トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いているブログです。

お気に入り

『失われた時を求めて ソドムとゴモラ』 マルセル・プルースト:LGBTQ文学の先駆け

[À la recherche du temps perdu] 私のサマー・リーディングといえば、ここ何年かは必ず『失われた時を求めて』だ。 でもこれが、遅々として進まない。読んだことのない巻を手に取ると、必ず「スワン家のほうへ」まで戻って最初から読んでしまうから。 それ…

『サマルカンド年代記』アミン・マアルーフ

[Samarcande] 今年はウズベキスタンに行きたいなと考えている。美しい遺跡や霊廟を見てみたいし、夫婦揃ってラム好きなので楽しめそう。ちなみに、名物のラグマンは以前食べたことがあるがかなり美味しかった記憶がある。というわけで、この本を読んでみた。…

『戦争は女の顔をしていない』と、終戦の日に読みたい本たち

[У ВОЙНЫ НЕ ЖЕНСКОЕ ЛИЦО] 2015年ノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの一作目にして、作者自身が「もっとも大切に感じている」という作品『戦争は女の顔をしていない』を読んだ。 ウクライナ出身・ベラルーシ在住のジャーナリスト…

『ラテンアメリカ怪談集』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス他(鼓直 編)

最近、絶版してしまったモダンクラシックな作品の復刊が相次いでいて嬉しい。 『ラテンアメリカ怪談集』は、1990年代に河出文庫にて発売されていたそうなのだけれど、私が読みたいと思った頃にはすでに絶版となって久しかった。 Amazonで古本を探してみても…

『ボルヘス怪奇譚集』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス / アドルフォ・ビオイ=カサーレス

[Cuentos Breves y Extraordinarios] あらゆる人食い鬼がセイロンに棲み、彼らの存在すべてがただ一個のレモンのなかにはいっていることは、よく知られている。盲人がそのレモンを切り刻むと、人食い鬼は残らず死ぬ。 ー『インドの好古家』第1巻(1872)より…

アントニオ・タブッキの『レクイエム』と『ポルトガルの海』:7月最後の日曜日には、この本を読もう

[Requiem] [Mar Portuguez] 7月が来るといつも読み返したくなる、タブッキの『レクイエム』。なぜかタブッキの作品は全て夏に読むのにぴったりな気がするのだけれど、その中でも特にこの小説は夏にこそ読みたい。ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアを心底…

The Year of The Flood(マッドアダム・シリーズ) / マーガレット・アトウッド 【更新2018-09-09】

[洪水の年] *2018年9月22日、岩波書店から日本語訳が発売されるそうです。 洪水の年(上) 作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/09/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 洪水の年(下) 作者: マーガ…

『わたしたちが孤児だったころ』 カズオ・イシグロ

[When We Were Orphans]最近『わたしたちが孤児だったころ』を読んだばかりの母と話した。 私が読んだのはかなり前で、上海が舞台の探偵小説風小説…ということ以外思い出せず、まるで読んだことのない本のあらすじや感想を聞く気分で聞いていたのだけれど、…

LESS / アンドリュー・ショーン・グリーア:面白うてやがて悲しき

ヴィエト・タン・ウェンに続き、ピューリッツァー賞関連をもう一つ。アンドリュー・ショーン・グリーアによるLessを読んだ。2018年のピューリッツァー賞フィクション部門受賞作。 The Pulitzer Prizes アンドリュー・ショーン・グリーアは初めて読む作家だが…

Exit West / モーシン・ハミッド:イスラム文化圏の難民事情・ミーツ・村上春樹なのか

2017年のブッカー賞にノミネートされていた、この小説。 読んでみたいと書いてから半年経ってしまったが、ようやく読んでみた。 Penguinのカバーも素敵。オレンジのイスラム建築のドアの向こうに西洋の都市(ロンドン)が見えるというもので、まさにこの物語…

『わたしの物語』 セサル・アイラ:タイトルや表紙に騙されることなかれ

[Como Me Hice Monja] セサル・アイラの『わたしの物語』は、読者が裏切られ続ける物語。 とにかくやられた感がすごいのだ。 わたしの物語 (創造するラテンアメリカ) 作者: セサル・アイラ,柳原孝敦 出版社/メーカー: 松籟社 発売日: 2012/07/27 メディア: …

『燃える平原』 フアン・ルルフォ

[El Llano en Llamas] とても久しぶりに『燃える平原』を再読した。日本語で読むのは初めて。 絶版になっている水声社の単行本を買おうかなどうしようかな、と考えていた時に岩波文庫として出版されるというニュースを聞いたので5月まで楽しみに待っていたの…

