トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

Milk and Honey / ルピ・クーア

(ミルクとはちみつ)

 ルピ・クーア(日本語表記はカウルとされていることもある。英語での発音は"core"に近い感じ)のことを知ったきっかけは、彼女がインスタグラムにあげた写真だった。

2015年に投稿された、「服に経血のしみがついた女性の後ろ姿」の写真。アーティストの顔も持つクーアの作品である。

courrier.jp

 

ルピ・クーアと「生理解放運動」

 写真はまたたくまにインスタグラムによって削除され、「ガイドラインに反した写真」であると警告を受けたクーアは、このようにコメントする。

thank you @instagram for providing me with the exact response my work was created to critique. you deleted a photo of a woman who is fully covered and menstruating stating that it goes against community guidelines when your guidelines outline that it is nothing but acceptable. the girl is fully clothed. the photo is mine. it is not attacking a certain group. nor is it spam. and because it does not break those guidelines i will repost it again. i will not apologize for not feeding the ego and pride of misogynist society that will have my body in an underwear but not be okay with a small leak. when your pages are filled with countless photos/accounts where women (so many who are underage) are objectified. pornified. and treated less than human. thank you. ⠀⠀⠀⠀⠀ ⠀

 この数年前から、北米では女性による、女性のための生理用品を販売するスタートアップが急増していたこともあり、記事の通り「生理解放運動」、つまり忌むべきもの・人前で話してはならないことだった生理に関して積極的に発言し、女性自身がより快適に生理期間を過ごすための運動の一環として注目されたのだった。

ちなみに私も、2013年にThe Period Storeが創設された際、「どうして、生理をテーマにしたお店やサイトってなかったんだろう!」と目からうろこ状態になり、素晴らしいサイトにとりこになった。

The Period Storeは間違いなく、生理関連用品やサービスのスタートアップの走り。

ニューヨーク在住のイラストレーターとパリ在住のヘアスタイリストによって考案されたネットショップで、毎月「生理を快適に過ごすため」のパッケージを自分で作成して、届けてもらえるというもの(アメリカ&カナダのみ)。

オーガニックコットン製のタンポンやナプキンが豊富に揃い、自分のお気に入りの商品がThe Period Storeの商品リストに入っていない場合は、問い合わせすれば含めてもらえるという。

生理用品のみならず、生理期間を楽しくリラックスして過ごすためのアロマやネイルグッズ、お茶まであるのだ。

「生理はいやだ、早く終わって欲しい」ではなくて、「今月も頑張ってるね、ありがとう」と体をいたわりながら過ごす期間を作る。

その発想の転換が新鮮で、私にとっては本当にground-breakingな発見だった。

theperiodstore.com

それ以降も、Thinx(ナプキンいらずの生理用ショーツ。Amazonでも購入可能)やCora(オーガニックコットン製のタンポン定期宅配サービス、こちらもAmazonで購入可能)など多くの女性による女性のためのスタートアップ企業が成功を収めている。

 

Milk and Honey

 だいぶ話がそれてしまったけれど、そんなルピ・クーアのMilk and Honey

7-8月のOur Shared Shelf課題本となっていたので、早速読んでみた。

Milk and Honey

Milk and Honey

 

とてもシンプルな言葉で綴られる、女性として生きることの痛み(the hurting)、愛(the loving)、別れ(the breaking)、癒し(the healing)。

詩集というよりは、女の子の言葉集という感じ。

性暴力被害を受けた女性の再生のきっかけになるような言葉もあれば、娘を持つ父親(と、娘に対する態度)への警告もある。

すごく淡々としていて、彼女の言葉と同じくらい簡素なタッチのイラストがついていて、たくさんの余白からも気持ちが伝わる。

自分を大切にすることについての記述が多いので、これはぜひ10代の女の子に読んで欲しいと感じた。というよりも、大人の女性が読んでも面白くないかも。ただ、大人になってから読むと、若かりし頃の間違った恋愛を振り返ることができていいかもしれない。 

the lovingでは、素晴らしい恋や愛についても語られる。

妊娠している母について、父が"お母さんは、地球上で一番神に近い存在になったんだよ"と言ったという話。4歳だった著者は、「全宇宙がお母さんの足元にある」気がしたとか。

「自分の息子はこういう風に育てたい」と思えるような男の人と恋をしなさい、とお母さんが言ったというくだりも。

ちなみにルピ・クーアは現在もインスタグラム上で作品を発表し続けている。

こちらを確認して、「いいな」と思ったら購入するのがおすすめ。

www.instagram.com

 

 

www.tokyobookgirl.com

 

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