トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

Hunger / ロクサーヌ・ゲイ、そして『スイート・ヴァレー・ツイン』のこと

9-10月の"Our Shared Shelf*1"のお題本はこちら。

ロクサーヌ・ゲイの新作 Hunger: A Memoir of (My) Body

Hunger: A Memoir of (My) Body (English Edition)

Hunger: A Memoir of (My) Body (English Edition)

 

Every body has a story and a history. Here I offer mine with a memoir of my body and my hunger. 

という言葉から始まるエッセイ。 

少女の頃の集団レイプ体験をきっかけに過食を始めるようになったというゲイ。

自分の身を守るため体重を増やし続けた。男の子が魅力的ではないと思う体型になったことを安全に感じたという。

それでも思春期を過ぎてからは、太っていることで受ける差別や通りすがりに投げつけられる侮辱的な言葉、そして日々の自分との戦いに苦悩する日々。

ハイチ系移民の厳格な両親にとって理想的な娘でいられなかったというプレッシャーから、彼女はイエール大学に入学したもののドロップアウトしてしまう。

痩せたい。普通の体型になりたい。でも、自分自身を罰するかのように食べ続けてしまう。

どのサイズであっても、自分のことを愛したい。でも、愛せない自分に罪悪感を感じる。

『バッド・フェミニスト』同様、矛盾を抱えた自身の心の内を赤裸々に綴った作品だ。

I know what it means to hunger without beinig hungry. My father believes hunger is in the mind. I know differently. I know that hunger is in the mind and the body and the heart and the soul.

オプラほど影響力も財力もある女性が、ダイエットしないと幸せになれないというメッセージを打ち出してくる。ダイエット番組が、「痩せて周りの人々を見返そう」と呼びかけてくる。太っているということは、それほど軽蔑されることなのか。

自分に自信を持とうと頑張っても、家から一歩外に出れば、そんな心持ちはいとも簡単に打ち砕かれてしまう。

「自分の体をコントロールする方法」として、この両腕のタトゥーについても語っている。 

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外見で差別される、プレッシャーを受けるという面においては、アメリカも日本も(韓国も、な気がする。ミス・コリア候補全員が同じ顔をしているのを見てそう感じた。)、同じくらい生きにくい国なのではないかと思う。 

 

『バッド・フェミニスト』にもあったが、『スイート・ヴァレー・ハイ(スイート・ヴァレー・ツイン)』への言及があって見入ってしまった。

At the time I was, and would continue to be for many years, obesessed with the Sweet Valley High books. I read them voraciously because I was nothing like Elizabeth and Jessica Wakefield or even Enid Rollins.

 

その頃、そしてその後何年も、私はスイート・ヴァレー・ハイ・シリーズに夢中になっていた。貪るように読んだものだ。私はエリザベスやジェシカ・ウェイクフィールドはもちろん、イーニッド・ロリンズからも、程遠かったから。(訳:tokyobookgirl)

いや〜、懐かしい。私も少女の頃大好きだったシリーズ。

日本では高田明美がイラストを描いていて、それがまためちゃくちゃ可愛かった。

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賢く落ち着いたエリザベスと、元気いっぱいでいたずら好きなジェシカは双子。二人の高校で起きる事件を描いたシリーズは何作も出ていて、日本では20冊そこそこしか刊行されなかったものの、アメリカでは100冊を超える大シリーズとなっていた。

そう、これは高校(ハイスクール)におけるカースト上位者の華やかな日常を描いた物語で、主人公は二人ともブロンドで美しく、スポーツマンのボーイフレンドがいる。

フェミニズムからは程遠いお話である。

こういうものも好きだけれど、フェミニストでもあるという矛盾を書いたエッセイが『バッド・フェミニスト』なら、こうありたいけれどこのお話とは懸け離れた青春を送った自分を肯定したいという思いから書かれたエッセイが Hunger である。

それでも、ゲイの文章のそこかしこから、「夢みる少女向け小説が大好きだった女の子」が見え隠れしているのが感じられるのだ。

But. This is what I did. This is the body I made. I am corpulent- rolls of brown flesh, arms and thighs and belly

ちょっと「折原みと*2」的でもある。

 

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*1:"Our Shared Shelf"とは…女優のエマ・ワトソン主催の、Goodreads上のバーチャルブッククラブ。Goodreadsのアカウントを持っている方なら誰でも参加可能です!エマの国連での活動(UN Women)から生まれたブッククラブなので、お題本は女性の生き方を考える・フェミニズム関連の本が多いのが特徴。

過去のお題本はこちらから。

www.tokyobookgirl.com

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*2:日本における『スイート・ヴァレー』的少女向け小説を書いた作家。「でも。わたしは彼のことが忘れられなかった…。ずっと。」みたいな文章が特徴的。