『蜘蛛女のキス』 マヌエル・プイグ

[El Beso de la Mujer Arana] 人が見た映画や、読んだ小説の話を聞くのが大好きである。 人の記憶の中の映画や小説はとんでもなく面白く感じられる。その後話題に上がった映画を見たり小説を読んだりしても、話を聞いている時ほど面白く感じない。その人の主…

『ペドロ・パラモ』 フアン・ルルフォ

[Pedro Páramo] ラテンアメリカ文学の「はじまり」 「もう一度読み返したくなる」、「必ず二回読みたくなる」と銘打たれて書店に並んでいる本のほとんどは(わりとバレバレな)叙述トリックを用いたミステリー小説である。 そういう説明文をつけていい小説は…

『エレンディラ』 ガブリエル・ガルシア=マルケス

[Eréndira] 私にとって初めてのガルシア=マルケスは『百年の孤独』で、その一冊で「ガルシア=マルケスの沼」に真っ逆さまに落ちていってしまったのだけれど、もしこれからガルシア=マルケスを読む友人がいるとすれば『エレンディラ』を最初に読むように薦…

『アウラ・純な魂』 カルロス・フエンテス

[Aura y otros cuentos] 「これ、知っている」というのが、フエンテスを初めて読んだ時の感想だった*1。 フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫) 作者: カルロスフエンテス,木村榮一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1995/07/17 メディア: 文…

『すべての火は火』 フリオ・コルタサル

[Todos los Fuegos el Fuego] 『すべての火は火』を初めて知ったのは、ティーンエイジャーだった頃。 国語(Literature)の先生とコロンビア出身の友人と話しているときに「今読んでいる本」の話になって、友人が「All Fires the Fireというコルタサルの本を…

『オリクスとクレイク』(マッドアダム・シリーズ) マーガレット・アトウッド

[Oryx and Crake] 『侍女の物語』でなんだか調子づいて(読書熱が)、アトウッドの作品を次々読み返している。 『オリクスとクレイク』は、日本語版が出ていることを知ってこちらを読んだ。 MaddAddam(マッドアダム)シリーズ3部作の第1作目。 オリクスとク…

結婚して初めて分かったこと: 『侍女の物語』 マーガレット・アトウッド

[The Handmaid's Tale] マーガレット・アトウッドの『侍女の物語』を初めて読んだのはまだ10代の頃だった。 その後大学の授業でも読んだし、社会人になってからも読み返した。 繰り返し読んだので思い入れのある作品ではあるが、どこか自分からは遠い架空の…

『崩れゆく絆』チヌア・アチェベ

[Things Fall Apart] ナイジェリアという国は非常に多くの小説家を生み出している。 チヌア・アチェベ、ウォーレ・ショインカ(アフリカ人初のノーベル文学賞受賞者)、ベン・オクリなど。 若い作家の台頭も目覚ましい。 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ…

『シェリ』 コレット

[Cheri] 最近、胸焼けするまで恋愛小説を読みたいなあという気分。 『ガーディアンの1000冊』リストのうち、"Love"からいくつか選んで読む予定を立てている。 www.theguardian.com ということで、まずは長らく積ん読にしていたコレットの『シェリ』を。 シェ…

『おやすみ、リリー』 スティーヴン・ローリー

[Lily and the Octopus] こんにちは、トーキョーブックガールです。ずいぶん涼しくなってきましたね! さて、今日はジャケ買いしてしまったこの本の感想を。 おやすみ、リリー 作者: スティーヴン・ローリー,越前敏弥 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ …

『アリーテ姫の冒険』 ダイアナ・コールス

[The Clever Princess] Beauty Mythについて書きながら、この本を思い出したので今日はアリーテ姫について書いてみたいと思います。 物心つくかつかないかという頃から本が大好きだった私。 でも、読書に対する情熱を絶やすことなく今まで生きてきたのは、い…

少女が大人になるまで: Nada / Carmen Laforet(カルメン・ラフォレー)

みなさま、こんにちは!トーキョーブックガールです。 南の島から東京に戻ってきました。 東京の方がよっぽど暑いことにびっくりでございます…。 今日は夏になると読み返したくなる小説について、書いてみたいと思う。 Carmen LaforetのNada。 スペイン文学…

『かもめ』 チェーホフ

[Чайка] 今日の暑さは暴力的ですね!トーキョーブックガールです。 今週は星組『オーム・シャンティ・オーム』を見に行ったのですが、なんと客席には『阿弖流為』大阪公演を終えた礼真琴さんはじめ阿弖流為メンバーが! 舞台もキラキラ、客席もキラキラで感…

『悲しみよこんにちは』 フランソワーズ・サガン

[Bonjour Tristesse] 一番好きな本なんて決められないけれど、一番読み返している本は間違いなく『悲しみよこんにちは』である。 毎年毎年、夏が来るたびに読み返す。 このバカンスの物語は、どうしたって夏の空気の中で読みたいですからね。 夏の旅行にも大…