トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

Everything, Everything / Nicola Yoon(ニコラ・ユン)

"Love is worth everything. Everything."

「愛こそがすべて。すべて。」

Everything, Everything

Everything, Everything

 

あらすじ 

家から出たことのない女の子、Madeline(マデライン)は18歳。

重度複合免疫不全症(免疫を作るためのT細胞が体内に生成されないため、軽度のウィルス感染でも死に至るという病気)のため、何もかもが殺菌された環境で暮らし、日々接触するのは医師である母親と看護婦のCarla(カーラ)のみ。教育もSkypeで受けており、もっぱら本を読んで有り余る時間をやり過ごしている。

ある日、隣の家に家族が引っ越してくる。Madelineは窓越しに彼らを観察し、年の近い男の子、Olly(オリー)とメールやIM(チャット)でやりとりをするようになる。そして彼の父親がアルコール中毒で母親に暴力をふるっているということや、彼の妹は10代にもかかわらず日常的にタバコを吸っているということを知る。やりとりを続けるうちに恋に落ち、実際に会って話したくなったMadelineとOlly。看護婦のCarlaはそんな2人の気持ちを理解し、Ollyを家に招き入れ、2人は頻繁に会って話すようになる。しかしMadelineの母親がこれに気づき、会うことを禁止してしまう。

Ollyと話すことで世界の広さに気づいたMadelineは、どうしても外に出たくなる。たとえ外に出ることが死につながっているとしても、自分の命を賭けてみようと思う。恋をしたことで、家の中で誰にも会わずに生活を続けていくことに耐えられなくなったのだ。そこで家を抜け出すという一大決心をし、「海で泳ぐ」という夢を叶えるためOllyを誘ってハワイへ旅をするのだが……。

 

レビュー

最近のYA小説の傾向とは?

Everything, Everything は2015年に出版されたNicola Yoon(ニコラ・ユン)のデビュー作。にもかかわらず、アメリカでは大ヒットし既に映画化も決定済み。

それにしても、最近のYA小説は病気をテーマにしたものが多い。

The Fault in Our Stars もそうで、若年性がんの女の子と男の子のラブストーリーだった。

The Fault in Our Stars

The Fault in Our Stars

 

 映画化もされている。邦題は『きっと、星のせいじゃない。』

 Jojo Moyesの Me Before You も然り。

こちらは交通事故で20代にして全身麻痺・車椅子生活を強いられるようになった男性を愛するようになる女性の物語。

Me Before You

Me Before You

 

これも映画化済み。

世界一キライなあなたに(字幕版)
 

なので、同じような感じなのかな〜、なるほど〜と思いながら Everything, Everything を読み進めていたのだが、なんとなんと! 後半でとんでもない方向に話が進み、「えっえっ! ちょっと待って! そっち!?」という驚きを含んだ展開に。

10代の恋愛や、なりたい自分にはなれない葛藤、世界の美しさ、YA小説の楽しさを全て含みながらミステリーの要素もあり……最近読んだYA小説ではダントツに面白かった!

 

多様性が特別視されない、現代らしい(西海岸らしい?)作品

ちなみに作者のNicola Yoonさんは文芸創作を学んだ(おそらく大学で)そうで、この作品の特徴はとてもデビュー作とは思えない練りに練られたプロット。

ストーリーテリングも美しい。

この作品の特徴は、主人公の感情と合わせて出てくる絵やデザイン。

辛い時はページが全て黒く色塗られていたり、眩暈がする時は文章がぐるぐると螺旋になって表されていたり。

デザインは、作者の旦那様David Yoonさんが手がけているそう。

ペーパーバックの裏表紙にNicola Yoonさんの写真が載っていたのだが、笑顔の素敵なアフリカ系の女性。

苗字がYoon(ユン)と中国系なのはどうしてなんだろうと思っていたのですが、旦那様が中国系の方のようだ。

そして、小説も非常にinterracialである。

主人公のMadelineは、お父さんがアフリカ系でお母さんが日系二世。

なのでミドルネームは「フルカワ」!

そして恋に落ちる少年Ollyは海のような青い瞳が印象的なアングロサクソン系。

看護婦のCarlaはメキシコ出身と、非常に多様性に富んだキャラクターたち。

でもそこはほとんどフォーカスされずに話が進むのが非常に西海岸的(ちなみに作者もLA在住)で現代的だなと感じた。

映画のトレーラーを見る限り、俳優さんたちも小説のイメージにぴったりで今から楽しみ! 

 


Everything, Everything Trailer #1 (2017) | Movieclips Trailers

 

追記 2017-07-06

日本語訳が出たそうです!

邦題は『わたしと世界のあいだに』。

Everything,Everything わたしと世界のあいだに

Everything,Everything わたしと世界のあいだに

 

 

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