タヒチ、本当にいいところだった。ボラボラも、モーレアも、タヒチ島も。
フランス領ということもあり食事も美味しかった。
浜辺で食べたポワソン・クリュ(poisson cru / 生のマグロと野菜をココナッツミルクで和え、ライムを大量に絞ったもの)も美味しかったけれど、一番心に残ったのはプレ・ファファ(poulet fafa / "fafa"とはタロイモの葉のことだそうで、もともとは鶏とタロイモの葉を煮込んだもの。今はほうれん草が一般的に使われている)。
東京からだと移動時間が長いかなと思ったが、最近は出張の際トランジットで6時間以上待たされるという不運が続いていたので、意外とあっという間に感じたのだった……。
なんだか久しぶりにデジタルデトックスもできて、すっきりした気分!
タヒチに行く前に読んだ、タヒチが舞台の小説たちです。
- 『月と六ペンス』サマセット・モーム
- 『楽園への道』マリオ・バルガス=リョサ
- 『ノアノア』ポール・ゴーギャン
- 『タイピー』/『オムー』ハーマン・メルヴィル
- 『虹 世界の旅4』吉本ばなな
- 『ありふれた愛じゃない』村山由佳
- Célestine Hitiura Vaite
『月と六ペンス』サマセット・モーム
久しぶりの再読。タヒチといえばゴーギャン。
私は子供の頃からモームの大ファンで、『月と六ペンス』を読んで以来タヒチに憧れていた。
モームは大衆娯楽小説を書いた作家という評価が多いと思うが、「読書を楽しむ」ことを念頭に書かれた作品はどれも彼の技巧が光り読み応えがある。
この作品では、ストリックランドというゴーギャンをモデルとした人物の一生が語られる。主人公の「私」は、イギリスのとあるパーティーでストリックランドと知り合う。証券会社で働いていたストリックランドは、その後家族や仕事を捨て蒸発する。
彼の妻に依頼され、ストリックランドを連れ戻すべくパリに出向いた「私」は彼が絵画に取り憑かれていて、戻るつもりはないことを悟る。
その後ストリックランドは貧しい暮らしの中でタヒチに渡り自身の生涯をかけて絵を描き続ける。
コスモポリタンで、自身も何度も南太平洋を訪れたモームが描いたタヒチは生々しく、どこまでも美しい。
ちなみに、タヒチのガイドブックにはよく「ティアレの香りを嗅いだ者は必ずこの島に戻ってくるとゴーギャンは書いています⭐︎」みたいなことが載っているのだが、これは嘘。ゴーギャンの著書『ノアノア』にも、そのような記述はない。
そう書いたのはモームである。
ティアレ。この島のある白い芳しい花。なんでも彼らに言わせると、一度この花の香りを嗅いだものは、たとえどこの地の果てにさまよおうとも、いつかはきっと再びこのタヒチに惹かれて帰ってくるという。

- 作者: サマセットモーム,William Somerset Maugham,金原瑞人
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/03/28
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『楽園への道』マリオ・バルガス=リョサ
こちらはゴーギャンと彼の祖母である社会活動家・フローラそれぞれの半生を描いた小説。
リョサは圧倒的な筆致と情熱をもって、まるで隣で彼らの人生を見ているかのように、呼びかけるように、語る。その距離感が心地いい。
『月と六ペンス』や『ノアノア』と同じエピソードも何度か登場するものの、全く違う書き方がなされているので驚いたり、真実味を感じたり。
ゴーギャンとフローラは一見正反対のようだが、どちらも自分なりの自由を得ようと羽ばたき、もがき苦しんでいる。
最後のシーンには言葉を失う。次の角に楽園は見つかったのだろうか。

