トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

『シェリの最後』 コレット

[La Fin de Chéri] 以前『シェリ』を読んだらとても面白かったので、次々にコレットの作品を購入してしまった。『シェリの最後』はタイトル通り、『シェリ』の続編。 結婚してから6年後、30歳を迎えようとするシェリが主人公だ。 シェリの最後 (岩波文庫) 作…

『ダロウェイ夫人』 ヴァージニア・ウルフ

[Mrs Dalloway] どんな本も、出会うタイミングというものがあるのだなと最近とみに感じる。 昨年『100分で名著』で、『赤毛のアン』を紹介していた茂木健一郎さんの話を聞いていたときも、そう実感したのだった。茂木さんは、11歳の時に図書館で『赤毛のアン…

『カルメン・ドッグ』 キャロル・エムシュウィラー: SF+フェミニズム+オペラ+犬!

[Carmen Dog] ネビュラ賞を二度受賞し、フェミニズムSFの書き手として知られたキャロル・エムシュウィラーが亡くなった(2019年2月2日)。 こちらは、表紙に描かれた犬(カルメンよろしく、真っ赤な薔薇を口にくわえた白いワンさん)に惹かれて購入した一冊…

The Diamond as Big as the Ritz / F・スコット・フィッツジェラルド

(リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド) 宝塚歌劇団・期待の98期の一人、瑠風輝さんのバウ主演が決定したのが今年の3月。演目はフィッツジェラルド原作の『リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド』ということでちょっとびっくりした。 フィッツジ…

Dear Ijeawele, or A Feminist Manifesto in Fifteen Suggestions / チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

(フェミニスト・マニフェスト 15の提案) アディーチェといえば、昨年の10月9日にPEN ピンター賞を受け取ったばかり。 Chimamanda Ngozi Adichie accepts PEN Pinter prize with call to speak out | Books | The Guardian 丸の内の丸善でペーパーバックを…

Severance / リン・マー: アポカリプス的オフィス・ノベル

(断絶) [Updated: 2021-01-30] 日本語訳が2021年、発売に。 断絶 (エクス・リブリス) 作者:リン・マー 発売日: 2021/03/25 メディア: 単行本 中国系アメリカ人作家リン・マーのデビュー作Severanceを読んだ。 2018年に出版されるやいなやThe Kirkus Prize*…

2019年のブッカー国際賞はJokha AlharthiのCelestial Bodies / Best Translated Book AwardのShortlistのこと

*この記事は、「ブッカー国際賞」に関するものです。 2019年の「ブッカー賞」ロングリストは、こちらから。 www.tokyobookgirl.com ブッカー国際賞 イギリスの5月21日に発表となったブッカー国際賞、今年受賞したのはJokha AlharthiによるCelestial Bodiesだ…

『ヴェネツィアに死す』トーマス・マン: 美しいものを見ることには価値がある

[Der Tod in Venedig] 「美しいものを見つめることは、魂に作用する」と言ったのはミケランジェロ。 「美しいものを見ることには価値がある」と言ったのは上田久美子先生(宝塚歌劇団)。 『ヴェネツィアに死す』(もしくは『ヴェニスに死す』)というタイト…

On The Come Up / アンジー・トーマス: 『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』作者による待望の第2作目

(オン・ザ・カムアップ) 去年はYAをたくさん読んだけれど、ダントツで面白かったのがアメリカにおける黒人差別とともにゲットーで生まれ育った少女の精神的成長を描いた『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』だった。 ともすれば重くなりがちなトピックスを、90年代…

『黄昏の彼女たち』サラ・ウォーターズ

[The Paying Guests] なんだかとっても久しぶりの恋愛小説。 いまだにThe Night Watchを積んでいるというのに、比較的新しいこちらの作品を手に取ってしまった。 黄昏の彼女たち〈上〉 (創元推理文庫) 作者: サラ・ウォーターズ,中村有希 出版社/メーカー: …

2019年 Women's Prize for Fiction ショートリスト

2019年のWomen's Prize for Fictionショートリストが発表された(イギリス、4月29日)。まだまだと思っていても、あっという間に時が経ってしまうものですね。 Women's Prize for Fictionは何度も名称が変わっていてちょっとややこしいので(オレンジ賞→女性…

『牝猫』コレット

[La Chatte] 学生の頃『青い麦』を読んでもピンとこなかったのに、『シェリ』に開眼して以来次々に読んでいるコレット。 『牝猫』は五月頃から八月までの一夏の物語で、24歳のアランと19歳のカミーユの儚い新婚生活をアランの視点から描いた作品である。 牝…

『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』ジョイス・キャロル・オーツ

[The Corn Maiden and Other Nightmares] Hazards of Time Travelを読んでこちらも読みたくなり、去年出版された河出文庫版を購入。 オーツの短編の日本語訳は、アンソロジーにちょろっと入っている程度だという認識だったので、こうしてまとまって本になっ…

『浮かびあがる』 マーガレット・アトウッド

[Surfacing] 古い本で、情報があまりないので感想を書き記しておこうと思う。 アトウッドの出世作、『浮かびあがる』。もう絶版となっている日本語訳が偶然手に入ったので読んでみた。 浮かびあがる (ウイメンズブックス) 作者: マーガレットアトウッド,Marg…