トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

『エレンディラ』 ガブリエル・ガルシア=マルケス

[Eréndira]

私にとって初めてのガルシア=マルケスは『百年の孤独』で、その一冊で「ガルシア=マルケスの沼」に真っ逆さまに落ちていってしまったのだけれど、もしこれからガルシア=マルケスを読む友人がいるとすれば『エレンディラ』を最初に読むように薦めたい。

魔術的リアリズム*1やコロンビアらしい土くささなど、この作家らしさが詰まった一冊だからだ。

収録されているのは「大きな翼のある、ひどく年取った男」、「失われた時の海」、「この世で一番美しい水死人」、「愛の彼方の変わることなき死」、「幽霊船の最後の航海」、「奇跡の行商人、善人のブラカマン」、「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」の7編。

エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)

 

 

 

「大きな翼のある、ひどく年取った男」

"Un señor muy viejo con unas alas enormes"

「雨が降り出して三日目」、浜辺へ出かけたペラーヨはひどく不恰好な老人が中庭に横たわっているのを見つける。その老人には異様に大きい翼がついていた…。

突然現れた、言葉の通じない(だがわけのわからない言葉を話す)翼のある老人。

人々の新しい物好き・飽きやすさや、ローマの対応の遅さに対する風刺も効いている。

 

「失われた時の海」 

"El mar del tiempo perdido"

三月になると、夜はバラの芳香が漂ってくるようになった。 

ゴミや死んだ魚で濁った海から、突然バラの香りが漂い始める。海に潜ると、そこには水没した村があり、無数の死者が漂っている。皆穏やかな顔をして(死ぬ前より若く見え)周りには花が浮かんでいる。

こういう「死んだ人が水の中(や空の上)で花に囲まれて暮らしていて、皆穏やかで微笑みを絶やさない」といった描写は各国の民話で見られるものである気がする。

 

「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」

"La increíble y triste historia de la cándida Eréndira y de su abuela desalmada"

十四になったばかりのエレンディラは、子山羊までも自殺してしまうような寂しい土地に祖母と二人で暮らしている。ある日風が吹き始め、燭台が倒れ、祖母とエレンディラの家は火事になり何もかも燃えてしまう。

いつも祖母に従順なエレンディラは、祖母の言うままに数多の男に体を差し出し、お金を受け取るようになる…。

自由になったエレンディラがどこまでも走っていく姿が目に見えるよう。 

 

魔術的リアリズムというが、ガルシア=マルケスが書こうとしているのは彼が祖母から語り聞かされたコロンビアの民話を取り入れた物語である。

それはきっと民族や文化を超えて人間が語り継いできた物語で、だからこそ彼の作品は世界中でベストセラーになったのだろう。

日本人として読んでみても、小説の中の「摩訶不思議なできごと」たちはどこか懐かしい。

みなさま、今日も¡feliz lectura!

 

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*1:マジック・リアリズムって日本では言うのですね。Realismo mágico/magical realismだからマジカル・リアリズムだと長らく信じていた…