

 シドニー・ヘンダーソンは、トルストイやマルクス・アウレリウスが好きな少年だ。しかし貧困層出身で大学には行かせてもらえない。誰も彼の将来に期待をかけてくれない。美しいエリーと恋仲になっても、周りからは非難されるばかり。小さな町で、人生に耐えきれなくなったシドニーは……。
 

1999年: A Good House / ボニー・バーナード 

A Good House: A Novel

A Good House: A Novel

 

 1949年、オンタリオ州のストーンブルック。戦争が終わり、世間が希望で溢れている中、ビルとシルヴィアは3人の子供と仲睦まじく暮らしていた。

 その後の50年間で、家族は大きく変わることとなる。シルヴィアの死、息子ポールから生まれた問題児、険しい道のりを選んだダフネ、人生に妥協せざるをえないパトリック。そんな中ビルの後妻マーガレットが家族を繋ぎとめる碇となる。

 

1998年: 『善き女の愛』アリス・マンロー

善き女の愛 (新潮クレスト・ブックス)

善き女の愛 (新潮クレスト・ブックス)

 

 

1997年: Barney's Version / モルデカイ・リッチラー

Barney's Version (Vintage International)

Barney's Version (Vintage International)

 

 映画化もされた、「信頼できない語り手」による作品。バーニー・パノフスキーは親友のブーギーとローマで二人暮らしをしていた。しかし、クララ・チャーノフスキーという浮気者の女性がバーニーによって妊娠したと言い張り、結婚することに。後に離婚するのだが、バーニーはクララも含め3人の女性と結婚・離婚を繰り返すこととなる。また、ブーギーが行方不明になり、警察はなぜかブーギーが死んだものと仮定しバーニーを殺人犯とみなすようになる……。

バーニーズ・バージョン ローマと共に [DVD]

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  • 発売日: 2013/03/29
  • メディア: DVD
 

 

1996年: 『またの名をグレイス』マーガレット・アトウッド

またの名をグレイス(上) (岩波現代文庫)

またの名をグレイス(上) (岩波現代文庫)

 
またの名をグレイス(下) (岩波現代文庫)

またの名をグレイス(下) (岩波現代文庫)

 

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1995年: A Fine Balance / ロイントン・ミストリー

A Fine Balance

A Fine Balance

 

 1970年代のインドを舞台とした物語。政府が「国内緊急事態」を宣言した後、様々なバックグラウンドを持つ4人の登場人物の人生が交わることになる。

 

1994年: The Book of Secrets / M・G・ヴァッサンジ 

The Book of Secrets: A Novel

The Book of Secrets: A Novel

 

 ダルエスサラーム、1980年代後半。ピウス・フェルナンデスという教師は、とある卒業生から英語の日記を受け取る。1913年から1914年にかけてアルフレッド・コービンという男性によって書かれたものだ。植民地省で勤務していたアルフレッドは、マリアムーという若い現地女性と知り合い、心を惹かれる。二人の間に肉体関係はなかったものの、マリアムーが結婚すると、その夫はマリアムーとアルフレッドが婚前に関係を持っていたとして二人を糾弾するようになる……。