トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

Penguin Booksの新しいシリーズPenguin Modernが可愛い

先日久しぶりに神保町パトロールをして、仕上げの三省堂で見つけたPenguin Booksの新シリーズ(2018年発売)。

文庫サイズの可愛いPenguin Modernです。薄い青緑のカバーも美しくて思わずジャケ買い。シールもしくはブックマークのおまけつき。

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三省堂には10-15種類ほどしかなかったように記憶しているのだけれど、出版されているのは全部で50作。もともとあったPenguin Modern Classicsシリーズの革新性を体現するような小作品が選ばれているとのこと。それぞれ1ポンドで、お値段も日本の文庫並みもしくはそれ以下。

https://www.penguin.co.uk/articles/book-talk/series/penguin-modern/

詩、エッセイからフィクション、手紙まで多岐にわたる作品群は以下のとおり。

 

1. Letter from Birmingham Jail, Martin Luther King, JR. 

 『バーミングハム刑務所からの手紙』マーティン・ルーサー・キング・ジュニア

2. Television was a Baby Crawling Toward That Deathchamber, Allen Ginsberg 

 アレン・ギンズバーグ

3. The Break-Through, Daphne Du Maurier 

 『いま見てはいけない(第六の力)』ダフネ・デュ・モーリア

4. The Custard Heart, Dorothy Parker

 未訳、ドロシー・パーカー

5. Three Japanese Short Stories ("General Kim", "Behind the Prison", "Closet LLB"), Akutagawa and Others

 『金将軍』芥川龍之介

 『荷風小説 2(監獄署の裏)』永井荷風

 『屋根裏の法学士』宇野浩二

6. The Veiled Woman, Anaïs Nin

 アナイス・ニン

7. Notes on Nationalism, George Orwell

 『ナショナリズムについて』ジョージ・オーウェル

8. Food, Gertrude Stein 

 『食べ物』ガートルード・スタイン

9. The Three Electroknights, Stanislaw Lem 

 『短編ベスト10(三人の電騎士)』スタニスラフ・レム

10. The Great Hunger, Patrick Kavanagh

 未訳、パトリック・カバナ

11. The Legend of the Sleepers, Danilo Kiš

 『死者の百科事典(眠れる者たちの伝説)』ダニロ・キシュ

12. The Black Ball, Ralph Ellison

 『ラルフ・エリソン短編集(黒いボール)』ラルフ・エリソン

13. Till September Petronella, Jean Rhys

 ジーン・リース 

14. Investigations of a Dog, Franz Kafka

 『ある流刑地の話(ある犬の探求)』フランツ・カフカ

15. Daydream and Drunkenness of a Young Lady, Clarice Lispector

 未訳、クラリッセ・リスペクトール

16. An Advertisement for Toothpaste, Ryszard Kapuściński

 *1リシャルト・カプシチンスキ

17. Create Dangerously, Albert Camus

 アルベール・カミュ

18. The Vigilante, John Steinbeck

 『長い盆地(自警団)』ジョン・スタインベック

19. I Have More Souls Than One, Fernando Pessoa 

 『ペソア詩集*2フェルナンド・ペソア

20. The Missing Girl, Shirley Jackson 

 『なんでもない一日(行方不明の少女)』シャーリイ・ジャクスン

21. Four Russian Short Stories ("Kunak" by Galina Kuznetsova, "A Miracle" by Yuri Felsen, "The Murder of Valkovsky" by Nina Berberova, "Requiem" by Gaito Gazdanov), Gazdanov and Others 

