トーキョーブックガール

世界文学・翻訳文学(海外文学)や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

ギラー賞

火星小説が輝いた2023年(Sea Change、Girlfriend on Mars)

SF小説によく用いられるモチーフがいわゆるliterary fictionに繰り返し登場するようになると、テクノロジーが社会に浸透したことを感じる。 たとえば、AIが登場するイアン・マキューアンの『恋するアダム』が出版されたのは2019年、そしてカズオ・イシグロの…

秋の海で読みたかった本

夫と2人で旅行していた頃、スーツケースには何冊も本を入れていったものだ。飛行機や電車で「読むものがなくなった」と言うことの多い夫のために、彼が好きそうなエッセイまで見繕って持っていった。 いつの間にやら犬と赤ちゃん(ヒト)が家族に加わり、今…

最近読んだ「犬」小説

どうやら、犬を飼うDNAというものがあるらしい。犬とヒトとの共存の秘密は、遺伝子に刻まれているらしい(英国とスウェーデンの研究による)。 人生の大半を犬と暮らしている人間としては、わかるわかるーと頷いてしまう。家族の古いアルバムを開けば、父方…

2021年のWomen's Prize for Fictionは『Piranesi』&ギラー賞ロングリスト発表

今年のWomen's Prize for Fiction(女性小説賞)の受賞作が発表に。スザンナ・クラークのPiranesiでした。 Piranesi: WINNER OF THE WOMEN'S PRIZE 2021 (English Edition) 作者:Clarke, Susanna Bloomsbury Publishing Amazon 18世紀のイタリアに生きた画家…

2020年のWomen's Prize、ピューリッツァー賞、ギラー賞、全米図書賞

ひゃ〜、去年と同じことになっちゃった。全然書けなかったので、今年もまとめて、わたしが普段注目している英語文学関係の文学賞をふりかえります。 今年は全然休まずしゃかりき仕事して勉強して育児してきたので、12月は15日くらいから休んでやる!と思って…

ギラー賞 歴代の受賞作品

もともと別の記事にくっつけていたのですが、自分が探しにくかったので、こちらに。歴代の受賞作品は以下のとおり。意外と日本語に訳されていない。 歴代の受賞作品(1994年〜2019年) 2021年: What Strange Paradise / オマル・エル=アッカド 2020年: How …

2019年のWomen's Prize、ピューリッツァー賞、ブッカー賞、ギラー賞、全米図書賞

全然ブログ投稿できないまま2019年が終わってしまったので、簡単にまとめ。 2019年 Women's Prize for Fiction An American Marriage / Tayari Jones 2019年 ピューリッツァー賞 『オーバーストーリー』/ リチャード・パワーズ 2019年 ブッカー賞 The Testam…

2019年 ギラー賞ショートリスト

ギラー賞ロングリストについて書こうと思っていたら、もうショートリスト発表の時期になっていた。 あっという間に10月。 相変わらず毎日があっという間で、積ん読が一向に減らないので今年はあまり本を買っていません。 物欲の秋だというのにお買い物すらあ…

2018年のギラー賞はWashington Black

すっかり遅くなってしまったけれど、11月19日に発表されたカナダの文学賞・ギラー賞を受賞したのはEsi EdugyanによるWashington Blackでした。まだハードカバーしか出版されていおらず、ペーパーバックは予約受付中(来年の4月)。 Washington Black: Shortl…

Motherhood / シェイラ・ヘティ: 産むの? 産まないの? どうする私

2018年のギラー賞(受賞作品の発表は11月19日!)にノミネートされていて、読みたくなったシェイラ・ヘティのMotherhood。一風変わったユーモラスな語り口が心地よくて、これまた数多の積ん読を差し置いて、一晩で読んでしまった。 2018年のギラー賞ショート…

French Exit / パトリック・デウィット: 全てを失った大富豪未亡人はパリへ

表紙に一目惚れして(下記Amazonリンクに表示されている方ではなくて、白地にタイトルと著者名が赤と青で印刷されていて、むっとした表情の一家のイラストが描いてある方。かわいい……)購入。今年度のギラー賞にもノミネートされているパトリック・デウィッ…

『小川』 キム・チュイ

[Ru] 今年のギラー賞ロング・リストやノーベル文学賞代わりのスウェーデンの文学賞にも新作Viがノミネートされていたヴェトナム系カナダ人作家キム・チュイ。 The Scotiabank Giller Prize Presents its 2018 Longlist - Scotiabank Giller Prize 村上春樹…

2018年 ギラー賞ショートリスト

10月1日にカナダ・ギラー賞のショートリストが発表になっていたので、今日はこちらを。 HOME - Scotiabank Giller Prize アメリカとカナダの国境沿いをドライブしていると、発見がいろいろある。風景は全く変わらないのに、国をまたいだ途端にフランチャイズ…

Washington Black / Esi Edugyan(エシ・エデュジアン)

(ワシントン・ブラック) *日本語訳が出版されたので、作者名を更新しました。 ワシントン・ブラック 作者:エシ・エデュジアン 発売日: 2020/09/25 メディア: 単行本 2018年ブッカー賞のショートリストに残ったWashington Black。一言で言うと、「楽しい時…

『またの名をグレイス』 マーガレット・アトウッド(佐藤アヤ子・訳)

[Alias Grace] なんと、アトウッドの名作『またの名をグレイス』が文庫化されるそう! 発売日は9月15日。『侍女の物語』に続きNetflixでドラマ化され、好評を博したらしいので、原作も売れそうですね。 個人的には、ナンシー役をアナ・パキン、ジェレマイア…

The Year of The Flood『洪水の年』(マッドアダム・シリーズ) / マーガレット・アトウッド

(洪水の年) *2018年9月22日、岩波書店から日本語訳が発売されるそうです。 洪水の年(上) 作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/09/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 洪水の年(下) 作者: マー…

『オリクスとクレイク』(マッドアダム・シリーズ) マーガレット・アトウッド

[Oryx and Crake] 『侍女の物語』でなんだか調子づいて(読書熱が)、アトウッドの作品を次々読み返している。 『オリクスとクレイク』は、日本語版が出ていることを知ってこちらを読んだ。 MaddAddam(マッドアダム)シリーズ3部作の第1作目。 オリクスとク…