トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年 国際ブッカー賞ロングリスト

*この記事では「国際ブッカー賞」について書いています。2021年の「ブッカー賞」の記事はこちら(↓)です。 www.tokyobookgirl.com www.tokyobookgirl.com www.tokyobookgirl.com 2021年の国際ブッカー賞ロングリストが発表された。今年も多様な作品がノミネ…

3月に読んだ韓国文学 #koreanmarch

去年に引き続き、インスタでは世界文学読みさんたちが「#koreanmarch」を開催していたので、これ幸いと韓国文学三昧な日々を過ごした。色々な方が読んだ本や積読している本を眺めているだけで、幸せな気分に……。 わたしはといえば、新しいものは購入せずに積…

『Klara and the Sun / クララとお日さま』/ カズオ・イシグロ(土屋政雄・訳)

コロナ禍で両親以外の人の口元(マスクをしていない顔)をほとんど見る機会がないということが幼い子どもの脳に与える影響について、さまざまな国で研究が行われている*1。保育園児の母としては、大きな不安と焦りを感じる毎日だ。マスクをつけていなければ…

2021年 Women's Prize for Fiction ロングリスト

今年もやってきました、Women's Prize for Fictionのロングリスト発表日が。例年通りのスケジュールで嬉しい。新型コロナウイルス感染症の影響がおさまったとは言いがたいが、今年は、その他の文学賞も比較的スケジュール通りに発表されそう。 womensprizefo…

Open Water / Caleb Azumah Nelson: 愛しさも哀しみも怒りも溶け込んだ水

最近、恋愛小説が読みたくてたまらない。けれんみのない恋愛小説を心が求めている。どうしてだろう……と考えをめぐらせ、はたと気づく。これって、バブルの狂騒の時代に吉本ばななの小説が大ヒットしたのと同じ原理なのでは? 物質主義的な時代に辟易した人々…

宝塚・雪組公演が決定した『ほんものの魔法使』(ポール・ギャリコ・著、矢川澄子・訳)

*創元推理文庫で、5月に原作が復刊されるとのこと。Amazonの価格も高騰していたのでよかったです。 ほんものの魔法使 (創元推理文庫) 作者:ポール・ギャリコ 発売日: 2021/05/10 メディア: 文庫 【お知らせ】創元推理文庫5月刊のポール・ギャリコ/矢川澄子…

The Happy Readerに夢中

The Happy Readerなんて、素晴らしすぎるタイトル。この記事を読んでくださっているあなたもわたしも、きっとa happy readerですよね。 これ、ペンギン・クラシックス(Penguin Classics)とFantastic Manが共同で出版している「Bookish Magazine」である。…

トーキョーブックガールの読みたいリスト 2021年の新刊

1月になると、いろいろな新刊情報を眺めてはうきうきしています。さあ、今年もせっせと買い、読み、積もう。 家から出ない生活になり色々と予算が浮くので、その分本はちょっとでも「読みたいかも」と思ったら迷わず買うことにしている。こんなこと言うのも…

Sansei and Sensibility / カレン・テイ・ヤマシタ: 『三世と多感』、日系三世とジェイン・オースティンから「こんまり」、ボルヘスまで

こちら、珍しくAmazonがすすめてくれて購入した本。「なんか違うんだよね〜」が多かったAmazonのおすすめタイトル、最近妙に精度が上がってきた。長い付き合いを経て、やっとわたしのことを理解してくれるようになった!?(キラキラ)と感激したのも束の間…

『冬物語』 シェイクスピア(The Winter's Tale、小田島雄志・訳、松岡和子・訳)

トーマス・C・フォスターによる『大学教授のように小説を読む方法』(矢倉尚子訳)には、「疑わしきはシェイクスピアと思え……」という章がある。 芝居が好き、登場人物が好き、美しい言葉が好き、追い詰められてもウィットを忘れない台詞が好き。……おそらく…

Sisters / デイジー・ジョンソン: 自分たちだけの世界に閉じこもる姉妹

みなさまが「つい買ってしまう」(小説の)テーマやモチーフってなんですか? 『文藝 2020年春夏号』の「源氏! 源氏! 源氏!」特集で、江國香織さんが「姉妹ものが好きで、姉妹と見るとつい買ってしまう」というような発言をされていた。読みながら、「わ…

#januaryinjapan を見てる

2020年は、読書スタイルも色々と変わっていった年だったのだけど、変化の一つはGoodreadsをついにほとんど利用しなくなったことである。 ちなみに日本語での読書管理は長年読書メーターを使用していたが、こちらも数年前にやめてしまった。 どちらも2000年代…

『あの本は読まれているか』ラーラ・プレスコット(吉澤康子・訳)

[The Secrets We Kept] なんて幸せなことでしょう。わたしが読んでいるこの本、わたし以外の人はもうみんな読んでいるなんて。世界文学好きも読んでいるし、ミステリ好きも読んでいるという相乗効果(?)で、普段共通の本の話題がない人とも、「あの本」を…

Little Eyes / サマンタ・シュウェブリン(Megan McDowell訳): あなたは「見る」人? 「見られる」人?

英語訳のタイトルがとてもいい。"I spy with my little eyes..."のLittle Eyes。 そしておそらく、"big brother"をも意識しているのだろうと思われる。『一九八四年』でジョージ・オーウェルが描いた監視社会を、シュウェブリンも描こうとしているから。しか…