トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

映画化が決定『ベル・ジャー / The Bell Jar』 シルヴィア・プラス

[The Bell Jar]

It was a queer, sultry summer, the summer they electrocuted the Rosenbergs, and I didn’t know what I was doing in New York.

それはおかしな、蒸し暑い夏だった。ローゼンバーグ夫妻の死刑が執行された夏で、私は自分がニューヨークで何をやっているんだか分からなかった。

10代の頃の自分の読書ログを眺めていたら、The Bell Jarについて「ここ数年読んだ本の中で一番好き」とだけ書いてあった。「オーブンに頭を突っ込んでガス自殺した詩人」シルヴィア・プラスの自伝的小説である。よく『ライ麦畑でつかまえて』と比較される物語でもある。

私が持っているのはこちら(英語版)。 

The Bell Jar

The Bell Jar

 

日本語訳もあるものの、絶版になっているようす。残念だが、映画(下を参照)が公開になったら再度出版されるかもしれない。

ベル・ジャー (Modern&Classic)

ベル・ジャー (Modern&Classic)

 

 

嫉妬と焦燥のニューヨーク

物語の主人公、エスター(Esther)は19歳でボストン出身。

雑誌も買えないような貧しい家庭で育ったが、大学の成績は優秀でイェールに通うボーイフレンドもいる。

『ベル・ジャー』はそんなエスターがファッション誌のエッセイや詩のコンテストで勝ち抜き、ご褒美としてニューヨークの出版社で1ヶ月インターンのようなことをして過ごした夏の描写から始まる。

同じコンテストで選ばれた11人の女の子と一緒にホテル暮らし。人生を謳歌して(I was supposed to be having the time of my life)、何千という女子大生の羨望の的になっているはずなのに気分は晴れない。

エスター以外の女の子は裕福な家庭出身のお嬢様ばかり。

These girls looked awfully bored to me. I saw them on the sunroof, yawning and painting their nails and trying to keep up their Bermuda tans, and they seemed bored as hell. I talked with one of them, and she was bored with yachts and bored with flying around in airplanes and bored with skiing in Switzerland at Christmas and bored with the men in Brazil.

この女の子たちはひどく退屈しているように見えた。屋上であくびをしたり、ネイルを塗ったり、バミューダ島で焼いた肌を小麦色に保とうとしていたけれど、死ぬほど退屈しているようだった。そのうちの1人と話したが、彼女はヨットにも、飛行機で飛び回ることにも、クリスマスにスイスでスキーをすることにも、ブラジルの男たちにも飽き飽きしていた。

「こういう子たちを見ていると気分が悪くなる。羨ましすぎて口も聞けない(Girls like that make me sick. I’m so jealous I can’t speak)」とはエスターの言葉。

19年間、いい点数を取ることだけを目標に田舎で暮らしてきたエスターにとってニューヨークとは自分の限界や挫折を知る場所でもあった。

 

絶望

インターンを経て実家に戻ったエスターを待っているのは、ある意味自分を裏切ったボーイフレンド(自分と同じくヴァージンだと思っていたのに実は違ったのでショックを受けている)や受けたかった講座の不合格通知。

繊細なエスターは人生が終わってしまったように感じ精神のバランスを崩していく。

どこに行っても何をしても、まるでベル・ジャーの中で一人座っているよう。

Because wherever I satー on the deck of the ship or at a street café in Paris or Bangkokー I would be sitting under the same glass bell jar, stewing in my own soul air.

どこに座っていたとしてもー船のデッキでもパリやバンコクのストリート・カフェでもー私はいつも同じガラスのベル・ジャーに閉じ込められている。自身の気持ちにむせながら。

 

若者の抱える将来への不安

ちなみに初めて読んだのは、主人公のエスターと同じく19歳の頃。

私自身も、大学を卒業した後の将来に漠然と不安を感じていたこともあり「分かる分かる!」と感じた覚えがある。

男性に対してのエスターの考えにも深く共感した。1950年代の話なので、女の子にとっての人生の選択肢は現代とは比べ物にならないほど狭かっただろう。

And I knew that in spite of all the roses and kisses and restaurant dinners a man showered on a woman before he married her, what he secretly wanted when the wedding service ended was for her to flatten out underneath his feet like Mrs. Willard's kitchen mat. 

結婚する前は、男は女に散々薔薇の花束やキスを送ったり、レストランでのディナーに連れ出したりするけれども、結婚式が終わってしまえば女は自分の足の下で平らになるべきだと密かに思っているのだ。ウィラード夫人のキッチンマットみたいに。

「だから絶対に誰とも結婚したくない」とエスターは考える。ボーイフレンドのバディにプロポーズされると固まってしまう。

でも大人になった今読むと、「青い」ところに突っ込みたくなってしまう部分も多々ある。「もう少し時間が経てば、自分を理解してくれる人と出会えるよ」、「そんなに全てを難しく考えることはないんだよ」とエスターを励ましたくなる。悲しいのは、小説の中ではエスターが乗り越えた心の病を作家であるプラスが乗り越えられなかったということだ(プラスはこの小説を書き上げた1ヶ月後に自殺している)。

 

映画化

『ベル・ジャー』は映画化される予定がある。撮影はすでに終了していて、編集段階に入っているはず。監督はこれがデビュー作となるキルステン・ダンストで、エスター役にはダコタ・ファニングがキャスティングされているらしい。

キルステン・ダンストが監督デビュー 主演にダコタ・ファニング : 映画ニュース - 映画.com

『ベル・ジャー』自体の靄のかかったような雰囲気や大人の社会へ足を踏み入れる少女の戸惑い・絶望はどことなくソフィア・コッポラが好きそうな題材だなとも思えるし、『ヴァージン・スーサイズ』とどこか重なる部分もあるのでキルステンが監督でダコタが主演というのはすごく楽しみ。

シルヴィア・プラスはキルステン・ダンストによく似ているなとも思うのですけれど。

(下: Poetry Foundationより)

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金髪の美女ドリーンは誰が演じるのかな?個人的にはクリステン・リッターのイメージがある(黒髪だけど)。

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これとは別に、シルヴィア・プラスの人生を描いた『シルヴィア』という映画もあって、観てみたいなと思っているところ。 

シルヴィア [DVD]

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2014年にはメグ・ウリッツァーがBelzharというYA小説を出版しているのだが、これは学校でプラスの『ベル・ジャー』を読むことになり、それについて日記を書き始めた高校生がBelzhar(ベルジャー)という不思議な世界に迷い込み、死んだはずの元彼と再会する…というストーリーらしい。これも読んでみたい。

Belzhar (English Edition)

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それではみなさま、今夜もhappy reading!

 

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