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『ノアノア』ポール・ゴーギャン
ゴーギャン自身によるタヒチ滞在記のような小説。フィクションも大いに含まれていると感じる。
「ノアノア(Noa noa)」とは「いい香り」という意味。ティアレ(タヒチアン・ガーデニア、クチナシの一種)の花の香りの描写が美しく、読んでいるだけで幸せになる。
テフラ(幼い現地妻)との出会いや、彼女の信じる迷信などの話が面白い。
『月と六ペンス』、『楽園への道』と同じくゴーギャンのタヒチでの生活が(しかも彼本人によって)つづられているにもかかわらず、こちらは絶版になっているのが悲しい。
『タイピー』/『オムー』ハーマン・メルヴィル
若い頃、捕鯨船に乗って太平洋を旅したことのあるアメリカ人作家メルヴィルは、南太平洋を舞台とした小説をいくつか残している。
『タイピー』の舞台はマルケサス諸島(タヒチから1,500kmの位置にある島々)。仕事が嫌になった船乗りが脱走し、とある島に一人で上陸する。そこでタイピー族という現地に暮らす人々に出会う。人食い部族ではないかと船乗りは恐怖を抱くのだが、タイピー族は優しく彼を受け入れ、タイピーに伝わる文化を教える。
ちなみにこれはほとんどフィクション。タイピー族は実在した部族であり、メルヴィルが実際に勤務していた船から脱走した時にマルケサス諸島で出会った人々である。
読んでいるだけでわくわくしてくるような物語。
『オムー』は、『タイピー』体験の後日談にあたる。メルヴィルは脱走してタイピー族と時間を過ごした後、オーストラリアの捕鯨船に救出されタヒチ島に向かう。
タヒチ島とモーレア島を舞台としており、当時(19世紀)の両島の様子がよく分かる。
今は絶版になっているようで、Amazonでも見つからないのが残念。
メルヴィルは今では『白鯨』がよく知られているが、初期の短編も非常に面白い。
『代書人バートルビー』はボルヘスが編集した『バベルの図書館』にも入っていましたね。
『虹 世界の旅4』吉本ばなな
『マリカのソファー(バリ夢日記)』、『SLY(エジプト)』、『不倫と南米』に続く吉本ばななの世界の旅シリーズ。彼女自身が訪れた国について小説を書くというプロジェクト(だと思う)で、後半には吉本ばななの日記が読めるのも楽しい。
『虹』の主人公はタヒチ料理のレストランで働く瑛子。母を亡くし、心のバランスを失った彼女は倒れてしまい、レストランで働くことができなくなってしまう。そのため、レストランのオーナーの家で家政婦として働くことになるのだが、徐々に妻子あるオーナーに惹かれていき……。
吉本ばななの作品としては、タヒチという舞台に引っ張られすぎてしまっている感が否めない。が、すべてから逃げるようにして訪れるタヒチの描写は美しい。
『ありふれた愛じゃない』村山由佳
これは友人に「タヒチに行く」と話していた時に、「今ちょうどタヒチが舞台の小説を読んでる!」と言われ(しかも2人から同時に)、気になって購入した一冊。
真奈という32歳の女性が主人公。銀座の老舗真珠店(MIKIMOTOか……)に勤めており、6歳年下の優しい恋人がいる。ある日真珠の買い付けにタヒチへ出張するよう命じられ旅立つが、タヒチで昔付き合っていた男と偶然再会する。あまりに不安定だから愛想を尽かして別れた彼は、タヒチで海の男として活躍していた。という少女漫画のような話だった。
ちなみに、この本をおすすめしてくれた友人は2人揃って真奈のような仕事をしている女性たちだったので、読みたくなったのだろう。
読んではいないものの、これから読みたいと考えているのが
Célestine Hitiura Vaite
というタヒチ出身の作家さんの小説。
どれもタヒチを舞台としたchick litのよう。

Frangipani (Wheeler Large Print Book Series)
- 作者: Celestine Hitiura Vaite
- 出版社/メーカー: Wheeler Pub Inc
- 発売日: 2006/03/08
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それではみなさま、今日もhappy reading!