 未訳、ガリナ・クズネツォワ

 未訳、ユーリ・フェルセン

 未訳、ニーナ・ヴェルベローワ

 未訳、ガイト・ガズダーノフ

22. The Distance of the Moon, Italo Calvino 

 『レ・コスミコミケ(月の距離)』イタロ・カルヴィーノ

23. The Master's Tools Will Never Dismantle the Master's House, Audre Lorde

 未訳、オードリー・ロード

24. The Skeleton's Holiday, Leonora Carrington

 レオノーラ・キャリントン

25. The Finger, William S. Burroughs

 未訳(Interzone、ウィリアム・バロウズ

26. The End, Samuel Beckett 

 『サミュエル・ベケット短編小説集(終わり)』サミュエル・ベケット

27. New York City in 1979, Kathy Acker

 キャシー・アッカー

28. Africa's Tarnished Name, Chinua Achebe 

 未訳、チヌア・アチェベ

29. Notes on 'Camp', Susan Sontag 

 『反解釈(キャンプについてのノート)』スーザン・ソンタグ

30. The Red Tenda of Bologna, John Berger

 ジョン・バージャー

31. The Gigolo, Françoise Sagan

 『絹の瞳(ジゴロ)』フランソワーズ・サガン

32. Glittering City, Cyprian Ekwensi

  未訳、シプリアン・エクウェンシ

33. Piers of the Homeless Night, Jack Kerouac

 『孤独な旅人(故郷なき者達の夜の桟橋)』ジャック・ケルアック

34. Why Do You Wear a Cheap Watch?, Hans Fallada

  ハンス・ファラダ

35. The Duke in His Domain, Truman Capote

 未訳、トルーマン・カポーティ

36. Leaving the Yellow House, Saul Bellow

 『黄色い家を残して』ソール・ベロー

37. The Cracked Looking-Glass, Katherine Anne Porter

 キャサリン・A・ポーター

38. Dark Days, James Baldwin

 ジェームズ・ボールドウィン

39. Letter to My Mother, Georges Simenon

  未訳、ジョルジュ・シムノン

40. Death the Barber, William Carlos Williams

  ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ

41. The Problem that Has No Name, Betty Friedan

  未訳、ベティ・フリーダン

42. The Dialogue of Two Snails, Federico García Lorca

 『組曲集(かたつむり)』フェデリコ・ガルシーア・ロルカ

43. Of Dogs and Walls, Yuko Tsushima

 『津島佑子コレクション5 笑いオオカミ(犬と塀について)』津島佑子

44. Madame du Deffand and the Idiots, Javier Marías

 未訳、ハビエル・マリアス

45. The Haunted Boy, Carson Mccullers

 未訳、カーソン・マッカラーズ

46. The Garden of Forking Path, Jorge Luis Borges 

 『伝奇集(八岐の園)』ホルヘ・ルイス・ボルヘス

47. Fame, Andy Warhol

 アンディ・ウォーホル

48. The Survivor, Primo Levi

 プリーモ・レーヴィ

49. Lance, Vladimir Nabokov

 『ナボコフの一ダース(ランス)』ウラジミール・ナボコフ

50. Why I Am Not Going to Buy a Computer,*3 Wendell Berry 

 未訳、ウェンデル・ベリー

 

セレクションが面白い。

5の日本短編集に関しては明らかに、村上春樹の翻訳者としても著名なジェイ・ルービン氏による翻訳&選出でしょうね!

英語圏で読まれていない作品&作家を選んだのか。

あまりに虚をついた興味深い作品群なので、自分だったら何を選ぶかな…とつい考えてしまう。稲垣足穂の短編、宇野千代の『生きていく私』から一章、池波正太郎・開高健・田辺聖子による日本のお家芸(?)グルメエッセイ、九鬼周造の『いきの構造』など、どうだろう。

43の津島佑子(太宰治の娘)の作品は海外で人気を誇っているそうだが、『犬と塀について』が英訳されるのはこれが初めてだとか。アイヌやイエズス会について小説を書いた作家というイメージがあるものの未読。

全体的に結構マイナーというか、それぞれの著者の「代表作」ではない珠玉の作品が選出されているのが特徴。

たとえば35のカポーティは小説ではなくエッセイ。しかも『カメレオンのための音楽』などにも収録されていない、1957年のThe New Yorkerに掲載されたエッセイだ(実は今もオンラインで読める。The Duke in His Domain | The New Yorker)。映画『サヨナラ』の撮影のために京都を訪れていたマーロン・ブランドを都ホテルでインタビューした様子が綴られている。当時の日本の様子もよく分かるし、スターダムを駆け上がったマーロン・ブランドの美しさが的確に描写され、演技に対する姿勢も聞き出している。インタビュアーとしてのカポーティの腕はもちろん、のちに発表されるノンフィクション『冷血』にも活かされることとなる観察眼が光る。

3のデュ・モーリアは、お得意のゴシックロマン/サスペンス的な作品ではなくなんとSF。ロンドンから荒涼とした田舎の研究所へ派遣された主人公は、所長らとともに人間の心身のエネルギー(第六の力)を死後の人間から取り出そうと試みる。媒体として使われるのは発達障害の女の子。背筋が寒くなるような物語。

  

この中で私が以前読んだことがあるのは8作品(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、芥川龍之介/永井荷風、フェルナンド・ペソア、フランソワーズ・サガン、トルーマン・カポーティ、フェデリコ・ガルシーア・ロルカ、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの7冊)。小説だと「ほとんど全作品を読み尽くしているほど好きな作家」ばかりなのが特徴で、埋もれがちな名作を拾い上げているという印象を持った(比較的有名な作品が選出されているボルヘスは例外だが)。

 

『レイチェル』と『レベッカ』しか読んだことがないなと思って購入してみたデュ・モーリアが面白かったので、他にもいくつか購入する予定。可愛いし50P程度でさっと読めるし、何冊も揃えてしまいそう。

 

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*1:もしかすると『サッカー戦争』に収録されているかもしれない。ご存知の方いらしたら教えてください。

*2:こちらに収録されていたように思うが、手元になく記憶が定かではない。

*3:エッセイ集What are people for?より。