トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

2018年のブッカー賞はアンナ・バーンズのMilkman

イギリスの10月16日に発表になった2018年のマン・ブッカー賞。受賞したのはアンナ・バーンズのMilkmanだった。

北アイルランド出身の作家がブッカー賞を受賞するのは初めてとのこと! ちなみに女性作家が受賞するのは2013年のエレノア・カットン以来5年ぶり。

Milkman (English Edition)

Milkman (English Edition)

 

 

Milkman あらすじ&レビュー

Milkmanは、とある町で生まれ育った18歳の女の子を主人公に据えた物語。名前は明らかにされず、姉と妹からは"middle sister"と呼ばれ、付き合っているんだかいないんだか微妙な関係の男の子からは"maybe-girlfriend"と呼ばれ、古くからの友人には"longest friend"と呼ばれる。

小うるさい母親に「付き合っているような関係の男の子がいる」と知られたくない彼女は、あまり自分について喋らないようにしているのだが、それが裏目に出てなぜか"Milkman"と呼ばれている中年男性と交際しているのだと町中に噂されるようになってしまう。Milkmanは実際に彼女に好意を抱いているらしく、しつこくつきまとうのだが、異なる宗教を信じる人々の間で争いが絶えない町の有力者だったことから、彼女もむげにできず追い詰められていく……。

著者の出身地であるベルファストや、北アイルランド問題を背景に描かれた作品。

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ブッカー賞のChair of judgesを務めたKwame Anthony Appiahは本作品について、こうコメントしている(Milkman | The Man Booker Prizesより)。

'The novel delineates brilliantly the power of gossip and social pressure in a tight-knit community......Burns draws on the experience of Northern Ireland during the Troubles to portray a world that allows individuals to abuse the power granted by a community......Yet this is never a novel about just one place or time.'

 

「本作品は結び付きの強い地域社会においてゴシップや社会的抑圧が持つ力を鮮やかに描いている……[略]……バーンズは北アイルランド問題が起こっていた当時の経験をもとに、地域社会によって与えられた力を乱用する人々について書いた……[略]……しかしこの小説が提起する問題は、決して特定の場所や時代に限られるものではない」

 

アンナ・バーンズについて

アンナ・バーンズはベルファストに生まれ、カトリックの一家に育った作家。1987年にロンドンに住まいを移し、北アイルランド問題をテーマにした作品を発表している。

寡作な作家であり、デビュー作No Bonesが発表されたのが2001年なのだが、作品はMilkmanを含め4作のみ。

No Bonesはベルファストの人々の日常を描ききっているということで、ジェイムズ・ジョイスの『ダブリンの人びと(ダブリナーズ)』と比較されることも多いそう。

No Bones

No Bones

 
Little Constructions

Little Constructions

 
Mostly Hero (English Edition)

Mostly Hero (English Edition)

 

 

2018年ブッカー賞についての考察

もともと英連邦、アイルランド、南アフリカ、ジンバブエの作家による英語で書かれた作品のみがエントリーされていたものの、2014年から「英語で書かれた小説」が選考対象となったブッカー賞。ポール・ビーティー、ジョージ・ソーンダーズとアメリカ人作家の受賞が続いたこともあり、今年こそはUKの作家が受賞するのではとも思ったし、そろそろ女性作家が受賞するのではとも思ったけれど、「まさに」だった。もちろん、ブッカー賞ジャッジたちはそういうバランスを考慮するというよりも、優れた作品を選ぶということに心を砕いていると思うが。

 個人的にはカナダ人作家Esi EdugyanによるWashington Blackの受賞を願っていたのだけれど残念……。過去のブッカー賞受賞作品とは毛色が違うものの、ブッカー賞ジャッジの琴線に触れるような技術も駆使して書かれていたとは思ったが。Edugyanはまだ40代前半と若く、今後より多くの素晴らしい作品を生み出してくれることだろうことも楽しみ!

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積ん読解消したいな

今年の一大イベントの終わりとともに、読書の季節が始まる。私は積ん読解消に努めます!

というのも、未だに2017年ブッカー賞を受賞したジョージ・ソーンダーズのLincoln in the Bardoを積んだままにしているから……。なんと日本語訳ももう出ていた。

そういえば2006年のショート・リストに選ばれていたサラ・ウォーターズのThe Night Watchも、イギリスに出張した際に購入して以来積んだまま。もう数年間(汗)! これも読みたい。

は〜、読みたい本はどんどん増えるのに、1日はたったの24時間。

 

みなさま、今日もhappy reading!

 

2018年のブッカー賞ロング・リスト - トーキョーブックガール

2018年のブッカー賞ショート・リスト - トーキョーブックガール