[Picnic at Hanging Rock]
なんと、50年以上前にオーストラリアで出版された(1967年)この小説が日本語訳されるのはこれが初めてとのこと。すごくいい小説なのにどうして今まで翻訳されなかったのだろうという気もするけれど、何はともあれよかった。
舞台は1900年代のオーストラリア・メルボルン近郊。ブッシュに全寮制の女子学園を作ったアップルヤード校長は、良家の子女を集めることに成功し、名声を築いていた。
その年のバレンタインデーは美しく晴れた(南半球なので真夏)。フランス語のポワティエ先生と数学のマクロウ先生は生徒らを連れ、ハンギングロックまでピクニックに出かけることにする。
真っ白なワンピースに身を包み、真夏だというのにマナーとして羊皮の手袋をはめた少女たちは馬車に乗り込み、ハンギングロックを目指す。
ところがミランダ、マリオン、アーマという美しい上級生3人が、ハンギングロックの石柱(モノリス)のそばで行方不明となってしまい……。
出版当時は本当にあったことなのかなかったのかが論争になったらしいが、それはあまり関係なく、そこから始まる不幸の連鎖が主なストーリーラインだ。とはいえ、オカルト好きな読者としては、やはり心惹かれるものがある。太古の昔からアボリジニに畏れられてきた聖地ともいえる場所、磁場が狂っているかのような記述、そびえたつモノリス、神隠しにあう美少女たち。
なんといっても、オーストラリアならではの自然の美しさが印象的だ。
どこまでも白く爽やかなユーカリの木々、あちらこちらで叫び声をあげる色とりどりのインコ(オーストラリアに住んでいた時、都会でもキバタンやモモイロインコなどのカラフルな大型インコが飛び回っていることに感動したことを思い出した)、少女たちの足元を這う虫や飛び出してくるワラビー。
暑いけれど木陰は適度に涼しく、うとうとしてしまう感覚というものが完璧に再現されていて、日だまりで読んでいるとついついまぶたが重くなる箇所もある。
単純に森といっても、北半球とは全く別物の光景が広がっているというのが、かくも優美な文章で綴られていると、風景の描写だけでも何度も読み返したくなってしまう。
この本は、まだ10代の頃に初めて読んだのだけれど、その時は確かソフィア・コッポラの信奉者のような女友達に勧められたのだった。この、なぜ死んだのか・行方不明になったのか、不明なまま物語が進む感じは『ヴァージン・スーサイズ』に似ているな〜、洋服の感じも似ているな〜、でも何が言いたいのかよく分からないな〜と、精神的に女友達よりずっと幼かった私は思ったことを覚えている。
今読むと、ゴシック小説として比類なき名作だなと感じ入ってしまう。この妖しいまでの美しさを持った文体は癖になる。
映画はまだ観たことがないのだけれど、観てみたい。
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オーストラリアの少女の話、というとLooking for AlibrandiというYA小説が子供の頃好きだったことを思い出して、調べてみたところこちらも日本語訳が出ていた。
これは現代(1990年代くらいかな?)のシドニーを舞台にした女子高生の物語。移民に対する差別や、社会格差を取り扱っていて読み応えがある一押しのYAです。